マレーシア地元情報

【新型コロナ (COVID-19)】マレーシアの感染状況は?

投稿日:2020年1月24日 更新日:


picture of coronavirus

中国の湖北省武漢市で発生し、その後世界中で感染が拡大するパンデミックとなった 新型コロナウイルスCOVID-19)(注:日本ではあまり使われていませんが、英語圏では通常「コビッド・ナインティーン」。「武漢ウイルス」「中国ウイルス」という呼称も一部の国では定着しつつある)。現地からマレーシアの状況と地元の様子をお伝えします。

(感染状況:2020年4月1日現在) マレーシア国内の新型コロナウイルス (COVID-19) の感染者は計2,908名、死者は計45名となっています。(参考―The Star:”Covid-19: 108 recoveries recorded on Wednesday (April 1), highest in a single day“)

(2020年3月25日更新) 感染者の急増を受けて、3月18日より活動制限令 (Movement Control Order)が施行されています。詳細は当ブログ記事「【新型コロナ (COVID-19)】マレーシアの活動制限令について分かっていること」また「【マレーシア:新型コロナ】延長された活動制限令 (MCO) で何が変わるか」で扱っています。

※ 3月25日、マレーシア政府は当初3月31日までとしていた制限令を4月14日まで2週間延長すると発表しました。

『今日の一言』(2020年4月1日) :今日も退院者数が過去最大ということが見出しのトップに。一方で、集中治療室 (ICU) に入っている患者数は100名を超えました。じわじわと上がっているICU患者数は、マレーシア政府も注視しているはずです。

予想通り延長された活動制限令 (MCO) で色々と規制が厳しくなってきました。実質的に夜10時から朝6時までの外出が禁止になっている上、日中の外出も非常に限られた範囲でのみ許されており、 「外出禁止令じゃない」「ロックダウンじゃない」と言っているものの、実際にはヨーロッパ各国のロックダウンと同じかそれ以上に厳しい部分もあります。ずっと家にいることでメンタルがやられないように、一日の活動の中でメリハリをつけるようにしましょう。

マレーシア政府の対策

(2020年3月12日:追記) 報道によると、2月27日から3月1日にかけてセランゴール州のスリ・ペタリン モスク (Masjid Seri Petaling) で開かれたイスラム教の集まりの参加者から感染者が出たとのこと。この患者はブルネイ当局が感染を確認したものですが、集まりには世界各国から1万人1万6,000人が出席しており、そのうち約半数の5,000人1万4,500人がマレーシア人だったと見られています。人数が膨大なことから参加者の完全な特定はできないと見られ、マレーシア当局は集まりに参加した人の自主的な隔離 (自宅待機) を求めています。(参考―The Star (英語): “Covid-19: 14,500 Malaysians attended Sri Petaling mosque programme, not 5,000“)

こうした状況も踏まえ、3月12日に保健省は「大勢が集まるイベントは直ちに延期するように」と勧告しました。

(注記:3月13日になって、集まりの規模が当初言われていたよりも1.6倍、マレーシア人の参加者は3倍にも上ることが判明。ある程度の感染者が発生していた場合は、マレーシア国内の新型コロナウイルス防疫において致命的な拡散を許してしまったことになります。)

マレーシアは人口の約4分の1が華人系ということもあり、旅行先として中国語圏から訪れやすい国であると共に、ビジネスにおいても中国とのつながりが深いところです。そのため、中国を発生源とした今回の感染拡大では国内への感染者流入を防ぐことが大きな課題となりました。

当初の水際対策としては国内主要空港でのサーモグラフィー検査(体温検査)を強化しており、実際に空路でマレーシアに到着したクルーズ船「ウエステルダム」の乗客の中から感染者を発見したのはKLIAでの体温検査だったとのことで、対策にはある程度の意味はあったように思います。ただし、より長い事例も報告されているものの一応14日程度とみられる新型コロナ (COVID-19) の潜伏期間や、無症状の感染者からでもうつることを考えると、サーモグラフィー検査による感染者のスクリーニングには限界があります。世界各地の事例を見ても分かるように、潜伏期間の感染者が無自覚のままウイルスを拡散させることが防疫対応を非常に難しくしています。

1月27日にマレーシア政府は、武漢ならびに湖北省地域からの中国人渡航者へのビザ発給を停止すると発表しました。約2週間後の2月9日には、湖北省に加えて新たに浙江省と江蘇省地域からの中国人渡航者へのビザ発給も停止。同時に、過去14日以内に制限対象地域となっている湖北省・浙江省・江蘇省への渡航歴がある場合、国籍に関わらず入国禁止という措置が即日実施されました。また、3月13日より韓国人、イラン人、イタリア人、また過去14日以内にこれらの国への渡航歴がある外国人は入国禁止とし、3月5日には過去14日以内に北海道への渡航歴がある場合は原則入国禁止という措置も発表しています。

そんな中、増え続ける感染へのより強力な措置として、マレーシア政府は3月16日に「活動制限令 (Movement Control Order)」を公布。制限令中、シンガポールとタイも含めた海外へのマレーシア人出国禁止、ならびにすべての観光客・外国人渡航者入国禁止3月18日から適用されます。

当初は中国からの渡航者に限られていた感染者ですが、その後マレーシア人や中国以外の外国人に感染が広がりました。マレーシア人初の感染者となった男性は、1月20日から22日にかけてホテル「グランドハイアット・シンガポール (Grand Hyatt Singapore)」で開かれたビジネス会議に出席。同会議の参加者の中から、マレーシア人男性に加えて複数のメンバーが感染したことが明らかになっています。100名程度の参加者が数日間にわたって同じ空間で過ごす会議やセミナーに感染者が出席していた場合、食事やディスカッションなどを通してかなりの人数が感染者といわゆる「濃厚接触」を持つことになります。このような国際的なイベントの場合、感染したことに気づいていない参加者が世界各国に戻ることで一気に感染を広げる危険性が高くなるわけです。クルーズ船やスポーツイベントなどについても同じことが言えるでしょう。

各国で入港を拒否され続けたあげく、最後にカンボジアへたどり着いたクルーズ船「ウエステルダム」。カンボジア政府は「感染者はいない」として経過観察することなく乗客を下船→空路で帰国というプロセスを踏みましたが、経由地のマレーシア・クアラルンプール国際空港の検疫で感染者がいたことが判明。マレーシア航空は乗客を輸送するために予定していたチャーター便をすべてキャンセルし、マレーシア当局も今後「ウエステルダム」の乗客はすべて感染者と濃厚接触があったとみなし入国を拒否すると発表するなど、かなりグダグダな状況になりました。日本が受け入れた「ダイヤモンド・プリンセス」もそうですが、こうした状況における人道的な措置とは何なのかを考えさせられます。

当初、マレーシア国内の感染者は半島マレーシア側となっていました。しかし、航空会社の利用客数をベースにした統計では、昨年中国武漢からの旅行者が多かった都市として、クアラルンプールより上位に来ていたのが東マレーシアコタキナバル (KK) です。コタキナバルが渡航先としてそれほど中国人観光客に人気があった (2019年1月~2月期:計4,531人) のであれば、恐らく一定数の中国人旅行者が今年の春節前にもやって来ていると考えられます。(参考―The Lancet (英語): “Nowcasting and forecasting the potential domestic and international spread of the 2019-nCoV outbreak originating in Wuhan, China: a modelling study“)

3月に入ると東マレーシアでも感染者数が急速に増加。3月24日現在ではサバ州、サラワク州合わせて250名を超える感染者が確認されています。大家族が多く、衛生面での意識もそれほど高くない土地柄ということもあり、今後も十分に注意が必要です。

(2020年3月16日:追記) サラワク州政府は、3月18日以降 同州へ入って来る全員を対象に14日間の自宅待機措置を実施すると発表しました。(参考―The Star (英語):”S’wak to impose two-week stay at home order from Wednesday (March 18) for everyone entering the state“)

(2020年3月19日:追記/3月20日更新) サバ州政府は3月17日、同州出身者以外は州政府の特別許可がない限りサバ州への入境を禁止する措置を発表し即日実施。 (注:サバ州政府は3月19日、サバ州出身者の配偶者 (婚姻証明を提示する必要あり) やその子供、またサバ州で有効なビザ保有者の一部については入境できるよう規制を緩和しました。ただし、その場合でも14日間の自宅待機措置が課せられるとのこと)。(参考―The Star (英語):”Covid-19: Sabah bars entry of non-Sabahans to the state” / “Sabah relaxes immigration restrictions for service duties“)

東マレーシアは、入国管理も半島マレーシア側からは半分独立した形になっているなど州政府に強い権限があり、このような州独自の法令を出すことがあります。

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マレーシアにみる不安要素

先に述べたように、マレーシアでは華人社会が人口の25%ほどを占めています。そのため、中国新年 (春節) 関連の行事も非常に多く、中華系のマレーシア人の多くが家族・親戚一同で集まって食事をしながら新年を祝います。こうした祝いの席は大人数が近距離で長時間接触することになり、実際マレーシア人初の感染者となった男性からも春節関連の食事等で他の家族や親族に感染していたことが確認されています。判明していないだけで、他にも感染があった可能性は高いでしょう。

一般的に言ってマレーシア人は衛生に関してさほど敏感ではありません。保健衛生の観点からは基本的とも言えるトイレの後の手洗いや、外出後のうがいなどが習慣になっていない人は大勢います。また体調が悪ければマスクをする、咳やくしゃみをする際には口を覆うといった常識的なことも、当地ではさほど気にしていない人が少なくありません。

他民族・他宗教国家であるマレーシアは、よい意味では大らかな国民性です。よくも悪くも高度な管理社会であるシンガポールや、国民性としてキレイ好きなところがあるタイ (なぜかマスク着用も比較的浸透している) といった隣国と比べると、マレーシアは現場での確実なルール運用、そして一般市民の衛生面での高い意識と協力が不可欠となる緊急時の感染対策を徹底するには不向きな国であるというのは否定できないところです。

さらに、マレーシアは外国人労働者を多数抱えています。インドネシア、ネパール、ミャンマー、バングラデシュ、カンボジア、フィリピンなどからの出稼ぎ労働者が、建設現場、警備員、レストランスタッフ、メイドなど幅広い業種で働いており、その多くは狭い空間に大人数が寝泊まりするような環境で暮らしています。(1軒の家に10人から20人住んでいることも普通) こうした環境で新型コロナの感染者が出ると、同居している労働者間で急速に感染が広がることは避けられず、さらにそこから職場や職場で接する人たちに拡大していくリスクがあります。また、こうした労働者は育った環境のため衛生に関する知識が十分でなかったり、体調不良でも医師の診察を受けなかったりすることもあり、マレーシア国内での感染病の拡大を防ぐ上では大きな弱点と言えるでしょう。

もう一つの不安要素は、マレーシア人は国外のニュースにあまり関心を持たない人が結構多いということ。なので、現時点でもまだ平気で日本に観光旅行する人がいるのも事実です。実際に私の友人家族は小学校低学年の子連れにもかかわらず、2月末に感染拡大まっただ中の北海道へと出発。「日本はクルーズ船の患者がほとんどだって聞いてるよ。北海道は人も少ないし大丈夫!」と危機感ゼロ。今さらキャンセルすると飛行機代やホテル代がもったいないというのも分かりますが、こうやって世界中にウイルスが拡散していくんだなと妙に実感させられました。

実際、活動制限令 (MCO) が施行された後も、地元のマレーシア人 (特に中高齢者) は初日から相変わらずフードコートで朝食を取ったり、ご近所さんと集まって話をしたりと、何のための制限か分からない状態となりました。制限を出す側の当局もどこまで実情を把握して詳細を詰めたのか疑問に思えるところも多々あり、国民性というのが感染対策には大きく影響するということを実感させられます。

Kuala Lumpur city

クアラルンプール中心部の街並み

地元の反応は?

地元紙でも連日大きく取り上げられている新型コロナウイルス (COVID-19)。1月はまだ緊急感がない人が大多数でしたが、2月に入ってからは中国人旅行者ではなくマレーシア人の感染例が出てきたこともあり、地元の警戒感も一気に高まりました。しかし、一時期はかなり増えた感のあったマスクをする人の姿も2月末頃には再び少なくなってきます。このあたりがいかにも飽きっぽいマレーシア人らしいところですね。

マスクアルコール消毒スプレー (ハンドサニタイザー) は、都市部では数週間近くほとんど売り切れの状態でしたが、2月中ほどになると薬局でもちらほらと見かけるようになってきました。ただし、価格はまだかなり高めに設定されているところが多いように感じます。お隣のシンガポールが警戒レベルをオレンジに引き上げた際、トイレットペーパーなど日用品が売り切れたという報道がありましたが、それ以来KL市内でもトイレットペーパーなどを大量に買いだめする人が一時的に増えました。在留邦人の方も、各家庭でいざという時に一週間から二週間ほどは外出を控えても食べ物と水をまかなえるぐらいの準備は必要かもしれません。

マレーシアには日本から観光や修学旅行などで来られる方も多いと思いますが、現地在住者としてはクアラルンプール市内だとKLCC、中華街、ブキッビンタン周辺は、混み具合や中国人旅行者からの人気度なども考えると感染リスクが高めだと感じます。でもここに挙げたところに行かなかったら、KLでどこに観光行くんだという話なんですけどね。

現地在住の欧米人の間では、「コロナウイルスに勝つには『コロナビール』だ!」と、冗談ではなく本当に“コロナビール パーティー”をやっている人たちもいたりします。(※ 日本人だと「こんな時に不謹慎な」と眉をひそめる人もいると思いますが、日本以外の場所では、災害時などに“自粛する”という思考は基本的にありません。)

ただし、カナダでまさにこの「コロナビール」パーティーを派手にやりすぎた大学生が謝罪するはめになったという報道が。記事を読む限りでは、会場に”バイオハザード”の飾りつけをしたりマスクを着けて参加するなど、常識的な範囲を超えてふざけすぎたようですね。自宅でこっそりやる分にはともかく、やはり今のご時世こういう事をSNSにアップして世界に発信するのはアウトでしょう。ただ今回問題になった理由は、記事の論調や過去に同大学の生徒がやらかした問題も踏まえて考えると、災害時の自粛云々というよりは「ホワイトウォッシュ」などの議論に近い空気も感じます。(参考―ハフポスト日本版:「手術用マスクをつけて、コロナビールを…。 “コロナウイルス・パーティー“に参加した大学生が謝罪」)

現地の日本人の皆さんは、正確な情報を入手しつつ国内での感染拡大に備えて食料・水の備蓄や医療品を確保するなど、まだ周囲が普段と変わらない今のうちにできる備えをしておきましょう

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インターナショナルスクールの対応

Classroom with tables and chairs

by Marie on flickr

(2020年3月17日:追記) マレーシアのインター各校は、3月16日から休校を決めたところが複数あったようです。どちらにせよ、マレーシア政府が発表した「活動制限令 (Movement Control Order)」により、マレーシア全国の学校は公立・私立ともに3月31日まで休校学校閉鎖となります。ただしインター校の場合は、4月上旬などもう少し長い期間独自の休校措置を取るところもあるようです。

首都圏のクアラルンプール周辺地域、ならびにペナンやJB (ジョホールバル) などの大きな都市にはインターナショナルスクールが何校もありますが、学校によっては在校生徒の多くが中国本土出身というところもあります。そうした学校では、当然中国人生徒と保護者の多くが春節の時期は本国に一時帰国していました。

マレーシアのインター各校では、感染者と接触した可能性のある教員・生徒の扱いをどうするか苦慮したようですが、多くの学校では中国へ渡航した、または中国からの渡航者と濃厚接触があった場合に2週間の登校自粛という措置を取ったようです。政府による指示ではないため強制力はありませんが、学校側で目安となる期間を出すことには意味があったと言えるでしょう。

中国以外の国での世界的な感染拡大を受けて、インター校の中には海外渡航のルール作りを進める動きが見られています。アメリカ疾病対策センター (CDC) の渡航情報警戒レベルに応じて、最高度のレベル3に分類されている国への渡航を原則禁止、もし何らかの理由で渡航せざるを得ない場合は事前に申請して学校からの許可を得ることを規定している学校が多いようです。また、レベル3の国へ渡航した場合は帰国後に14日間の自宅待機とし、さらに学校からの許可なしに旅行した結果として自宅待機になった場合はその間の給与を停止するなど、学校内への感染拡大を防ぐために厳しい措置を取るところも出てきています。

さらに、多くの学校が見学者など部外者の訪問を全面中止学校関係者と来訪者すべてに体温検査を実施するなど、学校レベルで出来る限りの水際対策を取っています。また、今後さらに状況が悪化した場合を想定して、インター校の多くではオンラインでの学習 (バーチャルラーニング) プログラムも含めたバックアッププランを急ピッチで策定しているとみられます。

地元メディアによると、2月9日にマレーシア教育省のテオ・ニーチン (Teo Nie Ching) 副大臣が報道陣に対し、「最近中国へ渡航した学生と教職員には14日間の自宅待機 (隔離) が求められている」と述べたとのこと。また「学校に戻る前に、感染が疑われる症状の有無にかかわらず医療機関での健康診断を受ける必要がある」と指摘した上で、現在中国籍の生徒の新規受け入れを停止中であるとも明らかにしたようです。(参考―The Star:”Teo: Teachers, students must undergo 14-day self-quarantine if they visited China recently“)

こうした中、インター校では生徒の間での人種・国籍によるいじめや差別等が起きないようにコントロールする点でも注意が必要になってきているとのこと。保護者が「〇〇の国の子には近づいたらダメ」と子供に言っている場合など、特に低学年の生徒は親に言われたことをそのまま学校で言いふらしてしまうことも。外国人の場合、当地でもやはり同じ出身国のつながりで行動する人が多いものですが、そのことが「感染国への渡航歴がなくても、そうしたコミュニティーを通して間接的に感染しているのではないか」と親が疑心暗鬼になる原因となっているようです。

一時期は、マレーシアの地元で店員や近所の人に「Are you Korean or Japanese? (あなた韓国人、それとも日本人?)」と、ものすごく含みのある言い方で聞かれることもありました。まだアメリカの一部や東南アジアの感染者数が少ないところでは、アジア系に対する厳しい言動が見られるところもあるようです。しかし感染がここまで世界中に拡大した今となっては、イタリア人、フランス人、スペイン人、ドイツ人、アメリカ人・・・どの国籍であってもほぼ同じ状態になってしまったと言えるでしょう。

Teacher at classroom

by Steve Riot on Pixabay

さて、中国にもかなりの数のインターナショナルスクールがあり、そうした学校で働く外国人の中には当然アメリカ国籍の教師・職員も多く含まれています。関係者の話によると、春節の時期は周辺国で休暇のような一時待機をしていたものの、今後の見通しが全く立たなくなった時点で多くが本国へ帰国したようです。特に上海や北京のインターナショナルスクールは、無期限休校となっているところもあるとのこと。(現在はオンラインで再開している学校が増えていますが、当然ながら外国人教師にできることは母国からの遠隔サポートに限られています。)

いずれ今回の新型肺炎の感染が終息したとしても、今後あえて中国のインター校で教えようと思う外国人は相当少なくなるでしょう。リスク回避のため現地工場や駐在事務所を国外移転する動きが加速すれば、インター校に通う駐在員家族の数も当然影響を受けます。必要な人材・生徒の確保が非常に難しくなることは必至で、中国国内のインター校にとってはまさに死活問題となるのではないかと思います。

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シンガポール政府の対応

シンガポール政府は1月27日、中国から帰国した学校関係者や生徒に対して帰国日から2週間の登校停止を発令。また同月31日には、中国人旅行者ならびに過去14日間に中国を訪問した外国人旅行者を原則入国禁止とすると発表しました。シンガポールは東南アジア最大のハブ空港としても有名ですが、今回の入国禁止措置はシンガポール国内の空港で乗り換え (トランジット) の場合も適用されるということで、経由地としてシンガポールを訪れる旅行者にも少なくない影響を与える措置となりました。

また2月7日には、国内における感染症の警戒レベルを上げ「オレンジ」としました。これは、重要でない大規模なイベント等は中止または延期するよう勧告するものです。シンガポールでは毎月様々なビジネス会議や国際商談イベントが開催されていますが、今回の警戒レベル引き上げにより今後広範囲に影響が出てくるものと思われます。(参考― ロイター:「シンガポールが新型ウイルスの警戒レベル引き上げ、新たに3人感染」) 

警戒感が高まる中、2月12日には “世界最高のデジタルバンク” と称されるシンガポールの大手銀行DBSで社員1名の感染が確認されました。シンガポールの金融の中心であるマリーナベイ金融センター (MBFC) にある同社オフィスから、43階で働く社員300名が退去し在宅勤務に切り替える騒ぎとなり、この件はマレーシアでも大きく報道されました。こうした状況を踏まえ、シンガポールの企業ではマレーシアも含め原則として社員の国外出張・旅行の自粛を強く求めるところも出てきているようです。

(2020年3月19日:追記) シンガポール政府は3月18日、国民に対し即時にすべての海外旅行を延期するよう勧告しました。

色々な対策を実施してきたシンガポールですが、3月29日時点で確認された感染者は802名となっています。都市国家のため人口密度が高く、MRTなど公共交通機関が発達していて人混みが多いというシンガポールの環境では、一旦どこかで集団感染が始まるとコントロールが非常に難しくなります。水際対策で防げるレベルはもう通り越しており、今後は3次感染を増やさないことにリソースを振り分ける段階に来ているとみてよいでしょう。

また、JB (ジョホールバル) とシンガポールを結ぶコーズウェイだけでも1日あたり30万人以上が渡ると言われており、これに空路での往来も含めると毎日相当な人数がマレーシアとシンガポールを行き来しているため、どちらか一方だけが無事で済むということはまずありません。実効性のある規制なども含め2国間でより連携した対応が求められそうです。今後当局がどのタイミングでどの程度の移動制限などを発令するのか、特にシンガポールとマレーシア在住の方々は注意が必要でしょう。

(2020年3月22日:追記) シンガポール政府は、今後3月22日夜11時59分よりすべての外国人の短期滞在ビザでの入国を拒否とする措置を発表。(トランジットも含む)

(2020年3月19日:追記) 国外からの流入による感染者の増加が止まらない現状を鑑み、シンガポール政府は3月20日夜11時59分よりすべての入国者14日間の自宅待機措置 (SHN) を課すことを発表。また、その間の滞在場所も入国時に確保している必要があります。(宿泊施設の場合は14日間の予約証明が必要) なお、これまでに発表されている中国本土、韓国、イラン、イタリア、フランス、ドイツ、スペインへの渡航歴がある短期滞在者の入国拒否は継続されます。

(2020年3月21日:追記) 3月20日、両国の政府はビザを持つマレーシア人がシンガポールでの就労を再開できるための措置に合意しました。マレーシア政府は外国の長期ビザを持つマレーシア人の出国を条件付きで許可、シンガポール政府も一時的な宿泊施設の提供ならびにマレーシア帰国前の検査措置を実施するとのこと。(参照―The Star (英語):”Malaysians to resume work in Singapore“)

Singapore Merlion

by Graham Hobster on Pixabay

シンガポールでは保健省が新型肺炎の特設ページ(英語)を作り、国内の感染者数、現時点で感染の疑いがある人数、また検査で陰性だった人数を随時更新するとともに、新型コロナウイルスに関係するこれまでの経過と対応を時系列で掲載、またネット上やSNSなどで広がっているデマについては個別に真偽を説明し否定するなど、政府として市民に対して正確で詳細かつ必要な情報を迅速に伝える上で効果的な対応を取っています。

余計なリンクがないテキストベースのレイアウトで、1ページに全ての情報が含まれていることなど、日本の厚生労働省のウェブサイトとはアクセスのしやすさがまるで違います。厚労省のサイトは、発出日やごとに資料がバラバラで情報が一つにまとまっておらず、必要な情報を入手するためには幾つもリンクをたどらされるのが致命的。他国の効果的な事例を積極的に取り入れて、緊急時には普段のレイアウトを大幅に変えてでも分かりやすく使いやすい情報提供を行って欲しいものです。

さて、今回の新型肺炎に関して情報公開においてはポイントが高いシンガポールですが、肝心の水際対策が甘かったのではないかという批判の声も上がっています。

シンガポールはビジネスハブとして脚光を浴びることが多いものの、実は結構な観光立国。当然中国人は観光産業にとっては上得意様であり、今回の感染拡大局面で感染エリアからの中国人を入国拒否としたタイミングも、早期に厳しい措置を取ったフィリピンと比べると1週間ほど遅れています。そのため、東南アジアの中では断トツに統制が利くはずのお国柄にもかかわらず、感染者の数は東南アジアで最も多くなっています。

先日、マレーシアに来ていたシンガポール人の友人の幾人かと話す機会がありましたが、意外に感じたのがシンガポール人は「マレーシアでは新型コロナに感染しそうで怖い」と思っているということ。3月2日現在では公表されているシンガポールの感染者数はマレーシアの3倍以上で (ちなみに3月24日現在は逆転して、マレーシアの感染者数がシンガポールの約3倍)、マレーシア人は「これだけ感染者が増えているシンガポールはヤバい」と思っていたわけですが、当のシンガポール人は「シンガポール政府は透明性が高いから正直に数を出してるけど、他の国は本当の感染者数を公表してないから、結果的にシンガポールの状況がひどく見えてるだけ。実際はマレーシアの方が絶対危ないと思う」とのコメントでした。

こう聞くと、自分の (住んでいる) 国が他国からどう見られているかというのは外の人に聞いてみないと分からないものですね。

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まとめ

現時点でマレーシアや近隣国の感染状況を見る限り、新型コロナウイルス (COVID-19) の感染が終息するのはまだ当分先のことになりそうです。ある意味で日本のようにダラダラと感染を引き延ばせるのか、それともヨーロッパ各国のように爆発的に感染が拡大してしまうのか。結果次第では、東南アジア地域全域の経済と発展は今後数年にわたって大きな影響を受けることになります。

東南アジア各国に在住の日本人の方々は、地元の情勢に十分注意を払いつつ “自分の身は自分で守る” ことを忘れずに、それぞれの国で感染が落ち着くまでの期間を乗り切ってください。

(2020年3月24日) 記事内容をマレーシアとシンガポールの状況に絞るため、その他の国について扱った部分を省略するよう修正しました。

(2020年2月2日:写真追加、誤字修正)
(2020年2月17日:タイトル修正、記事加筆修正)
(2020年3月2日:記事加筆修正)
(2020年3月19日:テキスト追加・修正)
(2020年3月24日:記事修正、レイアウト変更)


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マレーシアのクアラルンプール在住。

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