マレーシア地元情報

【マレーシア】現地の日本人から見た活動制限令 (MCO) ―4週目

投稿日:2020年4月10日 更新日:


Blue mosque

by Andale Lucy on Pixabay

ついに日本でも緊急事態宣言が出され、まだまだ世界中で終息の兆しが見えない新型コロナウイルス (COVID-19)。マレーシアでは3月18日より活動制限令 (MCO) が施行され、実質的にロックダウンに近い状態になってから約1か月が経ちます。この記事では実際に現地で生活している日本人の目線で、制限令下の日常で大変なことや気づいたこと等をお伝えします。

本記事の情報は2020年4月当時に書かれたものです。現在の状況とは異なる内容が含まれている点をご了承ください。

日本よりかなり厳しい制限

マレーシアの活動制限令 (MCO) は、日本のような「不要不急の外出を自粛してください」という柔らかなものではありません。不要不急の外出は明確に禁止であり、違反者には罰則があります。

もちろん買い出しや医療機関の受診、あるいは生活に必要不可欠なサービスとして認められた業種で働く人が自宅と職場を往復することは許可されていますが、外出してよいのは1人だけ行動範囲は基本的に自宅から半径10kmまでとされています。いたるところで警察と軍が検問を行っており、「自宅はどこで、どこに何をしに行くのか?」と厳しくチェックされ、自宅住所を確認できる書類の提示を求められることもあります。もし自宅より10km以上離れたところにいたり車に2人以上乗っていたりする場合は、その理由を説明しなければいけません。警察署発行の許可証や移動が必要な理由を記した雇用主からの書類を持っている、あるいは病院に行くなどの当局が認める特別な事情がない限り、違反者として罰則が科されます。

もし「食料品を買いに行った帰りだ」と答えれば、トランクを開けて本当に買い物をしているかどうか確認したり、買い物をした店の名前を言わされたりするほど徹底したチェックを行っており、「ちょっとそこまで」といった言い訳が通用する状況ではないのです。

仕事に関しても、日本のように休業要請をするしないで揉めるようなレベルではなく、生活に必要不可欠なサービスとして政府が指定した業種以外は全てのビジネスに休業命令が出されており、違反すると雇用主・従業員共に有期刑も含む厳しい罰則が科されます。

長期の外出制限で大変なこと

すでに一度延長されてほぼ1か月になる活動制限令 (MCO)。厳しく外出が制限されていることで、徐々に生活の中にも様々な影響が出てきます。

全く運動ができない

Group exercise

by Andrzej Rembowski on Pixabay

体を動かせないというのは、外出制限が長期になればなるほど辛くなってきます。制限令期間中は、たとえ自宅の前であっても散歩やジョギングすら許されていません。(実際、自宅周辺をジョギングしていた日本人が逮捕されています。参考―PRESIDENT Online:「マレーシアで「ジョギングで日本人逮捕」が起こった現地事情)

また、仕事が全てオンラインとなると職場に行くこともなく、買い物も最低限の回数で済ませるようになってくると、日常生活で歩くことすらほぼなくなってしまいます。運動しようと思っても当然コンドミニアムのジムやプールは使用禁止ですし、建物内をジョギングすることも管理事務所から禁止されているケースがほとんどです。その状態が数週間も続くと、体調 (体重) に影響が出る人も少なくないでしょう。

ずっと家にいる上に運動もできないというのは、精神衛生上あまりよくないのは確かです。体を動かすことでストレス発散にもなるので、自宅でできるエクササイズを意識的かつ定期的に行なうのは、長期にわたる外出禁止を乗り切るために必須だと感じます。

仕事とプライベートを分けにくい

Computer desk at home

by inkflo on Pixabay

また、いわゆるテレワークが長期になると仕事とプライベートの境界がなくなるのも外出制限中の見過ごせない問題の一つです。上手くオン・オフの切り替えができない人は強いストレスに晒されることになり、仕事のパフォーマンスに影響が出ることもあります。(同僚相手に感情的になったり、限界がきて泣き出したりするケースもある)

また、普段であれば日中は顔を合わせない家族が24時間一緒にいるわけで、そのため生活や仕事のリズムが狂ってしまう家庭も見られます。テレビなどで「退職後は夫が毎日家にいるのがストレス」と言っている主婦のコメントを聞いたことがあると思いますが、自宅から出ることすらできない状況では笑い話では済まなくなるわけです。外出制限という状況下では、普段は自分のペースで出来ていたことも家族内でゆずり合うよう意識しながら生活することが大切ですし、仕事時間中は家の中でもお互いのスペースを分けて活動するなどの工夫も必要かもしれません。

散髪に行けない

マレーシア政府は、理容室や美容室を生活に必要不可欠なサービスとはみなしていないため、制限令期間中はヘアサロン関係が全て閉鎖されています。外出禁止の期間が1か月を超える状況になると、ずっと散髪に行けないというのは、特により頻繁にカットする男性にとっては結構気になるものです。お隣のシンガポールでも同様の活動制限である「サーキット・ブレーカー」を実施中ですが、あちらはヘアカラーはだめだけどカットはOKとのこと。この辺りはマレーシアでも少し緩和して欲しいところです。

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日本人 (外国人) として大変なこと

当然ながら活動制限令 (MCO) はマレーシア人にも外国人にも適用されていますが、そこにはやはり日本人として大変だと感じる点もあります。

最新情報へのアクセス

Stuck of newspaper

by Gino Crescoli on Pixabay

新型コロナの状況は毎日変化しており、政府の対応も非常に早いスピードで変化していきます。日本であれば、国民に大きな影響のある決定がいきなり発表されることはあまりありませんが、マレーシアは良くも悪くも規制や決定がコロコロ変わることが珍しくありません。(今日はOKだったことが突然明日から禁止される等) そのような状況にあって、現地ではとにかく日本語の最新情報が不足しています。

地元メディアの情報を把握していれば、当局や政府関係者の発言などから「これは規制が延長されそうだな」とか「移動の制限がさらに厳しくなりそうだ」といった空気をつかむことができます。地元のマレーシア人の多くは新聞やメディアのサイトを毎日こまめにチェックしており、そこから得られる情報を元に様々な判断をしています。例えば、州の条例で買い物時にマスク着用が義務だとされていたのが、「マスク着用を強制するのは間違いだ」という政府首脳のコメントが出た途端にそれが新しい基準になるわけですが、こうした早い動きについていけている在住邦人はそれほど多くありません。

日本人が入手できる最新情報と言えば、主に日本の報道でたまに取り上げられるマレーシア関連のニュース、または現地日本大使館からの情報に限られています。大使館の情報は信頼できるものの基本的には確定した情報を翻訳して伝えてくれるだけで、公的機関という性格上、決まっていないことを参考情報として発信することはまずありません。そのため、地元言語での情報収集ができない人はローカルに比べて現状の把握が遅れてしまいます。ただ、ここ数日は日本大使館も様々な情報 (例:買い物や検問時に使える表現等) を参考資料としてまとめて公開しており、色々制限もある中で努力されているんだろうなと思います。(参考―在マレーシア日本国大使館:「【新型コロナウイルス】在留邦人及び渡航者の皆さまに有用な参考資料のご紹介」)

こうした状況で、日本人コミュニティーの中でSNSメッセージ (WhatsAppなど) の日本語情報がよく回っていますが、情報元や出典が不明で「地元の友人に聞いたところ、~だそうです。」と言ったものが多く、余計に混乱を招いています。SNS上で英語やマレー語のショッキングなニュースが回ってくると、内容の真偽を確認しないまま日本語に訳して (恐らく親切心から) 日本人コミュニティーに転送しているのだろうと思いますが、元になった英語やマレー語のメッセージが後にいわゆる「フェイクニュース」だと確認されても、その情報は英語メディアを読んでいない日本人には伝わりません。結果として、日本語に頼らざるを得ない人たちが間違った情報を信じているケースがあるのは残念なことです。

外国人により厳しい罰則

制限令に違反した場合の罰則もマレーシア人と外国人とでは異なっています。以前は制限令違反は刑事手続きが取られていたものの、制限令開始以来7,000人以上も逮捕して刑務所が混雑し過ぎているということで、各界から刑事事件としてではなく反則金で済ませるよう要望が挙がっていました。こうした動きを受けて政府は、公務執行妨害等を伴わない制限令違反行為そのものについてはRM1,000の反則金へと4月8日以降罰則を改定しました。

※ 現地日本大使館からの情報によれば、この改定はマレーシア人と永住者のみに適用されるため、外国人が制限令に違反した場合はこれまで通り刑事事件として扱われ裁判所への出頭が求められるとのこと。外国人が制限令に違反するというのは地元感情を逆なですることでもあり、そうした意味でも結果的に警察当局の対応が厳しくなる傾向が見受けられます。(参考―在マレーシア日本国大使館:「【新型コロナウイルス】活動制限令違反に伴う反則金の徴収の開始(永住権を有する邦人のみ該当)」)

(2020年4月15日:追記) イスマイル・サブリ国防相は4月14日、1週間前に改定したばかりの違反者への反則金納付措置を停止し、4月15日以降は違反者を逮捕・起訴すると表明。制限令 (MCO) 違反については、以前のように有期刑も含めた刑事事件として裁判所で扱われることになります。いまだに制限令の違反者が後を絶たないことに当局は苛立ちを隠しておらず、同大臣が「RM1,000程度の罰金では抑止効果がないようだ」と述べていることからも、金額がさらに引き上げられる可能性もあります。(参考―The Star: “No more compounds, MCO violators will be arrested and charged in court, says Ismail Sabri“)

地元マレーシア人の反応

マレーシアの場合、政府が何か強制的な措置を導入した場合でも「人権が~」「プライバシーが~」「~になったらどうするんだ」といった日本でよくあるような抵抗は全体としてあまり見られません。むしろ、特に飲食店関係などは文句を言うよりも規制をすり抜けて何とか稼ぐ方法を編み出すことに力を使っています。また制限令が延長されたことについても、新型コロナ (COVID-19) の感染拡大を止めるためには多少の不自由や犠牲は仕方ないと受け入れる人が大多数のようです。

唯一、マレーシア人がかなり拒否反応を示していたのが軍の展開についてでした。しかし、政府は制限令1週目には結局軍を投入し警察と共同で検問や封鎖の施行に当たらせています。ただ、軍に対する一般市民の反応には政府も敏感で「検問や兵士、軍用車両などをネガティブな印象で写真に撮るな」と言っていますので、むやみにカメラを向けたりしないよう注意が必要です。

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まとめ

ほぼロックダウンに近いマレーシアの活動制限令 (MCO) ですが、ある程度慣れればそれなりに生活はできます。ただ、自宅からほぼ出られないというのは実際の不便さよりも精神的な負担の方が大きいように感じます。

毎日規則正しい生活をすること、一日の中でもエクササイズやシャワーを浴びるなど意識的に息抜きを入れてメリハリをつけること、そしてできないことばかり考えるのではなく、制限中でもできることを工夫して少しでも楽しみを持つことなどが、長期にわたる外出禁止を乗り切るカギになると思います。

マレーシアは制限令の再度の延長で、最低でも計6週間ほぼ外出できない状態が続きます。日本も1か月の活動自粛期間となりますが、こればかりは政府に協力して感染拡大を減らすよう各個人が努力するしかありません。もちろん文句を言いたくなる事情はそれぞれあると思いますが、気持ちの切り替えをしないことには何もかもが不満に思えて悪循環に陥ります。新型コロナが世界中で終息に向かうまでは、ソーシャル・ディスタンシングや大規模イベントの中止など何らかの制限は続くものと考えて、その枠内で生活を楽しんでいきましょう。


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管理人: Gaku

40代の通訳者です。
マレーシアのクアラルンプール在住。

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毎朝、妻と二人でコーヒーを飲むのが日課。でも、珈琲ネタを語りだすとサラリと流されます。