コーヒーの品種ノートです。
エクセルサ (Excelsa)
由来: | 中央アフリカ原産種 |
豆のサイズ: | やや小さめ |
収穫量: | 良好 |
風味の質: | 良い |
初回収穫: | 3年 |
さび病: | 耐性あり |
炭疽病: | 耐性あり |
線虫: | 耐性あり |
栽培適正標高: | 北緯5度~南緯5度:N/A 北緯/南緯5度~15度:0~1,300m 北緯/南緯15度以上:N/A |
エクセルサの歴史
エクセルサは1903年に中央アフリカで発見されました。当時はコーヒーノキの種の一つであると見られていたものの、2006年に分類が見直されエクセルサはリベリカ種の亜種とされましたが、以来この決定は長く議論の的となっています。リベリカ種の豆はアーモンド形で先端がとがっているのに対してエクセルサは小さくて丸みを帯びており、同種の豆にしては形状に大きな違いが見られることに加え、近年の遺伝子研究によりリベリカとエクセルサの染色体には明確な差異があることも判明しており、やはりエクセルサはリベリカの一種ではなくアラビカ、カネフォラ、リベリカに次ぐ第4の種ではないかという見方が強まっています。
現在では主に東南アジアのフィリピン、ベトナム、インドネシア、および南アジアのインドで生産されていますが、流通量がとても少ない上にリベリカとして一緒に処理されることが多いため、エクセルサ単体としての知名度は非常に低い品種です。
エクセルサは病害虫への高い耐性を備えています。また、リベリカと同様にある程度高い温度帯でも生育することから、アラビカ種に比べてより低緯度・低高度での栽培が可能であり、熱帯気候にある東南アジア地域で主に生産されているのも不思議ではありません。さらに、カフェイン含有量が一般的な品種と比べて低いことも特徴です。カネフォラ種(ロブスタ)のカフェイン含有量は約2%、アラビカ種は約1%ですが、エクセルサは0.6~0.7%程度となっています。
しかし、何といっても見た目の大きな特徴はその樹高です。エクセルサは成長すると高さ10~15mにも達し、他の品種と比べて非常に背の高い品種だと言えます。ただし、樹高が高い=収穫に大変な労力が必要だということであり、生産者にとっては手間とコストがかかる面倒な品種ということになります。
知名度はほとんどないエクセルサですが、その風味には大きなポテンシャルがあると見てよいでしょう。全体的にフルーティーさやウッディーさが特長とされ、焙煎を中煎りで仕上げるとベリーやスパイス、ポップコーンのような風味が、さらに焙煎を進めるとチョコレートやクリームのような濃厚さが出てくると言われています。ただ、エクセルサは果実の粘液が濃いなどアラビカ種とは異なる特徴を備えているため、焙煎のプロファイルもエクセルサに合わせて最適化する必要がある(アラビカと同じように焙煎すると狙い通りの風味特性にならない)とのこと。
病害虫への耐性、複雑な風味特性、栽培できる温度帯の広さなど、生産に適した特長をいくつも備えるエクセルサですが、さまざまな要因で認知度は低いと言わざるを得ません。とりわけ、高い樹高による収穫作業の難しさとコスト増、リベリカと混合されるケースが多いこと、知名度が低いため単一品種としての消費者のニーズがないこと、生産量が少ないため生産者の地元で消費されるにとどまっていることなど、世界のコーヒー市場に流通するには越えなければならない高い壁がいくつも存在しています。
今後、エクセルサの知名度とニーズを上げていくためには、専門家によるさらなるリサーチ、栽培や生産に関わるより多くのデータの蓄積、そして生産量の増加というステップが必要となってくるでしょう。これから短い期間でエクセルサの認知度が急激に上がることはないとしても、病害虫で広範囲のコーヒーが一気に全滅する可能性という脅威に備える上で有効な遺伝子多様性という視点からも考えると、こうした品種がしっかりとコーヒー市場に根を下ろすことは長い目で見れば確かなメリットを生むのではないかと思います。
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[参考資料]
(2021年5月12日) ”What Is excelsa coffee?”. Perfect Daily Grind, URL: https://perfectdailygrind.com/2021/05/what-is-excelsa-coffee/ (参照日:2025年1月27日)
(2024年12月14日) ”Excelsa Coffee: Origin, Taste, and How to Choose”. colipse Coffee, URL: https://colipsecoffee.com/blogs/coffee/excelsa (参照日:2025年1月27日)