カオラウ (Cao Lau)
ホイアン風 汁なし麺
ベトナム/クアンナム省
ベトナム中部に位置する世界遺産の街ホイアン名物の一つとなっている麺料理。16世紀から17世紀初頭にかけ朱印船貿易で日本人町があったという歴史的背景もあり、よく日本のガイドブックには「カオラウのルーツは日本の伊勢うどんだ」などと書かれているが、実はそう断定できるほどカオラウの由来ははっきりしているわけではない。
確かに麺の太い見た目は伊勢うどんに似ているし濃い目の醤油だれに絡めて食べる点など共通点もあるのは事実だが、タレを絡ませて食べる汁なし麺自体は東南アジアにおいてよく見られる食べ方である。また米粉にアルカリ性であるホイアンの井戸水 (現在はかん水も使用) を使って作るカオラウの麺はしっかりとしたコシがあり、ふわふわもちもちした伊勢うどんの食感とは異なる。かん水を使用した麺の製法は元々古代の中国南方地域を発祥とすることから、カオラウの起源は中国ではないかという説もあるようだ。
国際貿易港として繁栄したため洋の東西の異文化が絶妙に融合しているホイアンという街の成り立ちを見ると、カオラウが生まれた背景に日本の商人たちの影響は少なからずあったであろうと思うし、またそこに中国の食文化が取り入れられたとしても何ら不思議ではない。麺の上にのせられているチャーシューは、やはり中華圏の影響だろう。
由来がどうであれ、世界各国の観光客で溢れる通りを見ながらカオラウを味わうと、初めて食べる料理なのにどこか懐かしい不思議な感覚を抱くだろう。そうさせるのがタレの味なのか、麺なのか、それともホイアンという街だからか、理由は分からない。だが、日本人がふと郷愁を覚える味がカオラウに息づいていると感じるのは私だけではないと思う。機会があれば是非試して頂きたい一品である。
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(2019年2月4日:テキスト修正)