コーヒーの品種ノートです。
リベリカ種 (Liberica)
由来: | 西アフリカ原産種 |
豆のサイズ: | 非常に大きい |
収穫量: | 良好 |
風味の質: | 良い |
初回収穫: | 5年目 |
さび病: | 耐性あり |
炭疽病: | 不明 |
線虫: | 耐性あり |
栽培適正標高: | 北緯5度~南緯5度:N/A 北緯/南緯5度~15度:N/A 北緯/南緯15度以上:N/A |
リベリカ種の歴史
リベリカ種はアラビカ種やカネフォラ種 (ロブスタ種) と並ぶコーヒーの三大原種ですが、流通量がとても少ないことから知名度は非常に低い品種です。現在では主に東南アジアのフィリピンとマレーシアで生産・消費されていますが、その起源は西アフリカのリベリアにあると言われています。
はっきりとしたことは分かっていませんが、まずリベリアからエチオピアへ持ち込まれ、そこからイスラム教徒の交流を通して中東経由で東南アジアへ渡ったという説と、17世紀頃から西アフリカを植民地としていたヨーロッパの宗主国が、同じく植民地としていた東南アジアの国々に持ち込んだという説があるようです。いずれにせよ、今でも熱帯アフリカ地域ではリベリカ種が自生しています。
当時もコーヒー栽培においてはアラビカ種が大部分を占めていましたが、19世紀後半にさび病でアラビカ種が世界的に壊滅的な打撃を受けた際、多くの場所でさび病に強いロブスタ種への切り替えが行われました。そんな中、東南アジアのフィリピンでは同じくさび病に強いリベリカ種への転換が進んだことから、結果としてリベリカ種の栽培が東南アジアを中心に広がることになり現在に至っています。特にフィリピンではバラコ (Barako) コーヒーと呼ばれて親しまれており、フィリピン全体のコーヒー生産量の約7割を占めています。
リベリカ種の特長は、上にも挙げたように病害虫への耐性です。三大品種の中でも特に大きな豆と分厚い果肉が特徴的なリベリカ種ですが、果実の皮がしっかりしているため害虫が侵入しにくくなっています。また、ある程度高い温度でも生育することから、アラビカ種に比べてより低緯度での栽培が可能で、熱帯気候にある東南アジア地域での生産にも適しています。さらに、しっかりと根を張り土壌の質にもそれほど敏感でない丈夫な品種であることも栽培する上では大きなメリットと言えるでしょう。
しかし、流通量が少なかったことからこれまでリベリカ種は市場でそれほど注目されることはなく、主に生産国の地元のコピティアムで、あるいはインスタントや安価なブレンドコーヒーの原料としてロブスタ種など他品種と混ざった状態で消費されてきました。しかし、リベリカ種単体の風味はロブスタ種よりもはるかに上であることが知られるようになり、近年改めて評価が高まってきています。
リベリカ種は果実が肉厚なこととに加え、豆が他の品種より多孔質でミューシレージ (粘液質) から糖分を吸収しやすいことから、特に果実のまま乾燥させる生産処理であるナチュラルでは、独特の甘みと芳香を備えた果実感の強い仕上がりになり「ジャックフルーツのよう」とも形容されます。ちなみにウォッシュトの場合は、柑橘系やフローラルの香りなどが感じられるアラビカ種に近い風味特性になるようです。
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リベリカ種を多く生産するマレーシアでは、2019年に史上初となるリベリカコーヒーの国際ロースティング競技会が東マレーシア・サラワク州のクチンで開催されました。リベリカ種が持つポテンシャルには、今大きな注目が集まっています。(参考:当ブログ記事「【マレーシア】イベント:2019 Borneo Coffee Symposium」)
関連記事:「コーヒーの生産処理―ナチュラル ⇒ 長所と短所は?」
[参考資料]
(2020年11月18日) ”What Is Coffea Liberica?”. Perfect Daily Grind, URL: https://perfectdailygrind.com/2020/11/what-is-coffea-liberica/?utm_source=Website+Subscribers&utm_campaign=e376999a77-Jan_3_2017_COPY_01&utm_medium=email&utm_term=0_e5c3eb4dc6-e376999a77-233324053 (参照日:2020年12月3日)