
by Katya Austin on Unsplash
コーヒーの品種ノートです。
シリーナ (Syrina)
| 由来: | ティピカ、ムンド・ノーボ、ブルボン、サルチモール、ティモール・ハイブリッドの人工交配種 |
| 豆のサイズ: | 大きい |
| 収穫量: | N/A |
| 風味の質: | 良い |
| 初回収穫: | N/A |
| さび病: | 耐性あり |
| 炭疽病: | 耐性あり |
| 線虫: | 耐性不明 |
| 栽培適正標高: | 北緯5度~南緯5度:N/A 北緯/南緯5度~15度:N/A 北緯/南緯15度以上:1,400~1,500m |
シリーナの歴史
シリーナは、アメリカ人のコーヒーロースター&生産者でもあるカレブ・ジョーダンにより、2008年にタイで発見されました。宣教師の家庭という環境でタイのナーン県で生まれ育ち、アメリカでの大学生活中にコーヒー焙煎の仕事に関わることになったカレブ氏。山岳民族のモン族などとも深いつながりを持ち、北タイにおけるコーヒー生産に様々な角度から関わってきた人物です。(現地のコーヒー関係者の間では知らない人がいないほどの有名人)
シリーナが発見されたきっかけは、タイ国内で研究のために栽培されていた40種類ほどのコーヒー品種株をカレブ氏が譲り受けたこと。その中の一つ、フルーティーな風味に加えしっかりとした酸を持ったユニークな株を、自身の娘の名前にちなんで「シリーナ (Syrina)」と名付けたのが始まりです。
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品種の由来という点では、シリーナは非常に複雑な背景を持っています。遺伝的には、ティピカ、ブルボン、ムンド・ノーボに加え、ハイブリッド種のサルチモールやティモール・ハイブリッドの遺伝子も持つことが検査で明らかになっています。風味に定評があるブルボンやムンド・ノーボに系譜を持つことから風味特性の良さを引き継ぐと共に、病害に強いサルチモールやティモール・ハイブリッドの遺伝子を受け継いでいることで、病害耐性も備えていると考えられます。
まだ発見されてから十数年しか経っておらず、現時点ではそのほとんどがタイの一部の農園でのみ生産されています。タイで多く栽培されている品種(カティモールなど)に比べると非常に複雑な味わいを持ち、言われなければケニアかどこかアフリカの豆だと思ってしまうほど。アップルティーのような紅茶系のフレーバーを持っており、そういう意味でややゲイシャっぽさも感じます。生産量・流通量ともに非常に少ない希少品種で、品種名の由来が発見者の娘の名前からというのもどこかストーリー性があるシリーナ。見かけたらぜひ一度試してみて欲しい品種です。
[参考資料]
(2020年12月1日) ”COFFEE PLAYGROUND EP.5: Coffee Varietals”. Roots, URL: https://rootsbkk.com/journal/coffee-playground-ep-5-coffee-varietals/ (参照日:2025年10月30日)
(2021年12月26日) ”P’ Kaleb”. Roots, URL: https://rootsbkk.com/people/p-kaleb/ (参照日:2025年10月30日)
”De Hmong Syrina”. Wells Cafe Penang, URL: https://www.wellscafepg.com/product/de-hmong-syrina/ (参照日:2025年10月30日)

