CMCO施行を知らされていなかったセランゴール州首長
10月12日にイスマイル・サブリ上級大臣が突如発表した、KL、プトラジャヤ、セランゴール州全域を対象としたCMCO。感染の広がり方を見ていれば大半の人がいつかは来るだろうなと予想していましたが、いつものように事前に匂わせることもなく発表された点は驚きでした。しかし、驚いたのは一般市民だけではなく、なんと当事者であるセランゴール州の首長アミルディン・シャリ (Amirudin Shari) 氏も寝耳に水だったというのです。
12日にはちょうど州内の保健当局、警察、軍、その他関係機関を含めて州レベルの安全保障会議を開いており、州内で感染者の多いレッドゾーンにCMCOを適用することを念頭に準備を進めていたとのこと。この会議で検討した内容を国家安全保障会議 (NSC) へ提出する予定だったところに、いきなり連邦政府が「セランゴール州は全部CMCO」と発表してしまったことで州政府としては苛立ちを隠せません。
すでにCMCOが適用されているクラン地区や、感染の増加が止まる気配のないペタリン地区、また今後増加する危険性の高いゴンバック地区以外では、同じセランゴール州とはいえほとんど感染が起きていないエリアもあり、州政府としては全てひっくるめてCMCOの対象にした連邦政府の決定に納得できない模様です。
とりあえず14日未明から適用ということは発表されたものの、「すべての経済活動を許可」とする一方で「生活必需品を買うための外出は一家族2人まで」と述べるなど、経済を回したいのか感染を抑えたいのかどっちつかずのチグハグな対応で、「SOP詳細の発表はまた後日」と後回しにしていることからも細部まで詰め切れていない様子が伝わってきます。
そこまで焦って規制をしなければいけないほどに深刻な事態が進行しているのか、それとも他に政治的な理由があるのか、または単純にあまり深く考えないまま進めてしまったのか、とりあえずは施行前日の13日にどのような追加情報が発表されるかに注目したいと思います。
何でもありのVIP
数日前には、州内有数のゴルフ場であるPJのトロピカーナ・ゴルフ&カントリー リゾート (Tropicana Golf & Country Resort) で従業員に集団感染が発生し、敷地内にある従業員宿舎がEMCO (強化された活動制限令) の適用により14日間封鎖されました。10月12日未明より施行されましたが、問題は本来閉鎖されるべきなのにその後も普通に同ゴルフ場の利用が続いていたという点です。
トロピカーナ・ゴルフというのはゴルフ場周辺も高級住宅地として同時に開発しており、そのエリアへのアクセスは準警察が24時間体制でチェックするなど全体が一つのコミュニティとなっています。内部事情に詳しい現地の情報筋によれば、そこに立ち並ぶ超高級住宅 (部屋が10数部屋あるような巨大な家) に住むVIPの一部は規制があっても「それがどうした?」聞く耳を持たず、相変わらずゴルフを続けていたとのこと。見かねた一部の人が警察に通報する騒ぎにまでなったようです。
政治家も含めてマレーシアのこうしたVIPというのは、細かい法令程度であれば自分は適用外だと思っているフシがあります。実際、家族で海外旅行に出かけておいて帰国後も隔離を受けなかったり、検疫が必要な地域から帰ってきていても無視したりするVIPが時々ニュースで報道されています。今回のケースも「会員権を持っている近所のゴルフ場でプレーして何が悪い」という程度の感覚だったのでしょうが、すでに従業員の中では20名を超える感染が見つかっており、規制を無視してプレーした人たちの間で今後クラスターが見つかる可能性もあるでしょう。
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市民の怒り
そもそも、第3波の感染が全国へと一気に拡散した最大の理由が、すでに感染拡大が深刻になりつつあったサバ州で9月末に行われた選挙でした。(サバ州出身者が投票のため全国から帰省した) そのような背景もあって、今回首都圏を対象にCMCOの再施行が発表された後、SNSを始めインターネット上は下のように強烈な皮肉を込めた市民の怒りのメッセージであふれかえっています。
「これでほぼ確実に失業決定。ありがとう!」
「サバ州選挙を進めた政治家最高!心の底から感謝してます!」
「政治家からの最高のプレゼント!」
「サバ州選挙の大移動のおかげだね」
「これまでの努力が完全に水の泡」
「サバ州前知事に心から御礼申し上げます。議会を解散したあなたなしにこの感染拡大は体験できなかった」
一時期は一日の感染者が1ケタ台をキープできていたこともあり、給与カットや厳しい経営状況でも何とか頑張ろうという雰囲気がありました。しかし、今回政治的な理由で公衆衛生上は明らかにマズい選挙を強行した結果として、今まで社会全体が積み重ねてきた努力が全て崩れ去ったことになります。第3波の感染が落ち着く頃には、前回の比ではないレベルで閉業や倒産するビジネスが続出するのはほぼ避けられない状況になってきたと言わざるを得ません。
在住邦人の皆さんも不確かな情報には気を付けながら最新の情報を入手して、自分とご家族の安全をしっかり守る手段を取るようになさってください。
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[参考資料]
(2020年10月12日). Selangor MB says taken aback by CMCO, sends proposal to NSC for reconsideration. malay mail. URL: https://www.malaymail.com/news/malaysia/2020/10/12/selangor-mb-says-taken-aback-by-cmco-sends-proposal-to-nsc-for-reconsiderat/1912029 (参照日:2020年10月13日)