以前は財布の中のコインをかき集めて払っていた路上パーキングのシステムも、最近はすべてTouch’n Goアプリなどオンラインで支払いが済ませられるようになり、そういう意味ではいつの間にか便利になったなぁと感じるマレーシアの車事情。
駐車料金を払う際に必ず入れる必要があるのが、自分の車のナンバーです。日本のナンバープレートは、使用の本拠を示す地域名、3ケタの分類番号 (一部地域ではアルファベットも使用)、ひらがな1文字、そして4ケタの番号という構成になっていますが、マレーシアのナンバープレートはどのような仕組みになっているのでしょうか?
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登録地域が分かる
マレーシアのナンバープレートは、基本的にはアルファベット3文字と4ケタの数字の組み合わせ [例:WAC 1234]、また新しいものではアルファベット2文字と4ケタの数字+アルファベット1文字の組み合わせ [例:WB 5678 J] という表記となっています。
日本のように分かりやすく地名が書かれているわけではありませんが、マレーシアのナンバープレートからはアルファベットの頭文字で登録地域を読み取ることができます。アルファベットと各地域は次のように対応しています。
A: ペラ州 (Perak)
B: セランゴール州 (Selangor)
C: パハン州 (Pahang)
D: ケランタン州 (Kelantan)
J: ジョホール州 (Johor)
K: ケダ州 (Kedah)
M: マラッカ州 (Melaka)
N: ネグリセンビラン州 (Negeri Sembilan)
P: ペナン州 (Penang)
R: ぺルリス州 (Perlis)
T: トレンガヌ州 (Terengganu)
W: クアラルンプール (Kuala Lumpur)
V: クアラルンプール (Kuala Lumpur) *2016年以降
F: プトラジャヤ (Putrajaya) *2016年以降
S#: サバ州 (Sabah) *2文字目で州内の地域を示す
Q#: サラワク州 (Sarawak) *2文字目で州内の地域を示す
こうやってみると、実際の州の名前とアルファベットが一致しているものそうでないものがあります。これは同じ頭文字が複数の州で使われているためで、例えば「K」という文字だとケダ州、ケランタン州、クアラルンプールが同じ、「P」だとペナン州、ぺルリス州、ペラ州、パハン州、プトラジャヤが同じになってしまいます。そのため、どうしても地域名とアルファベットが一致しないものが出てくるわけですね。
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特殊なカテゴリー
上に挙げた一般的な地域以外に、以下のような特殊な分類もあります。
H#: タクシー *2文字目で登録地域を示す
LIMO: KLIA空港リムジン
Z: 軍事車両
##-##-DC: 外交官 (大使館) *最初の数字2ケタで国、次の2ケタで身分を表す。
##-##-CC: 外交官 (領事館) *最初の数字2ケタで国、次の2ケタで身分を表す。
##-##-UN: 国連 *最初の数字2ケタで身分、次の2ケタで部署を表す。
紋章 (黄色プレート): 王族 *数字はなく、正式な称号が書かれている。
限定版ナンバープレート
通常のアルファベット分類以外にも、スポーツ・政治イベント開催記念や、政府のプロモーションに関連して限定リリースされたナンバープレートがいくつか存在しています。以下はその一例です。
PROTON: 一部のプロトン車を対象にリリース
PERODUA: 一部のペロドゥア車を対象にリリース
Putrajaya: プトラジャヤ連邦直轄区の発足に際し1995年にリリース
XXVIASEAN: 第11回ASEANサミットのKL開催を記念して2005年にリリース
1M4U: ”1 Malaysia for Youth”の標語に基づき2013年にリリース
Malaysia: 運輸省が2018年にリリース
人気の番号はオークションになる
日本と同じくマレーシアでも特定の番号は人気があるため、そうした番号が欲しい場合はオークションとなり入札に参加する必要があります。これはJPJ (日本でいう運輸局/陸運局) が独占的に取り仕切っておりオンラインで申し込める (英語サイト:JPJeBid) のですが、通常の番号は基準額300リンギ (約9,000円)からスタートとなっているものの、中には恐ろしく高い金額に設定されている番号もあります。
例えば、1~10までの番号は「ゴールデンナンバー」と呼ばれており、基準額がなんと2万リンギ (約60万円)スタート、またゾロ目の番号は3,000リンギ (約9万円)スタートで、他にもマレー語での語呂合わせなどでラッキーナンバーとして人気が高い一部番号は、800リンギ (約2万4,000円)からとなっています。
【数字の豆知識】ナンバープレートの数字から、車の所有者の人種をある程度推測できることもあります。例えば「4」「4444」などは高確率でマレー系、「8888」なら恐らく中華系だと考えてよいでしょう。
8は中国語の発音が繁栄や成功を意味する「發」と似ている=縁起がいい、4は数字が足を組んでリラックスしているさま (マレー語で“Goyang kaki”)に似ている=楽な暮らしを連想させるなど、それぞれの文化で好まれる番号があるんですね。
マレー系には人気のある4ですが、中華系には「死」と発音が似ているので不幸な数字として避けられています。
競合が激しい番号の場合は、締め切り30分前になると入札額が大きく動き出します。この時間帯に入札額を引き上げる場合は基準額の10%単位と決められているので、ゴールデンナンバーの場合は最低でも2,000リンギ (約6万円) ずつ金額がつり上がっていくわけです。マレーシアの富裕層には確かに縁起のよい数字にこだわる人が多いですが、余裕で高級車が買えちゃうぐらいのお金をたかだかナンバープレートにドーンとつぎ込む人が結構いるんですね。2018年には [Malaysia 1] というナンバーが、過去最高の111万1,111リンギ (約3,333万円) で落札されてニュースになりました。(参照:NST “‘MALAYSIA 1’ collects a record RM1,111,111“)
ちなみに、このナンバーオークションはJPJの大きな収入源となっており、2022年は10月時点で計2億8,600万リンギ (約85億8,000万円) もの歳入となっています。入札システムを作って管理する以外は元手がタダなわけで、政府機関として実に賢い(おいしい)商売だと言えるでしょう。ただ、ぼったくりのような落札価格も含めてあまりにオークションの売り上げが増えていることで、国民の間からは「ちょっとやりすぎだ」という声も上がっており、ネット上では「いっそ“JPJ株式会社”に名前を変えて上場でもすれば」と現状を皮肉ったコメントも見られます。
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ナンバープレート自体に規格ってあるの?
日本だと自動車のナンバープレートはサイズが330mm×165mm、取り付けのねじ穴ピッチは210mmなどすべて規格が統一されている上に、運輸支局での係員によるプレートの封印 (封緘) も義務となっています (軽自動車を除く)。
しかし、マレーシアの場合はナンバープレート自体の規定サイズはなく封印もありません。その代わり、JPJによりプレートの文字サイズと文字間隔が指定されています。(1文字のサイズが縦7cm X 横4cmを超えないこと、文字間隔は1cm、アルファベットと数字の間の切れ目は3cm、アルファベットと数字を2列に分ける場合の列の間隔は1cm)
ただ、高級車になるにつれオシャレなフォントでかなり小さめのプレートがついていることが多く、見かけるたびに「あれってOKなのか?」と思っていました。すると、この点に関して2022年6月に地元メディア malaymail で「規定外のナンバープレートを取り付けていた車のほとんどが、販売価格16万リンギ (約480万円) 以上の車だった」というシンクタンクの調査結果について報道が。やはり感じていた印象は実際その通りだったんだなぁと納得しました。車を購入した時点で、すでに規定に違反したナンバーがついているってことなんでしょうかね。(参考:malaymail “Study: Most cars with non-compliant numbers plates priced above RM160,000“)
破損したらすぐ交換が必要
マレーシアのナンバープレートは日本のような金属プレートではなく樹脂製です。なので、道路が冠水しているところに突っ込むなど強い衝撃を受けるような運転をすると、特に車体前側のナンバープレートがバキッと割れたり脱落したりすることがあります。
もしそうなった場合は、できるだけ早く新しいナンバープレートを取り付けなければいけません。ナンバーがついていない状態で走っているところを警察やJPJに見つかれば間違いなく停められますが、もし前日の大雨で破損したばかりといった状況なら、丁寧に説明すれば「早く新しいの付けろよ」と注意だけで行かせてくれることも (筆者友人の経験談より)。
ナンバープレートの作成は車のディーラーに行ってもいいですが、近くのショップロットに行けば大抵はどこかにプレートを扱っているお店 (車の修理屋、建築資材屋など) が見つかるので、そこで自分の車のナンバーを作ってもらいましょう。封印もないので、その場ですぐ取り付けてもらえます。
このように、日本とは色々な点で異なるマレーシアのナンバープレートですが、アルファベットと数字の組み合わせを見て少し意味が分かるようになると面白いですよ。
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[参考資料]
(2022年10月27日) “JPJ eBid collection in 2022 now at RM286 mil from 124 number plate series – average of RM2.3 mil per series”. Paultan.org, URL: https://paultan.org/2022/10/27/jpj-ebid-collection-in-2022-now-at-rm286-mil-from-124-number-plate-series-average-of-rm2-3-mil-per-series/ (参照日:2022年11月12日)
“Vehicle registration plates of Malaysia”. Wikipedia, URL: https://en.wikipedia.org/wiki/Vehicle_registration_plates_of_Malaysia#Current_format (参照日:2022年11月12日)