<リベリカ種:マレーシアのコーヒー豆>
同じ東南アジアでもインドネシアやベトナムに比べると世界的な知名度は劣るかもしれませんが、マレーシアはれっきとしたコーヒー生産国です。近年かなり作付面積が減少しているものの、半島マレーシアのクランタン州、ケダ州、トレンガヌ州、マラッカ州、また東マレーシアのサバ州などでコーヒーが栽培されており、そのうち約90%以上をリベリカ種という品種が占めています。
リベリカ種は西アフリカのリベリアを原産とし、アラビカ種、カネフォラ種(ロブスタ)とならぶコーヒーの原種です。低地で栽培でき環境への順応性も高いことから、マレーシアのような熱帯環境でも育つことができます。ただし、収穫量が少ない、アラビカ種より風味が劣る、病気に弱いなどの理由もあり、生産量は世界で流通しているコーヒーの1%にも満たないため、リベリカコーヒーを日本で目にすることはほとんどありません。
(リベリカ種を生産する東マレーシア・ボルネオで2019年4月にコーヒーイベントが開かれます。詳しくは当ブログ記事「【マレーシア】イベント:2019 Borneo Coffee Symposium」をご覧ください。)
<コーヒーが「コピ」になるまで>
マレーシアには半世紀以上前から独特のコーヒー文化が存在しています。マレー系、インド系、中華系を問わずどこのレストランに入っても、大体同じような濃くて甘い「コピ」(マレー語で「コーヒー」の意味)と呼ばれるコーヒーがあります。コピはいわゆるネルドリップで抽出するのが基本で、一応ブラックコーヒーもあるにはありますが、普通は砂糖&コンデンスミルクやエバミルク(無糖練乳)を加えて飲まれています。また日本人の間ではあまり知られていないようですが、コーヒーと紅茶を半々でミックスした「チャム」という飲み方もあり、これも地元では根強い人気があります。このようにコーヒーに練乳と砂糖を入れる飲み方は東南アジア各国で見られますが、マレーシアのコピを他とは異ならせているのは、コーヒー豆の焙煎の仕方にあります。
先に述べたように、マレーシア産のコーヒーのほとんどはリベリカ種です。一般的に言ってこの品種には上質なアラビカ種のように優れた風味はないので、ロースターは深く焙煎することで豆が持つ不快な雑味が目立たないようにしようと考えます。そこで編み出されたのが、豆を二回焙煎するという方法です。
最初はフルシティぐらいまで普通にローストします。この一回目のローストが終わると、今度は砂糖とマーガリン(またはパームオイル)を加えてから二回目のローストに入ります。ここで豆は再び加熱されてさらに黒っぽくなり、また砂糖がカラメル状に変化していきます。この工程は、豆をローストするというよりむしろ “調理する” と表現した方がしっくりくるかもしれません。
こうして出来上がったコーヒーは、まるで天津甘栗を炒る時の真っ黒にテカった小石みたいで、冷めるとベトついて石のように固まった状態となります。これをガンガン割りながら徐々に小さい塊へとバラしてゆき、最終的にコーヒーパウダーとして出荷されます。マレーシアのコーヒーはこうした独自の焙煎を経ることにより、どっしりとしたボディを持ち、カラメルのような香ばしい匂いを放つ「コピ」へと変化するのです。
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喫茶店文化で育った日本人にとっては、コーヒーというものはホットにしろアイスにしろ基本的にスッキリとした味であり、マレーシアのコピはまったりして甘すぎると感じる人が多いかもしれません。でも、それこそがマレーシア人にとってはホッとする味であり、スタバが街に溢れるようになった今でもコピは地元の人から愛されているのです。
関連記事:「【マレーシア】コピの種類と注文の仕方を覚えよう!」
(2017年11月17日:表記・見出し修正)
(2017年11月27日:レイアウト修正、画像追加)
(2019年2月15日:テキスト追加)