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【マレーシア】在留外国人は免税店でアルコールが買えない?

投稿日:2018年2月20日 更新日:


マレーシアはイスラム教が国教です。飲酒が禁じられているイスラム教徒が全人口の60%を占めているという背景もあり、特に輸入品のアルコール飲料には高額の酒税がかけられています。そのため、日本人をはじめマレーシアで生活している外国人の多くにとって、国外から戻って来た時に空港の到着ゲートの免税店でアルコール類を買うのがお決まりのルートとなっています。

しかし、その免税店での酒類販売にとんでもないルールが適用され始めたようなので、現時点で分かっている範囲の詳細をレポートしたいと思います。

(追記:2019年5月27日)
2019年2月時点で、就労ビザを持つ在住外国人がアルコール類など免税品の販売を拒否されるケースがいまだに発生しているようです。

空港の免税店でお酒の購入を拒否される

数日前、渡航先からマレーシアに戻った時のことです。
klia2 (クアラルンプール国際空港 第2ターミナル) でいつものように入国審査を済ませ、そこからすぐ外に出たところにある免税店「ERAMAN」でジンを買おうとしました。

通常は、レジで店員にパスポートを渡すとすぐに機械でスキャンして商品の支払いへと移ります。しかし今回は、レジの女性がパスポートのページを一枚ずつめくって入念にチェック。そして、次のようなやり取りとなりました。

レジ係:マレーシアで仕事されてるんですよね?
― はい、そうですが。
レジ係:じゃあアルコール類は購入できません。
― は???
レジ係:マレーシアに住んでいる外国人は、免税店でお酒の購入はできません。
― ちょっと意味が分からないんですが・・・。ここに10年以上住んでますけど、これまでずっと問題なく買えてますよ。
レジ係:最近ダメになったんです。
― 最近?いつから禁止になったんですか?
レジ係:2月1日からです。税関から通知されたので。
― でも、そんなことどこに書いてます?このお店でも空港内でも、なんの告知もされてないですよね?
レジ係:ないですけど、とにかくダメということになったので。あなたには売れません。

摩訶不思議なルールが一夜にしてできることも珍しくないマレーシアとはいえ、いくら何でも国の玄関口の国際空港で「外国人は免税店でお酒を買ってはいけない」と言われる意味が理解できません。このやりとりではどうも納得できなかったので、近くにいた別の店員を呼んでもらうことに。

― このレジの人に、2月1日からビザを持っている外国人はお酒が買えなくなったって言われたんですけど。
店員:ええ、そうです。でもマレーシアに観光で来る外国人は買えますよ。
― じゃあ観光以外だったらダメなんですか?
店員:そうです。このパスポートを見ると就労ビザをお持ちですから販売できません。
― ビザを持ってここに住んでたら買えないってことですか?
店員:はい。税関からの通達で、マレーシアで居住している外国人は免税店でアルコール類は買えません。チョコレートとか他のものならいいですよ。

(追記:2018年12月28日)
読者の方からの情報によると、当記事で取り上げている免税ルールはタバコにも適用されているとのことです。

そして、そっけなくパスポートを返され、せっかくレジに持って行ったジンはそのまま返却となりました。

とは言うものの、家に帰ってからもどうも納得がいかずネットで色々調べてみました。が、全くと言っていいほど情報なし。税関のウェブサイト、空港のウェブサイト、免税店のウェブサイト、どこを見ても (少なくとも英語の情報では) そんなことは全然書いていません

「これはもしかして店員にだまされたのか?・・・でも、そもそもだます意味がないしなぁ」

マレーシアに暮らす友人にも何人か聞いてみたものの、この件に関して何か情報を持っていたり同じ経験をしたりした人はいませんでした。

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カスタマーサービスに電話して分かったこと

しかし、どうしても腑に落ちないので、翌日になって免税店「ERAMAN」のお客様サービスセンターに電話しました。以下が会話の要約です。

― (店での出来事を説明した後)この話って本当なんですか?
社員:あー、その件はですねー、最近税関による法令の適用が厳しくなりまして・・・。
― でもネットでも色々調べたんですが、そんな法律ができたってどこにも書いてないんですけど。
社員:新たに法律ができたというわけではなくて、実はそういうルールは以前からあったんですよ。
― え?元々ダメだったってことですか!?
社員:ええ。ただこれまでは実際には適用されていなかったと言いますか、有名無実化した法令だったので。
― で、2月1日からそれが変わったと?
社員:そうなんです。税関から「今後は厳格に法令を適用する」とかなり厳しく警告されまして。免税店で購入したお酒を見つけたら必ず課税すると。
― (申告なしでは) 1本以上持ち込んだらダメっていうルールのことじゃなくて?
社員:それはまた別です。国外からの持ち込みについては、ウイスキーやジンなど一人1リットルまで申告なしで可能です。
― マレーシアに住んでいる外国人でも?
社員:大丈夫です。
― でもビザを持ってたら、免税店ではたとえ1本でも買えないってことですか?
社員:はい。申し訳ありませんが、その場合は免税店でのアルコール類の購入はできません。
― 就労ビザを持っている人だけ禁止なんですか?家族は?
店員:一週間とか二週間とか、短期間遊びに来られている場合はいいですよ。でもここに住んでいるご家族はダメです。
― っていうか、こんなことしたらお店もかなり損するでしょう?
社員:おっしゃる通りで、実はかなりの売上げ減を予想しています。正直なところ、私どもとしては買ってもらいたいんですよ。別に嫌がらせで売らないわけじゃありませんから。
― 買った人の自己責任だとしても売らないんですか?
社員:もし税関で見つかったら、たとえ免税店で買っていても課税されます。実際すでにトラブルになってるんですよ、税関は今ほんと厳しいですから。後になってお客さんからうちにクレームが入ってもどうしようもないですし。売らないのはお客様のためなんです。その点をどうかご理解下さい。
― そちらの立場も分かりますけど・・・。それにしてもあり得ないですよね、税関も今さらこんなルールを持ち出して。
社員:どうしても買いたいということであれば、まず先に税関で話をしてみられてはどうでしょうか?免税店から15メートルのところに事務所がありますので

いや・・・そういう問題じゃないんだが。

そもそも嫌がらせのように厳格にルールを適用し始めた矢先に、税関に行って「納得いかないから1本買わせて欲しい」といって許可されるワケがないだろうに。

詳細がある程度はっきりした上、これ以上お店と話をしていても何も変わらないのでそこで会話を終えました。

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アルコール類の免税に関するまとめ

ではもう一度、アルコール類の購入・持ち込みに関して免税店との会話で浮かんできたポイントを整理したいと思います。

1.以前からあったものの殆ど適用されていなかった法律を、2018年2月1日から厳格に運用しはじめた。
2.観光ビザ以外の滞在許可を持っている外国人 (在留外国人) は、アルコール類等の免税での購入は禁止
3.マレーシア国籍であれば、今までと変わりなし。
4.外国人旅行者 (観光ビザ) であれば、今までと変わりなし。
5.国外からの持ち込みに関しては、今までと変わりなし
6.この件を一般に周知するポスターや告知はほぼ皆無
 ※税関、空港、免税店の各公式ウェブサイトにも記載は見当たらず。

ただ、この件は適用が厳格化されてしばらく後に結局シレッと元の状態に戻ったようです。いずれにしても不必要なトラブルに巻き込まれないよう、在留邦人の皆さまはこうした朝令暮改にはくれぐれもご注意下さい。

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(追記:2019年5月27日)
某有名旅行口コミサイトのフォーラム(英語)などを見ると、昨年12月から2019年2月にかけて断続的に在住外国人が免税店で購入拒否されたケースが報告されています。何らかの理由でルール適用が緩くなったり厳しくなったりを繰り返していると見られますが、在留邦人の方は今後の動向に十分注意されることをおすすめします。

(追記:2018年4月2日)
数日前に再度klia2の免税店で購入を試したところ、今回はビザのチェックもなく普通に買えました。何人かの在住外国人の友人に確認したところ、恐らく3月始めあたりから何となく以前の状態に戻ったのではないかと思われます。

あれほど騒いだ厳格なルール適用を、なぜたった1カ月足らずで再び元に戻したのか、もし新たな情報が確認できればいずれアップしたいと思います。

(2018年12月28日:テキスト追記・修正)


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執筆者:


  1. うどん より:

    昨日同じ店の多分同じ店員さんから買おうとしましたが、マレーシアで働いてまだ3ヶ月なのでダメ、6ヶ月経過して居住者になれば買えると言われました。

    • Gaku より:

      うどん 様、
      コメントをお寄せ頂きありがとうございます。またもや免税店で不思議な対応があったようですね。

      某世界的な旅行口コミサイトのフォーラムでは、就労ビザを持っている在留外国人がKLIAにて免税購入を拒否されるケースが2019年に入ってからも報告されています。恐らく、当局から何か通達があればその都度ルール適用を厳格化しているのではないかと思われます。ただし、今回コメント頂いたように「就労後6ケ月経てば買えるようになる」という対応は初耳です。この件に関するルールがどうであれ、それをきちんと理解している現場の店員はほぼゼロと言ってもよいのではないかと感じます。

  2. うめ より:

    税関でトラブルになって検索して見つけました。
    先ほどシンガポール日帰り出張から帰ってきて、免税店でウイスキー一本買いました。RM75のグランツです。
    税関でどこ行ってたと聞かれ、シンガポール日帰りと正直に言うと、シンガポールに72時間以上滞在したら免税で一本持ってこれると言われ、税金払えと言われ金額聞くと、RM150と言われました。
    すかさず、支払い拒否し、持ち込まず帰ってきました。返品しに戻れば良かったのかと今になって思いますが、ちょっとあり得ないこといわれ頭が真っ白になってたので返品は思い浮かびませんでした。

    • Gaku より:

      うめ 様、
      コメントありがとうございます。税関でのトラブルは何かとすっきりしないことも多いですよね。

      今回のケースですが、マレーシア在住者の場合はシンガポールに限らずマレーシア出国から再入国までの期間が72時間以上経過していることが免税条件となっているようです。ちなみに、島全体が関税適用外となっているラブアン島への滞在時は24時間以上、同じく自由貿易地域に指定されているランカウイ島とティオマン島の場合は48時間以上の滞在で免税となるとのことです。(マレーシア税関公式サイトによる「http://www.customs.gov.my/en/tp/Pages/tp_tg.aspx」) シンガポールへの出張は日帰りの方も多いですが、その際は関税法上は免税条件に当てはまらないという事ですね。まれにしっかりと仕事をする税関職員に当たった場合はチェックされるポイントになりますが、出国していた期間までは精査されずに持ち込めているケースも相当あるとは思います。

      また購入時にレジにて免税条件に引っかかると指摘された場合は返品できますが、税関まで行ってしまうと後戻り不可能ということを以前免税店のスタッフに言われた記憶があります。うめ様の場合も、税関で免税適用外だと指摘されたとなると追加で関税を払うか没収されるかの二択で、購入した免税店に戻って返品というのはいずれにしても難しかったのではないかと思います。

  3. Naoe Yamashiro より:

    私も同じ経験を致しました。
    因みに煙草も同様に在留外国人は購入不可になっております。

    • Gaku より:

      Yamashiro 様、

      コメントならびに情報提供ありがとうございます。ということは、アルコール類とタバコは一括りで同一ルールが適用されているようですね。
      では香水はどうなのかなどさらなる疑問が湧いてきますが、また同様の経験を耳にされましたらぜひ当ブログまでお知らせください。

      今後ともよろしくお願いいたします。

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40代の通訳者です。
マレーシアのクアラルンプール在住。

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