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【マレーシア】交通事情(3) コロナ後やけに渋滞がひどくなった理由とは?

投稿日:2022年9月11日 更新日:


Traffic in Bangkok

by Jason Goh on Pixabay / イメージ画像

2022年は過去最悪の渋滞状況

2020年3月の新型コロナ感染初期から、なんだかんだで世界でも一番長かったと言われる長期ロックダウンが続いたマレーシア。一番厳しかった時期は自宅から半径10㎞以内の移動しか許可されず、それが緩和されてからも当分は州をまたぐ移動が禁止されていました。教育機関はオンライン授業、日常生活に必要不可欠な業種以外では自宅からのテレワークが推奨されていたこともあり、この期間中は個人での車による移動はかなり減っていたため、首都圏をはじめ主要道路でもほぼ渋滞のないスムーズな流れとなっていました。

しかし、オフィスでの勤務や学校での対面授業が再開するに連れて再び渋滞が悪化。これがまたどう考えてもコロナ前よりひどい、時には異常ともいえるほどの混み方なのです。なぜこれほどの渋滞になっているのでしょうか?調べてみると、そこには幾つもの理由が絡み合っていることが分かってきました。

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なぜこれほど渋滞しているのか?

自動車購入の税金免除で車がバカ売れ

Display of calculator

by Bruno /Germany on Pixabay

マレーシア・プトラ大学 (Universiti Putra Malaysia: UPM) のクランタヤン教授 (Dr Kulanthayan) によると、コロナ前の2019年にはマレーシアの総人口約3,250万人に対して国内の登録自動車台数は約3,120万台だったのが、2021年には自動車は約3,330万台と1年あたり100万台もの大幅な伸びを示し、恐らく2021年の時点でついにマレーシア国内の車の数が人口を超えたと見られるとのこと。

日本の場合は、約1億2,500万人の人口に対して自動車保有台数は約8,230万台(二輪・貨物含む)にとどまっています (2022年5月時点)。対人口比で考えるとマレーシアの自動車数は日本の1.5倍増しとなり、いかにマレーシアが車社会かということが分かるでしょう。(データ出典:財団法人 自動車検査登録情報協会)

新型コロナによるさまざまな活動制限がかけられていたにも関わらず、なぜマレーシアでは2019年からの2年間で保有台数が200万台増6.5%近い急激な伸びとなったのでしょうか? (※ 日本では同期間中に、二輪・貨物含めても全国でわずか29万台増=0.35%増)

2020年3月から始まった完全ロックダウンで経済全体に大打撃を受けたマレーシア。そんな中、落ち込んだ経済への刺激策として政府は2020年6月に「国家回復計画 (NRP)」を発表。その一環として、自動車業界を補助するため車の新規購入時にかかる売上・サービス税を一時的に免除することが決まります。同特例はその後延長を3度繰り返し、最終的に2022年6月末まで続きました。(期限内に予約した車については2023年3月31日まで適用対象。)

全体としてマレーシア人には、必要あるなしに関わらず何かお得なチャンスがあれば絶対に逃したくない」という国民性があります。これまでバイクや公共交通機関、Grabなどの配車サービスでやり繰りしていた人でも、「今だけ新車を税金免除で買えますよ~」なんて言われたらどうしても車が必要というわけでなくてもついつい買ってしまうのです。「買わないと自分だけ損してしまう」みたいな感覚なんですよね。これは筆者の知り合いのローカルを見ていてもよく感じます。

そんなわけで、車の新規購入にかかる税金を免除するという新型コロナ期間中の特例措置がマレーシア人の自動車購買意欲に火をつけ(これ自体は政府の狙い通り)、結果として売れまくって増えた車が道路にあふれているというのが、コロナ後に悪化している渋滞の原因の一つだろうと考えられます。

スクールバスと利用者の減少

Front of school bus

by UnderatedStudio on Pixabay

新型コロナの影響で、教育機関は長期間にわたりオンライン授業を強いられました。ロックダウンによりスクールバスや通学ワゴンの需要は完全にゼロになり、特に個人事業主として仕事をしていた運転手は多くが廃業あるいは別の仕事へ転職したと見られています。対面授業が再開してからもスクールバスの数は元のようには戻っておらず、これまではバスを利用して通学していた生徒たちでも各家庭で送り迎えせざるを得なくなるケースが出ています。(バスが1台なくなる=送迎の車が約20〜30台増える計算)

また、たとえスクールバスが利用できるとしても、子どもに密な環境を避けさせたいと考える親がバス通学をやめて自家用車で送り迎えすることにした家庭も少なくなく、余計に送迎の車が増える結果となっています。登下校の時間帯に各学校で出迎えの車がこれまでより50~60台ほど増えるだけでも、交通集中により学校一帯の渋滞はかなり悪化します。さらに、こうした局所的な渋滞がより大きなエリアの交通渋滞を引き起こし、そういった渋滞エリアが複数同時発生することで最終的には街全体が大渋滞になるわけです。

公共交通機関利用者の減少

慢性的な交通渋滞に悩まされてきたマレーシアは、状況を改善するため政府がクランバレー地域における公共交通機関網の整備に力を入れてきました。既存のLRT路線に加えて、2017年に首都圏を横切るMRTカジャン線が全線開通、2023年にはMRTプトラジャヤ線が開通予定、さらに現在は新線のLRTシャーアラム(LRT3)線やMRT3環状線などが建設中です。

コロナ前には順調に利用者数を伸ばしていたこれらの鉄道路線ですが、ロックダウンで利用客が激減。制限が緩和されてほぼ通常の運行となってからも、新型コロナがまだ終息していない中にあって狭い車内で長時間密室になることへの抵抗は日本よりはるかに根強く、通勤・通学の際に公共交通機関より自家用車やタクシーを利用する人が増えたとみられます。

また、2021年に起こったLRTの正面衝突事故や、2022年には同じくLRTでブレーキの故障による運行中止がわずか2週間の間に2回も起きるなど、公共交通機関の安全性や定時性への信頼を失わせる事故が立て続きに発生していることも、利用者が減っている原因の一つでしょう。

他州からの車が増えた?

これは筆者の個人的な感想で具体的なデータに基づくものではありませんが、クランバレー地域でコロナ前と比べて他州登録ナンバーの車が大幅に増えているように感じます。

マレーシアの自動車ナンバープレートは、日本のように都道府県を明記したようなものではなくアルファベットと数字の組み合わせですが、このアルファベットの1文字目でどこの州で登録された車なのかが分かります。例えば、クアラルンプール(KL)登録の場合は「W」または「V」、セランゴール州は「B」、ペナン州は「P」、マラッカ州だと「M」などです。

新型コロナが落ち着いて学校での対面授業が再開し出した辺りから、妙にこうした他州ナンバーの車が多いということに気づきました。登録台数が多くKL地域との行き来も盛んなペナン州のナンバーなどは以前からチラホラと見ていましたが、特に最近はこれまであまり見なかったペラ州「A」、ネグリセンビラン州「N」、パハン州「C」、ケダ州「K」、ペラ州「R」などのナンバーがやたらと目につくのです。走り方を見ていると、交通量が多くて流れが速く合流や分岐も複雑なKLの道路に不慣れな様子の車が目立ち、どうも以前からKLに住んでいる人ではないように思えます。

なぜこうした車が増えたのか背景にある理由は分かりませんが、このような他州からの車が流入していることも交通量の急増に何かしらの影響を与えているのではないかと思います。

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渋滞を解消する手段はあるのか

MRT station

MRTカジャン線 ブキッ・ビンタン駅

毎年のように新しい道路や既存道路の拡張が行われているクランバレー地域ですが、先に挙げたクランタヤン教授は、受け皿を増やすことになる道路整備はより多くの需要(交通量)を生むだけであり、渋滞の根本的な解決にはならないと指摘。同教授は、現状の車社会から公共交通機関(鉄道)をメインとした社会システムへのシフトを促す政策こそが重要であると述べ、働き方の変革も含めて官民が一体となって公共交通の利便性を高めると同時に国民の意識を変えていく必要があると結論づけています。

日本の都市部では車がなくても普通に生活できる社会システムができており、運転免許を持たない若者が増えていることが最近ニュースになったほどですが、マレーシアの現状ではまだまだ車に頼らざるを得ません。大渋滞が頻繁に発生することによる生産性の低下 (1日あたり数時間、渋滞にハマっている間は何もできない) は無視できないレベルであり、今後開通する予定の鉄道輸送網で少しでも改善が見られることを期待しています。

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[参考資料]
(2022年6月9日) “Vehicles outnumber people in Malaysia”. New Straits Times. URL: https://www.nst.com.my/news/nation/2022/06/803654/vehicles-outnumber-people-malaysia (参照日:2022年9月11日)


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40代の通訳者です。
マレーシアのクアラルンプール在住。

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