ワンタンミー (Wanton Mee)
マレーシア風 中華麺
ペタリンジャヤ/セランゴール州
一応マレーシア料理のカテゴリ―に入れたものの、こうした中華系の一品というのは“広東”や“福建”、“客家”といった華僑が移住した地域に伝わっているメニューだ。そのため、このワンタンミー (雲吞麺/云吞面) も、マレーシアに限らずお隣のシンガポール、香港、また少しスタイルは違うものの雲南出身者が住むタイの一部地域などでも食されている。
インスタントヌードルの印象が強いのか、日本で「ワンタン麺」というと多くの人がスープ麺にワンタンが浮かんだものを想像するかもしれない。しかし、他の中華系麺料理の多くと同じく、ワンタンミーもスープと汁なし (ドライ) タイプのどちらにするかを選ぶことができる。ちなみに、地元で人気なのは圧倒的にワンタンミー・ドライだ (上写真)。
スープ/ドライを問わず、卵を練りこんだプリプリ食感の極細麺とワンタン、そしてチャーシュー (注:日本のラーメンに載っているような丸いものではなく、ステーキの断面のような形) という基本の組み合わせは同じである。あっさり味のクリアスープが入ったボウルに、麺とワンタン、スライスしたチャーシュー、そして野菜が少し添えられているのが地元の典型的なワンタンミー・スープのスタイルだ。一般的に日本人がイメージする「ワンタン麺」に近く、実際知る限りでも現地在住の日本人はこのスープタイプを注文する人が多い。
一方、地元でより人気のあるドライタイプは、お皿に盛られた濃い色のタレを絡めた麺にチャーシューと野菜がトッピングされたスタイルである。ワンタンはというと、別の小さなボウルに入ったスープとして提供される。ワンタン麺というよりも、“ワンタンスープ付き麺”と言った方がいいかもしれない。
ドライタイプの美味しさは、個人的には麺にタレが絡むバランスと食感だと思っている。まずいワンタンミーは、麺がボテッと固まっていたりタレが麺とうまくなじんでいなかったり、またはタレがしょっぱすぎたりする。一方、うまいワンタンミーというのは、麺のまわりにちょうどよい量のタレが絡まり、口の中で自然とほぐれていくと同時にタレと麺の風味が鼻腔に広がる。ワンタンミーで使われる極細麺と絶妙なとろみを持ったタレの組み合わせだからこそ楽しめる食感で、これはスープタイプでは味わえない。
また、添えられているさっぱりとしたスープとワンタンが、やや濃い味付けの麺を食べる合間にちょうどよい変化を与えてくれる。主役ではない添え物としてのスープに見えたとしても、やはりワンタンは欠かせないのだ。
大きなエビが載っているわけでもなく、特にSNS映えするような盛り付けでもないワンタンミー。ただ、何度食べても飽きることのないシンプルさ、またシンプルだからこそ際立つ名店の美味しさというのがある。専門店以外にも中華系フードコートであれば必ず見つけられると言ってよいほど、地元で深く愛されているワンタンミー。もちろんスープタイプも美味しいが、初めて食べるならまずはドライタイプをぜひ試して頂きたい。
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