コーヒーの品種ノートです。
バティアン (Batian)
由来: | SL-28、SL-34、ルメ・スーダン、N39、K7、SL-4、ティモール・ハイブリッドなどの複合品種 |
豆のサイズ: | 非常に大きい |
収穫量: | 多い |
風味の質: | とても良い |
初回収穫: | 2年目 |
さび病: | 耐性あり |
炭疽病: | 耐性高い |
線虫: | 耐性低い |
栽培適正標高: | 北緯5度~南緯5度:1,000m以上 北緯/南緯5度~15度:700m以上 北緯/南緯15度以上:400m以上 |
バティアンの歴史
バティアンはケニアで2010年に開発された比較的新しい品種です。ケニアの首都ナイロビ近郊のルイルにあるコーヒー研究所 (CRI) では、病害に強い品種の開発を目指して長年にわたり研究・改良が行われてきました。このバティアンは、同研究所で開発された炭疽病 (CBD) やさび病への耐性を持つルイル11という品種の子孫から選別され、SL-28、SL-34、ルメ・スーダン、K7、ティモール・ハイブリッドなどそれぞれに特徴を持つ複数品種にルーツを持っています。
バティアンの最大の特徴は、何といっても病害への高い耐性です。また、土壌に深く根を張ることから様々な環境下で生育できる強さも持っています。加えて、収穫量の多さや2年目から収穫できるという点も生産者にとっては魅力でしょう。実はルイル11も似たような特長を備えていますが、肝心のコーヒーの風味が定評のある他の品種と比べてやや劣るという評価が拭えず、残念ながら商業的に大きく成功したとは言えません。その点、バティアンは高い評価を得ているSL-28により近い遺伝子を持ち、病害耐性だけでなく優れた風味も備えた品種となっています。実際、専門家によるカッピングではいくつもの風味特性においてSL-28を上回る評価を得ているほどです。
こうした特長を備えたバティアンは、高い収穫量を見込める上に農薬の使用も少なくてすむことから、とりわけ地元の小規模生産者にとっては導入するメリットが大きい品種と言えます。ただし、家族で営んでいるような小規模生産者の場合、せっかくバティアンを栽培しても生産処理の段階で他のSL系品種やルイル11などと混ぜられてしまうことが非常に多いと見られ、今後どのようにバティアンという品種をそのまま「シングル・オリジン」として流通させていけるかという点が課題となっています。
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[参考資料]
World Coffee Research (2016) 「COFFEE VARIETIES of Mesoamerica and the Caribbean」, URL: https://worldcoffeeresearch.org/media/documents/Coffee_Varieties_of_Mesoamerica_and_the_Caribbean_20160609.pdf (参照日:2018年3月15日)
(2016年9月15日) Batian: Can This New Varietal Transform Kenyan Coffee?, Perfect Daily Grind. URL: https://perfectdailygrind.com/2016/09/batian-can-this-new-varietal-transform-kenyan-coffee/
Highlights of Batian. AFCA. URL: https://afca.coffee/highlights-of-batian/ (参照日:2020年7月20日)