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【マレーシア】2019年1月より全国の飲食店で禁煙法令が施行

投稿日:2019年3月7日 更新日:


日本は喫煙ブースなど分煙が進んだ国ではありますが、世界的に見ると受動喫煙は確実に健康被害を与えるものと認識されており、屋内の公共の場所では分煙ではなく完全禁煙をという流れは非常に強くなっています。そんな中、2020年東京オリンピックの開催を前に日本でもより厳格な対策を取る方向に動きはじめました。昨年 (平成30年) には、行政機関をはじめ学校や病院など大勢の人が訪れる施設管理者の責任を明確にし、事務所や飲食店等 (経営規模が小さい事業者を除く) での受動喫煙対策が盛り込まれた「改正健康増進法」が成立し、2020年4月1日より全面施行となります。

さて、マレーシアでも2019年1月より全国規模で飲食店を完全禁煙とする法令が施行されましたので、現状をお伝えしたいと思います。

最初の半年は猶予期間 (ただし場合により罰則も)

法律で新たに定められた規定に従い、今ではどの飲食店に行っても40cmx50cmサイズの禁煙サインが目立つ場所に貼ってあることに現地在住の方はお気づきでしょう。今年の1月以降、マレーシア保健省は全国で5,000人以上の環境衛生係官を巡回させて施行状況をチェックしています。慣例により最初の6ヶ月間は猶予期間とし、基本的には罰則を科すことはなく違反者への警告と法令の周知を徹底するそうですが、リー・ブーンチャイ (Lee Boon Chye) 保健省副大臣によると、警告を無視するなど悪質な違反者については猶予期間中であっても罰則を適用する場合があるとのこと。また、今後は巡回する係官の数をさらに増員してより徹底した取り締まりと周知を行っていく予定だとも話しています。

違反者への罰金額は?

日本の改正健康増進法では、指導や勧告に従わない場合に喫煙者は30万円以下、施設管理者は50万円以下の罰金となっています。マレーシアの場合、一旦猶予期間が過ぎれば、指導うんぬんではなく違反した現場を押さえられた時点でアウトとなります。罰金の額ですが、違反した個人は最高10,000リンギまたは2年の服役、そして客に喫煙させた店は最高2,500リンギ ―日本円ではそれぞれ約28万円と7万円 (記事作成時点のレート)― となっており、日本と比べて大体3分の1程度と言われる地元の物価からすると相当厳しい罰則です。

興味深いことに、日本では事業者側がより重い罰則となっているのに対し、マレーシアでは喫煙者個人に高額の罰金が科せられる仕組みになっています。これには、マレーシアの国民性も関係しているのではないかと思います。

マレーシアをはじめ東南アジアの国々では、決められたルールであっても自分個人が損をしない限り、もっとストレートに言うと罰金等のペナルティがない限り従わなくてもよいという考え方を持つ人が少なからずいます。また駐車違反のように、たとえ罰金があったとしても金額が大したことない場合には「運悪く捕まったら払えばいい」という程度の認識で、検挙されるリスクよりも自分の都合の方が優先される傾向があります。

このような考えが浸透している国において、法令違反に関して施設・事業者側の責任が違反した個人の責任よりも大きいとしたらどうなるでしょうか?違反者にとっては、店が高額の罰金を科せられるといっても自分さえ捕まらなければOKであり、後から店が問題になろうがどうしようが関係ありません。一方、店側も自らがオーナーとして経営しているのならともかく、単なる社員やバイトであれば罰金は店が払うものであってやはり自分個人とは関係がないので、客とトラブルになるぐらいなら見て見ぬふりをする方を選ぶケースも多くなるでしょう。

違反者個人に高額の罰金や2年もの刑期を設定した今回の禁煙法は、抑止力を持たせるという側面においてこうした地元の事情に即したものと言えます。店の側が客に禁煙を徹底するのが難しいということは政府も理解しており、保健省内に専用ホットライン (03-8892 4530) を開設して禁煙ルールに従わない喫煙者を店が当局に通報できる仕組みが作られました。通報を受けると係官が現場に向かい違反者を取り締まると言っていますが、そもそも違反した人が係官の到着までゆっくりタバコを吸っているとは考えにくく、検挙するという目的においてどの程度効果があるのかはいささか疑問が残ります。

ただし、店にとってはこうした仕組みはやはり必要だと言えるでしょう。例えば、禁煙を無視してタバコを吸っている客の姿をYouTubeにでも流された場合、店が黙認したのか客が悪いのか取り締まる行政側も判断が難しいはずです。また、店が罰金を科されるよう嫌がらせで故意にこうした動画を作る人もいるかもしれません。恐らく、ホットラインの利用は実際に違反者を検挙することよりも「黙認したわけじゃなくて、ちゃんと通報しましたよ」という店側のアリバイ作りという意味合いが濃いのではないかと思います。

禁煙法に抜け穴がある?

今回マレーシアで施行された禁煙法令は、屋外やオープンエアの飲食店も含む広範囲の対象に適用されますが、実は店舗から10フィート (約3m) 離れていればタバコを吸ってもよいということになっています。このことが、場合によっては法の抜け穴となるのではないかと危惧されています。

例えば、店の外にテラス席がある場合、あえて3mほどスペースを空けて端の方を「喫煙用」に使わせることが考えられます。もちろん建前上は、店が灰皿など喫煙に使う設備等を提供すると法令違反になるわけですが、例えば灰皿ではなく“ジュースの空き缶”を置いたとするとどうでしょうか。当然のことながら喫煙者は空き缶を灰皿替わりに使うものの、店としては「ただのゴミだ」という言い訳ができます。またテーブルやイスを準備するのはアウトですが、ちょうど座るのによい高さの“花壇”や“オブジェ”などを店から3m離れたところに作った場合、それを喫煙場所だとして検挙するのは法的にも難しいものがあるでしょう。実際、すでにこうした形で工夫して客が使える「喫煙エリア」を作り出しているカフェやレストランもちらほら見かけます。

統計によると、2015年時点でマレーシア人の成人男性喫煙率は43%*に達しており、日本の昨年 (平成30年) の成人男性喫煙率 約28%#と比較してもかなり高いと言えます。そのため今回の法律により飲食店で全面禁煙となったことで、売上への影響がないか心配している経営者も少なくないようです。

猶予期間の間にさまざまな抜け穴が考え出されることは想像に難くありませんが、禁煙法が実効性のある仕方で健康問題の改善につながるよう確実な運用の必要性が叫ばれています。

[参考資料]
*“Malaysia”. THE TOBACCO ATLAS. URL: https://tobaccoatlas.org/country/malaysia/ (参照日:2019年3月7日)

#「成人喫煙率(JT全国喫煙者率調査)」.  厚生労働省の最新たばこ情報. URL: http://www.health-net.or.jp/tobacco/product/pd090000.html (参照日:2019年3月7日)

「受動喫煙対策」. 厚生労働省ホームページ. URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000189195.html (参照日:2019年3月7日)


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