マレーシア地元情報

【新型コロナウイルス】マレーシアの感染状況は? (2020年2月16日更新)

投稿日:2020年1月24日 更新日:


picture of coronavirus

中国の湖北省武漢市で発生し、急速に感染者数が増え感染爆発(パンデミック)が懸念されている新型コロナウイルス(COVID-19 / 通称:武漢肺炎)。東南アジア各国でも広範囲に感染が拡大している中で、マレーシアの最新の現状と地元の様子をお伝えします。

マレーシアは人口の約4分の1が華人系ということもあり、旅行先として中国語圏から訪れやすい国であると共に、ビジネスにおいても中国とのつながりが深いところです。そのため、中国―マレーシア間のヒトやモノの往来は活発で、中国を発生源とした今回の新型コロナウイルスの感染対策は非常に難しいものとなりそうです。

(2020年2月17日) ※追記等をまとめて記事全体を加筆修正しました。

 (感染状況:2020年2月19日現在) マレーシア当局は2月15日、中国人2名とアメリカ人1名の計3名の感染が新たに確認されたと発表しました。これで、マレーシア国内の新型コロナウイルスの感染者は計22名となります(参考―The Star:”Three more Covid-19 positive cases in Malaysia“)

27才の中国人男性は、2月1日に仕事でマレーシアに入国。2月12日にタイへ出国し、再び13日にケダ州のブキッ・カユヒタムのタイ―マレーシア国境から戻ってきた際に発熱が認められたため、ケダ州の指定病院で検査したところ新型コロナウイルスに感染していることが判明。現在はアロースターの指定病院で隔離中。さらに、マレーシア人と結婚している32才の中国人女性は、1月22日から30日まで中国に里帰りしていましたが、帰国後2月13日になって喉の痛みを訴え病院を受診したところ検査で陽性反応が出たとのこと。この女性は現在ランカウイの指定病院で隔離中です。

そして83才のアメリカ人女性は、各国で入港を拒否され日本でも報道されていたクルーズ船「ウエステルダム号」の乗客の一人。カンボジア入港後、マレーシア航空のチャーター機で2月14日にクアラルンプール国際空港 (KLIA) へ到着しましたが、サーモグラフィーで異常が見つかったため検査したところ感染が発覚。夫と共にセランゴール州の指定病院で隔離・経過観察におかれるとのことです。

クルーズ船の乗客に感染者が見つかったという第一報の後、カンボジア政府がマレーシア当局に「もう一度検査し直して欲しい」と要請したと報道されており、無症状の感染者も含めて隔離されるべき乗客を世界中にばらまいてしまった可能性が高いカンボジア政府の焦りが見てとれます。

マレーシア政府の対策

水際対策としては、国内主要空港でのサーモグラフィー検査(体温検査)を強化するとしています。以前に新型インフルエンザなどの世界的流行が警戒された際、主要空港に検査機器自体は導入されており、入国審査ゲートに向かう途中の通路で乗客をチェックできるようになっています。しかし、それをモニターすべき肝心の係員が大抵は気持ちよく昼寝をしているか、または誰もいないかで、真面目にチェックしている姿をほとんど見たことがありません。さすがに今は状況が状況だけにもう少しまともに仕事をしてくれるとは思いますが、普段慣れない事をするとやはり人的ミス (見逃し) が起こる可能性は大きいと言わざるを得ません。

(2020年2月17日:追記)報道によると、空路でマレーシアに到着したクルーズ船「ウエステルダム」の乗客の中から感染者を発見したのは、KLIAでの体温検査だったとのこと。発熱があったからこそ見つけられたわけですが、それを見逃すことなくキャッチした担当者はほめられるべきですね。

また、最大14日程度とみられる新型コロナウイルスの潜伏期間や、すでに幾つか確認されているように無症状の感染者からでもうつることを考えると、サーモグラフィー検査による感染者のスクリーニングには限界があります。グループで旅行しているメンバーの誰かが感染していたことが分かった場合、発症していようがいまいが他の同行者も隔離しないことには、潜伏期間の感染者が無自覚のままウイルスを拡散させる危険性が非常に高いと思います。

1月27日にマレーシア政府は、武漢ならびに湖北省地域からの中国人渡航者へのビザ発給を停止すると発表しました。約2週間後の2月9日には、湖北省に加えて新たに浙江省と江蘇省地域からの中国人渡航者へのビザ発給も停止。同時に、過去14日以内に制限対象地域となっている湖北省・浙江省・江蘇省への渡航歴がある場合、国籍に関わらず入国禁止という措置が即日実施されました。

しかし、いまや感染は中国からの渡航者のみならず隣国のシンガポールからも広がっています。マレーシア人初の感染者となった男性は、1月20日から22日にかけてホテル「グランドハイアット・シンガポール (Grand Hyatt Singapore)」で開かれたビジネス会議に出席。参加者は109名で、そのうち94名が中国を含む海外からの出席だったようです。同会議の参加者の中から、マレーシア人男性に加えて韓国人男性2名イギリス人男性1名も感染したことが明らかになっています。とりわけこのイギリス人男性の場合、帰国途中にバカンスで寄ったフランスも含め結局11人が感染する原因となったことが判明し衝撃を与えましたが、他にも人数の差こそあれ同じようなケースが起こっている可能性は高いと見てよいでしょう。(参考―AFP:「英男性1人から11人に感染、グローバルな世界で拡散する新型ウイルス」)

100名程度の参加者が数日間にわたって同じ空間で過ごす会議やセミナーに感染者が出席していた場合、食事やディスカッションなどを通してかなりの人数が感染者といわゆる「濃厚接触」をすることになります。さらに、無自覚で感染してしまった海外からの参加者が世界各国に戻ることで、家族はもちろんのこと移動中の飛行機の機内、空港、公共交通機関、さらには会社や取引先など、接触する様々な人に感染を広げる危険性が高くなります。

(2020年2月17日:追記) 各国で入港を拒否され続けたあげく、最後にカンボジアへたどり着いたクルーズ船「ウエステルダム」。カンボジア政府は「感染者はいない」として経過観察することなく乗客を下船→空路で帰国というプロセスを踏みましたが、経由地のマレーシア・クアラルンプール国際空港の検疫で感染者がいたことが判明。マレーシア航空は乗客を輸送するために予定していたチャーター便をすべてキャンセルし、マレーシア当局も今後ウエステルダム」の乗客はすべて感染者と濃厚接触があったとみなし入国を拒否すると発表するなど、かなりグダグダな状況になっています。

乗客と接触があった人たち (普通に乗客と握手していた首相含む) からカンボジア国内での感染が広がる可能性も高く、こうした状況における人道的な措置とは何なのかを考えさせられます。

今までのところ、マレーシア国内の感染者は半島マレーシア側となっています。しかし、航空会社の利用客数をベースにした統計では、昨年中国武漢からの旅行者が多かった都市として、クアラルンプールより上位に来ていたのが東マレーシアコタキナバル (KK) です。コタキナバルが渡航先としてそれほど中国人観光客に人気があった (2019年1月~2月期:計4,531人) のであれば、恐らく一定数の中国人旅行者が今年の春節前にもやって来ていると考えられます。

新型コロナウイルスに関して今のところ何のニュースもない東マレーシアですが、医療機関としてまだ把握できていないだけで実際はすでに感染者がいるのかどうか、今後も注意が必要でしょう。(参考―The Lancet (英語): “Nowcasting and forecasting the potential domestic and international spread of the 2019-nCoV outbreak originating in Wuhan, China: a modelling study“)

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マレーシアにみる不安要素

先に述べたように、マレーシアでは華人社会が人口の25%ほどを占めています。そのため、中国新年 (春節) 関連の行事も非常に多く、この時期は中華系のマレーシア人の多くが家族・親戚一同で集まって食事をしながら新年を祝います。もし感染者が一人でも含まれていた場合、こうした祝いの席で大人数が長時間接触することで一気に感染が拡大する危険性があります。実際、マレーシア人初の感染者となった男性から春節関連の接触により他の家族や親族に感染していたことが確認されています。その他、まだ明らかになっていない同様のケースが出てくることも考えられるでしょう。

さらに、一般的に言ってマレーシア人は衛生に関してさほど敏感ではありません。保健衛生の観点からは基本的とも言えるトイレの後の手洗いや、外出後のうがいなどが習慣になっていない人は大勢います。また体調が悪ければマスクをする、咳やくしゃみをする際には口を覆うといった常識的なことも、当地ではさほど気にしていない人が少なくありません。

他民族・他宗教国家であるマレーシアは、よい意味では大らかな国民性です。よくも悪くも高度な管理社会であるシンガポールや、国民性としてキレイ好きなところがあるタイ (なぜかマスク着用も比較的浸透している) といった隣国と比べると、マレーシアは現場での確実なルール運用、そして一般市民の衛生面での高い意識と協力が不可欠となる緊急時の感染対策を徹底するには不向きな国であるというのは否定できないところです。

Kuala Lumpur city

クアラルンプール中心部の街並み

地元の反応は?

地元紙でも連日大きく取り上げられている新型コロナウイルス。1月はまだ緊急感がない人が大多数でしたが、2月に入ってからは中国人旅行者ではなくマレーシア人の感染例が出てきたこともあり、地元の警戒感も一気に高まってきました。日本ほどではないものの、KL市内でもマスクをする人の姿が一気に多くなったという印象を受けます。マスクアルコール消毒スプレーは、都市部ではここ数週間ほとんど売り切れの状態です。たまに在庫があるマスクもよく分からないブランドのものが多いですが (中国製)、それさえも飛ぶように売れています。

お隣のシンガポールが警戒レベルをオレンジに引き上げた際、トイレットペーパーなど日用品が売り切れたという報道がありましたが、それ以来KL市内でもトイレットペーパーなどを大量に買いだめする人が増えています。パニック買いは不要ですが、各家庭でいざという時に一週間から二週間ほどは外出を控えても食べ物と水をまかなえるぐらいの準備は必要かもしれません。

マレーシアには日本から観光や修学旅行などで来られる方も多いと思いますが、現地在住者としてはクアラルンプール市内だとKLCC、中華街、ブキッビンタン周辺は、混み具合や中国人旅行者からの人気度なども考えると感染リスクが高めではないかと感じます。でもここに挙げたところに行かなかったら、KLでどこに観光行くんだという話なんですけどね。

現時点では、新型コロナウイルスに対するマレーシアにおける地元での反応は、警戒度が上がってきたもののまだのんびりとした様子です。現地在住の欧米人の間では、「コロナウイルスに勝つには『コロナビール』だ!」と、冗談ではなく本当に“コロナビール パーティー”をやっている人たちもいたりします。(※ 日本人だと「こんな時に不謹慎な」と眉をひそめる人もいると思いますが、日本以外の場所では、災害時などに“自粛する”という思考は基本的にありません。)

ただし、カナダでまさにこの「コロナビール」パーティーを派手にやりすぎた大学生が謝罪するはめになったという報道が。記事を読む限りでは、会場に”バイオハザード”の飾りつけをしたりマスクを着けて参加するなど、常識的な範囲を超えてふざけすぎたようですね。自宅でこっそりやる分にはともかく、やはり今のご時世こういう事をSNSにアップして世界に発信するのはアウトでしょう。ただ今回問題になった理由は、記事の論調や過去に同大学の生徒がやらかした問題も踏まえて考えると、災害時の自粛云々というよりは「ホワイトウォッシュ」などの議論に近い空気も感じます。(参考―ハフポスト日本版:「手術用マスクをつけて、コロナビールを…。 “コロナウイルス・パーティー“に参加した大学生が謝罪」)

マレーシアではまだ店頭から日用品が消えるなどの問題は起こっていませんが、状況によっては様々な品物のパニック買いが起きることも予想されます。現状を見ると、たとえ中国には旅行していなかったとしても、KLIA (クアラルンプール国際空港) やシンガポールのチャンギ国際空港、またタイのバンコク・スワンナプーム国際空港/ドンムアン国際空港など、現在感染者の入国が確認されている国の玄関口となる空港を利用していた場合、不特定多数の人と接触することになるため感染のリスクは否定できません。

在住邦人の皆さんは、正確な情報を入手しつつ国内での感染拡大に備えて食料・水の備蓄や医療品を確保するなど、まだ周囲が普段と変わらない今のうちにできる備えをしておきましょう

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インターナショナルスクールの対応

Classroom with tables and chairs

by Marie on flickr

首都圏のクアラルンプール周辺地域、ならびにペナンやJB (ジョホールバル) などの大きな都市にはインターナショナルスクールが何校もありますが、学校によっては在校生徒の多くが中国本土出身というところもあります。そうした学校では、当然中国人生徒と保護者の多くが春節の時期は本国に一時帰国していました。

マレーシアのインター各校では、感染者と接触した可能性のある教員・生徒の扱いをどうするか苦慮したようですが、多くの学校では中国へ渡航した、または中国からの渡航者と濃厚接触があった場合に2週間の登校自粛という措置を取ったようです。政府による指示ではないため強制力はありませんが、学校側で目安となる期間を出すことには意味があったと言えるでしょう。

さらに学校によっては、リスクのある学校見学者の受付を停止学校関係者と来訪者すべてに体温検査を実施するなど、学校レベルでのいわゆる“水際対策”を取っているところもあります。中にはさらには生徒のパスポートをチェックしているところ (中国に渡航していたことを隠さないように?) さえあったとのこと。また、今後さらに状況が悪化した場合を想定して、インター校の多くではオンラインでの学習 (バーチャルラーニング) プログラムも含めたバックアッププランを急ピッチで策定しているとみられます。

地元メディアによると、2月9日にマレーシア教育省のテオ・ニーチン (Teo Nie Ching) 副大臣が報道陣に対し、「最近中国へ渡航した学生と教職員には14日間の自宅待機 (隔離) が求められている」と述べたとのこと。また「学校に戻る前に、感染が疑われる症状の有無にかかわらず医療機関での健康診断を受ける必要がある」と指摘した上で、現在中国籍の生徒の新規受け入れを停止中であるとも明らかにしたようです。(参考―The Star:”Teo: Teachers, students must undergo 14-day self-quarantine if they visited China recently“)

Teacher at classroom

by Steve Riot on Pixabay

さて、中国にもかなりの数のインターナショナルスクールがあり、そうした学校で働く外国人の中には当然アメリカ国籍の教師・職員も多く含まれています。関係者の話によると、春節の時期は周辺国で休暇のような一時待機をしていたものの、今後の見通しが全く立たなくなった現在では多くが本国へ帰国したようです。特に上海や北京のインターナショナルスクールは、無期限休校となっているところもあるとのこと。

いずれ今回の新型肺炎の感染が終息したとしても、今後あえて中国のインター校で教えようと思う外国人は激減するはずです。リスク回避のため現地工場や駐在事務所を国外移転する動きが加速すれば、インター校に通う駐在員家族の数も少なくなるでしょう。必要な人材・生徒の確保が非常に難しくなることは必至で、中国国内のインター校にとってはまさに死活問題となるのではないかと思います。

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シンガポール政府の対応

シンガポール政府は1月27日、中国から帰国した学校関係者や生徒に対して帰国日から2週間の登校停止を発令。また同月31日には、中国人旅行者ならびに過去14日間に中国を訪問した外国人旅行者入国禁止とすると発表しました。シンガポールは東南アジア最大のハブ空港としても有名ですが、今回の入国禁止措置はシンガポール国内の空港で乗り換え (トランジット) の場合も適用されるということで、経由地としてシンガポールを訪れる旅行者にも少なくない影響を与える措置となりました。

また2月7日には、国内における感染症の警戒レベルを上げ「オレンジ」としました。これは、重要でない大規模なイベント等は中止または延期するよう勧告するものです。シンガポールでは毎月様々なビジネス会議や国際商談イベントが開催されていますが、今回の警戒レベル引き上げにより今後広範囲に影響が出てくるものと思われます。(参考― ロイター:「シンガポールが新型ウイルスの警戒レベル引き上げ、新たに3人感染」) すでに今月予定されているシンガポール・エアショー (Singapore Air Show) においても、大手を含め70社以上が参加を見合わせるとのこと。中国についで感染が広がりつつあるシンガポールに世界中から10万人規模が集まる同イベントには、さらなる感染の拡大を引き起こすのではないかと危惧する声も聞かれます。

警戒感が高まる中、2月12日には “世界最高のデジタルバンク” と称されるシンガポールの大手銀行DBSで社員1名の感染が確認されました。シンガポールの金融の中心であるマリーナベイ金融センター (MBFC) にある同社オフィスから、43階で働く社員300名が退去し在宅勤務に切り替える騒ぎとなり、この件はマレーシアでも大きく報道されました。こうした状況を踏まえ、シンガポールの企業ではマレーシアも含め原則として社員の国外出張・旅行の自粛を強く求めるところも出てきているようです。

色々な対策を実施してきたシンガポールですが、2月17日時点ですでに確認された感染者は75名となっており、潜伏期間中の感染者はさらに多いはずです。水際対策で防げるレベルはもう通り越しており、今後は三次感染を増やさないことにリソースを振り分ける段階に来ているとみてよいでしょう。都市国家のため人口密度が高く、MRTなど公共交通機関が発達していて人混みが多いというシンガポールの環境では、一旦どこかで集団感染が始まるとコントロールが非常に難しくなります。

また、JB (ジョホールバル) とシンガポールを結ぶコーズウェイだけでも1日あたり30万人以上が渡ると言われており、これに空路での往来も含めると毎日相当な人数がマレーシアとシンガポールを行き来しているため、どちらか一方だけが無事で済むということはまずありません。実効性のある規制なども含め2国間でより連携した対応が求められそうです。今後当局がどのタイミングでどの程度の移動制限などを発令するのか、特にシンガポールとマレーシア在住の方々は注意が必要でしょう。

Singapore Merlion

by Graham Hobster on Pixabay

シンガポールでは保健省が新型肺炎の特設ページ(英語)を作り、国内の感染者数、現時点で感染の疑いがある人数、また検査で陰性だった人数を随時更新するとともに、新型コロナウイルスに関係するこれまでの経過と対応を時系列で掲載、またネット上やSNSなどで広がっているデマについては個別に真偽を説明し否定するなど、政府として市民に対して正確で詳細かつ必要な情報を迅速に伝える上で効果的な対応を取っています。

余計なリンクがないテキストベースのレイアウトで、1ページに全ての情報が含まれていることなど、日本の厚生労働省のウェブサイトとはアクセスのしやすさがまるで違います。厚労省のサイトは、発出日やごとに資料がバラバラで情報が一つにまとまっておらず、必要な情報を入手するためには幾つもリンクをたどらされるのが致命的。他国の効果的な事例を積極的に取り入れて、緊急時には普段のレイアウトを大幅に変えてでも分かりやすく使いやすい情報提供を行って欲しいものです。

さて、今回の新型肺炎に関して情報公開においてはポイントが高いシンガポールですが、肝心の水際対策が甘いと批判の声も上がっています。

シンガポールはビジネスハブとして脚光を浴びることが多いものの、実は結構な観光立国。当然中国人は観光産業にとっては上得意様であり、今回の感染拡大局面で感染エリアからの中国人を入国拒否としたタイミングも、早期に厳しい措置を取ったフィリピンと比べると1週間ほど遅れています。そのため、東南アジアの中では断トツに統制が利くはずのお国柄にもかかわらず、感染者の数は東南アジアで最も多くなっています。

先日、マレーシアに来ていたシンガポール人の友人の幾人かと話す機会がありましたが、意外に感じたのがシンガポール人は「マレーシアでは新型コロナウイルスに感染しそうで怖い」と思っているということ。2月17日現在で公表されているシンガポールの感染者数はマレーシアの3倍以上で、マレーシア人は「これだけ感染者が増えているシンガポールはヤバい」と思っているわけですが、当のシンガポール人は「シンガポール政府は透明性が高いから正直に数を出してるけど、他の国は本当の感染者数を公表してないから、結果的にシンガポールの状況がひどく見えてるんだ。正直言ってマレーシアの方が絶対危ないと思う」とのコメントでした。

こう聞くと、自分の (住んでいる) 国が他国からどう見られているかというのは外の人に聞いてみないと分からないものですね。今回の新型肺炎に関しては、日本もそのうち自分たちが考えている以上に世界からネガティブな評判が立ちそうです。

新型コロナウイルス (COVID-19):各国の主な動向

中国の動き

Wuhan city

by San sereyroth on Pixabay

1月23日、中国当局は今回の流行の発生源である武漢市と外部をつなぐ交通機関を遮断しましたが、人口1100万人武漢は、総人口900万超の東京23区より約200万人近く多い巨大都市であり、それを封鎖してしまうというのはすごいことです。さらに翌日には武漢だけではなく周辺都市にも封鎖を拡大したということは、その時点で相当の危険性を認識できるだけの情報を中国政府として持っていたと考えられます。また1月27日以降自国民の海外渡航ツアーを原則禁止する措置を発表。さらに春節の休みも延長して企業活動の再開を遅らせるなど、矢継ぎ早に移動制限をかけました。もし新型コロナウイルスがそれほど危険ではないのなら、あの中国が経済に大打撃となる封鎖措置なんて取るわけがありません。

2月16日には、中国政府は湖北省全域外出禁止令を出すとともに車両の通行も禁止。一部報道では“感染がもうすぐピークを迎える”などと言われていますが、すでにボロボロになっている武漢と湖北省に対してまだこれほど強力な措置を取る必要があるということは、さらに深刻な事態が進行しているのではないかと思われます。

アメリカの動き

US White House

by David Mark on Pixabay

また、自国民を武漢から退避させようとまず大きな動きを見せたのが、1月25日のWSJで報じられたようにアメリカ政府でした。あらゆる情報を収集・分析しているアメリカがまず動いたということは、当時からさらに武漢が深刻な状況に陥る可能性が高いとみていたためでしょう。

1月30日になると、腰の重かったWHOもついに国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を宣言しました。ただ、ここまでの状況になっていてもWHOのテドロス事務局長は「中国への渡航や貿易を制限する理由はない」とのコメント。

そんな甘い見通しに真っ向から対立するかのように、同日夜になるとアメリカ政府は中国の渡航情報を最大の警戒レベル4に引き上げ、中国全土への渡航禁止勧告を発令しました。これは大使館職員ですら国外退避が許可されるレベルですし、対象を一気に中国全土に引き上げたことからもアメリカがいかに事態を深刻にとらえているかが理解できます。(後に、各国政府もアメリカに続いて同様の渡航禁止勧告を出し始めました) さらに翌31日には、2月2日以降過去14日以内に中国を訪問した外国人はアメリカへの入国を原則禁止湖北省を訪問した米国民の場合は最長14日間の強制隔離措置をとると発表しました。

こうした一連の動きは、一応WHOの緊急事態宣言を受けての対応と言われてはいますが、アメリカがここまでやるというのは絶対それ以外に何か相当ヤバいレベルの情報をつかんでいるのではないかと思わざるを得ません。ウイルスの変異などで感染力や毒性が上がる兆候でもあったのか、現時点で詳細は分かりませんが、報道されている内容以上の事態が中国国内で起こっていると見て間違いはないでしょう。

日本の動き

Cruise ship at Yokohama

by takewata69 on Pixabay

政府独自の対策基準を取るのではなく、全面的に“WHO準拠”のスタンスをとっている日本政府。他国が次々と中国への渡航禁止や入国拒否を打ち出している中で、独特の立ち位置となっています。

2月4日には、「WHOの知見では、潜伏期間が今まで言われていた最大14日よりも短い最大10日程度と言っているので、それに合わせて帰国者の隔離期間の短縮を検討する」との報道がありました。(参考―NHK:「新型肺炎 帰国者の施設滞在 短縮検討へ 潜伏期間短いとの知見

“潜伏期間10日”ということを受けて~」とあるので、てっきり最新の発表でもあったのかと思い調べてみましたが、そんな情報は英語の報道では全く出ていません。WHOのウェブサイトを見たところ、「潜伏期間が推測で約2~10日と見られる」という表現が含まれる最新の発表は1月27日付の報告書でした。状況が毎日大きく変化している中で、なぜ一週間も前の数字を持ち出してきたのかよく分かりません。(参考―WHO (英語): “Novel Coronavirus (2019-nCoV) Situation Report 7“)

感染病に関してはWHOと並んで世界的な権威のあるCDC (米国疾病予防対策センター) を始め、各国の関係機関は依然として潜伏期間を最大14日としています。これについては、当事者である中国の研究者でさえ医学誌「New England Journal of Medicine (NEJM)」で発表した1月29日付の研究報告の中で、Our preliminary estimate of the incubation period distribution provides important evidence to support a 14-day medical observation period or quarantine for exposed persons.推定される潜伏期間の分布は、ウイルスに晒された対象の14日間の経過観察または隔離が適当であると裏付ける重要な根拠となる。[筆者訳]」と述べています。 (参考 ―”Early Transmission Dynamics in Wuhan, China, of Novel Coronavirus–Infected Pneumonia”)

そんな中、2月6日に日本政府はチャーター機で武漢から帰国した日本人については隔離期間を10日に短縮すると決定しました。しかし「10日」と決めた矢先に、今度は隔離されていた武漢からの帰国者のうち11人が「やむを得ない事情」で帰宅したと発表。(一番長く滞在していた人でも7日しかいなかったということ) 一方で、横浜港に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の検疫については、今まで通り14日間を維持すると表明。

ところが、これまた「WHOの最新の知見による」との理由で再度隔離期間が変更され、今度は12.5日にすると発表。不思議なことに、“隔離期間は12.5日が適当”という重要なはずの情報は、WHO公式サイトや英語メディアなどをいくら調べても見当たりません。唯一「12.5日」という数字を見つけられたのは、上に引用した「NEJM」2020年1月29日付の報告書にある “The mean incubation period was 5.2 days (95% confidence interval [CI], 4.1 to 7.0), with the 95th percentile of the distribution at 12.5 days.” という部分 [下線は筆者]

若干難しい話になりますが、これを見ると12.5日というのは潜伏期間の上限ではなく分布範囲の95パーセンタイルであり、執筆した研究者も同報告書の中で「経過観察は14日が適当」と結論付けています。(参考までに、岐阜大学大学院医学系研究科のFacebookに報告書の該当部分の日本語抜粋がありましたので貼っておきます)

 

このように、日本では潜伏期間をなるべく短く見積もろうとしているように思える動きがありますが、新型コロナウイルス対策の中国政府専門家チームのリーダーを務める鐘南山医師のグループがオンライン上の医学系アーカイブ「medRxiv」に発表した論文では、潜伏期間が最大24日であると分析。プレプリントなので査読前の論文ですが、SARSの際にも最前線で対策に当たり、武漢で「ヒトからヒトの感染が起こっている」と最初に断言した呼吸器疾患の権威である鐘医師が発表した内容とあり、今後の対策にどのような影響を与えるのか大きな注目を集めています。(参考―medRxiv (英語):”Clinical characteristics of 2019 novel coronavirus infection in China”)

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マレーシアの感染状況 (経緯)

最新の情報については、記事トップに掲載しています。

 (感染状況:2020年2月13日) マレーシア当局は2月13日、中国・武漢から観光で訪れていた39才の中国人女性の感染が新たに確認されたと発表しました。この女性は1月25日にマレーシアへ入国しており、すでに同行者の友人と母親の計2名は約1週間前に感染が明らかになっていたため、経過観察中だったとのこと。2月12日になって咳や発熱の症状が出たため検査したところ感染が確認され、現在クアラルンプール市内の指定病院で隔離中です。これで、マレーシア国内の新型コロナウイルスの感染者は計19名となります。

 (感染状況:2020年2月12日) マレーシア当局は2月9日、65才のマレーシア人女性の感染が新たに確認されたと発表しました。この女性は、シンガポールでのビジネス会議に出席しマレーシア人初の感染者となった男性の義理の母で、1月26日から28日にかけて春節のため家族・親戚で集まった際に接触があったと見られています。2月5日になって体調不良を訴えて病院を受診しましたが、発熱はなかったため自宅に戻って療養。しかし、義理の息子の感染が確認されたことで当局が追跡し、この女性も感染が確認されたため現在セランゴール州の指定病院で隔離されているとのこと。

さらに保健省は2月10日、新たに31才のマレーシア人男性も感染を確認したと発表。マカオで働いているこの男性はセランゴール州バンティン (Banting) の実家に帰省していましたが、2月3日に咳などの症状が出た後、数日間は病院で処方された薬を飲んでいたとのこと。しかし、症状が悪化したため2月7日に入院。その後セランゴール州の感染症指定病院に移され、そこで新型肺炎への感染が確認されました。この2名を加えると、マレーシア国内の新型コロナウイルスの感染者は計18名となりました。

 (感染状況:2020年2月9日) マレーシア保健省は2月8日、武漢から渡航していた67才の中国人女性の感染を新たに確認したと発表。現在はクアラルンプール市内の病院で隔離されています。これでマレーシア国内の新型コロナウイルスの感染者は計16名となりました。

 (感染状況:2020年2月8日) マレーシア保健省は2月7日、国内初となる二次感染 (ヒトからヒトへの感染) を確認したと発表しました。中国への渡航歴がないこの40才の女性は、シンガポールでのビジネス会議に出席しマレーシア人初の感染者となった男性の妹で、ホームタウンのケダ州スンガイ・ペタニで春節の時期にお祝いで集まった際に接触があったと見られています。兄の感染が確認されたことで当局が追跡調査をした結果、2月1日からのどの痛みなどの症状が出ていたというこの女性の感染も発覚。現在ケダ州の指定病院で隔離されているとのこと。

さらに、中国・武漢から1月25日にマレーシアに入国した中国人女性も新たに新型コロナウイルスへの感染が確認されました。家族や友人と旅行していたこの女性は2月1日からのどの痛みを感じていたようですが、経過観察の後に検査で陽性となり現在はクアラルンプール市内の指定病院で隔離されているとのこと。加えて、やはり武漢から来た別の59才の女性も感染を確認。この女性は家族と休暇旅行中で、シンガポールを経て1月21日にジョホールバル (JB) からマレーシアに入国。体調不良を訴えたため検査したところ2月6日に陽性が確認され、ジョホール州の指定病院で隔離中です。これにより、マレーシア国内の新型コロナウイルスの感染者は計15名となっています。

 (感染状況:2020年2月7日) 2月6日にマレーシア保健省は、中国・武漢から特別機で2月4日にマレーシアに帰国した計107名のうち2名の感染が新たに確認されたと発表。これにより、マレーシア国内で確認された新型コロナウイルスの感染者は計12名となりました。

公表された情報によると、患者はマレーシア人の父親と息子でそれぞれ45才と9才。どちらも無症状だったのものの検査で陽性反応が出たため、現在はネグリ・センビラン州の指定病院で隔離されているとのことです。

また、現地のアメリカ大使館は2月5日、クアラルンプール中心部のKLCC (Kuala Lumpur City Centre) にて感染が疑われるケースが発生したと発表。ショッピングモールに加えてペトロナス・ツインタワーや国際会議場を持つKLCC周辺は、外国人観光客や旅行者だけでなくビジネス関係者も非常に多く行き交うエリアです。東京で言うなら丸の内や大手町のような感覚で、もしここで感染が広まると影響は非常に大きくなるため何とか防いで欲しいものです。(参考―在マレーシア アメリカ大使館 (英語):”Health Alert – Coronavirus Update #3“)

 (感染状況:2020年2月4日) 保健省は2月4日、初のマレーシア人の感染者を含む2名の感染が新たに確認されたと発表。これにより、マレーシア国内で確認された新型コロナウイルスの感染者は計10名となりました。

報道によると、マレーシア人の患者はセランゴール州の41才の男性。シンガポールで中国からの代表者も出席する国際会議に一週間参加した後、1月23日にマレーシアに帰国していたとのことですが、6日後に咳と熱のため病院を受診。セランゴール州にある感染症指定病院への転院を経て、本日新型コロナウイルスへの感染が確認されました。

もう一名は、中国人の61才の男性。1月18日にマレーシアに入国し、23日に発熱。14日間の経過観察に置かれていましたが、その後クアラルンプール市内の感染症指定病院へ転院。2月3日に新型コロナウイルスの陽性反応を示したということです。

 (感染状況:2020年2月3日) 保健省は30日、マレーシア国内で新たに1名の感染が確認されたと発表。これにより、マレーシア国内で確認された新型コロナウイルスの感染者は計8名となりました。地元紙の報道によると、患者は49才の女性でJBの病院で隔離中とのこと。

 (感染状況:2020年1月29日) 保健省は29日、マレーシア国内で新たに3名の感染が確認されたと発表。これにより、マレーシア国内で確認された新型コロナウイルスの感染者は計7名となりました。

3名とも中国籍で、それぞれ4才の女児、52才の男性、そしてもう一人は年齢不明の女性です。この女性は、マレーシア初の感染例としてセランゴール州の病院で治療を受けている11才と2才の子供の母親で、自身は当初陰性だったため看病で付き添っていたようですが、再検査で陽性反応が出たとのこと。報道によると、感染者である子供への接触により二次感染した可能性もあるのではないかと見られています(参考―The Star (英語):”Coronavirus: Three new cases confirmed, bringing total to seven cases in M’sia“)

 (感染状況:2020年1月26日) 保健省は25日、マレーシアで4人目の感染者が確認されたと発表しました。この患者は40才の中国人男性で、武漢からシンガポールに到着し陸路で1月22日にジョホールバルから入国。当局は同じツアーグループに入っていた17名の旅行者にも検査を行いましたが、現在のところ感染は確認されていないとのこと。

今回のケースは、シンガポールからの情報提供で潜伏期間中に早期隔離された最初の3名とは異なり、新型肺炎を発症して病院を受診したことで感染が発覚しています。自覚症状が出た翌日には診察を受けたようですが、ウイルス感染の拡大という意味では接触者がどの程度いたのか非常に気になるところです。

 (感染状況:2020年1月25日) 本日午前、マレーシア国内で初の感染者が3名確認されました。保健省が行った記者会見によると、今回の感染者は、武漢から1月20日にシンガポールへ入国し感染が確認された中国人2名の同行家族だということです。

シンガポール当局からの情報により、当局が1月23日にマレーシアのJB (ジョホールバル) へ入国していたこの家族を隔離して検査したところ、うち3名が発症はしていないものの陽性反応を示したとのこと。患者は祖母と孫2人で、それぞれ65才、11才、2才と発表されています。

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(2020年2月1日:記事加筆修正)
(2020年2月2日:写真追加、誤字修正)
(2020年2月17日:タイトル修正、レイアウト変更、記事加筆修正、テキスト修正・追加)


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