先月 (2020年9月) に首都圏クランバレー一帯に影響を及ぼした大規模断水と同規模の断水がまた起こりました。比較的小規模なものも含めると、この2か月近く冗談抜きで毎週首都圏のどこかが断水している状況です。
断水の概要
(2020年10月22日更新) Air Selangorによると、22日午前6時時点で断水した全地域の復旧が完了したとのこと。(参考―The Star: “Water supply fully restored to all 1,292 affected areas, says Air Selangor“)
今回の断水に先立つ10月17日夜、水道事業者のAir Selangorは「主送水管の損傷により交換作業が終わるまで断水する」と発表。(参考―New Straits Times: “Yet another water supply disruption in the Klang Valley“) この時点で首都圏の大部分に影響が出ることになりましたが、本来であれば18日の午前には交換作業が終わり同日午後から給水が順次回復するはずでした。ところが、昼過ぎになって復旧が予定より遅れて19日午後以降になると発表が。これより、翌19日の営業をあきらめて臨時休業とする飲食店も出始めます。
そして19日午前、今度は「取水源で汚染 (異臭) を検出したため浄水施設の稼働を停止した」と発表。結局、送水管の破損による断水から復旧しないまま汚染による断水が重なり120万世帯への送水が停止した状態で現在に至っています。(参考―New Straits Times: “Sg Selangor polluted yet again; over 1 million households face water cuts“)
今回の汚染源が何かはまだ明らかになっていませんが、新型コロナウイルス (COVID-19) の感染拡大真っただ中でCMCOにより大きな打撃を受けている飲食店にとっては、断水により営業できないというのは笑いごとでは済まされません。手洗いやうがいが今までになく大切な時期に水がないというのも最悪なタイミングです。
COVID-19感染拡大中の断水
もちろん、安全基準を満たさない水を送水するのではなく、汚染を迅速に検知して施設の稼働を止めている点を評価すべきという見方もあります。しかし、ここ数か月の首都圏におけるあまりにも度重なる断水と何一つ改善せず同様のトラブルが繰り返される現状は、個々の汚染云々というレベルではなく、関係省庁も含めた当局の危機対応における指揮能力の不足をまざまざと見せつけるものとなっています。
COVID-19の感染拡大を防ぐため、政府当局は外出の必要がない限り家にとどまるよう勧めています。また、首都圏一帯のショッピングモールでは次々と感染者が出ており、食料品の買い出し等の必要な用事以外では行かないに越したことはありません。しかし、家で水が使えないという状況では、貯水タンクのおかげでまだ飲食店が営業しておりトイレも使えるショッピングセンターに自然と人々の足が向かうことになります。
生活インフラである水道の断水は、マレーシアのようにある程度経済発展を遂げた国では起こしてはならないものです。選挙に関わる政治的な判断ミスが引き起こしたCOVID-19の感染再拡大に加えて、経済の中心であるクランバレー地域で繰り返される大規模断水により、政権に対する批判の声がさらに強まるのは必至でしょう。