ペーパードリップ、ネルドリップ、フレンチプレス、エスプレッソマシン、マキネッタなど、コーヒーには色々な淹れ方があり、それぞれに特長があります。日本では普通にカフェや喫茶店に行く方であれば、意識していなくてもマキネッタ以外はこれまでに飲んだ経験があると思います。
しかし、トルココーヒー (ターキッシュコーヒー) を飲んだことのある方はそれほど多くないかもしれません。当然ながらトルコ料理のレストランに行けば間違いなくメニューに載っているはずですし、他にも中東料理の店であれば「アラビックコーヒー」としてほぼ同じタイプのコーヒーを味わうことができます。
しかし、トルココーヒーは器具と専用のコーヒーさえ手に入れば自宅でも簡単に楽しめます。先日、KL市内にある中東シリア系のスイーツショップでトルココーヒーのセット一式を手に入れたので、購入した際にお店の人から教えてもらったポイントも参考にしつつ早速自宅で淹れてみました。
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トルココーヒーに必要なもの
イブリック (またはセズベ、ジェズベ)
これがないとやっぱりトルココーヒーの雰囲気が出ないですよね。なければ小鍋でもできますが、沸騰の瞬間をうまくコントロールするためにも絶対あった方がいいです。国によってセズベやジェズベなど違った呼び方がありますが基本的に同じものです。素材は銅、真鍮、ステンレス、アルミニウムなど色々なものがあるので、自分の気に入ったアイテムを買ってみましょう。
専用のコーヒー
トルココーヒーとして淹れるには、相当細かいパウダー状に豆を挽く必要があります。直前に挽いた方が美味しいのは確かですが、家庭用のグラインダーではそこまで細かく均一に挽けないものが多いこと、また特にカルダモンなどスパイスも混ぜる場合はグラインダーに香りが移ってしまうことから、お店でグラインドしてパックしてもらう方がいいでしょう。ちなみに、店ごとに独自のスパイスの配合があり、それぞれ違った味わいが楽しめるのも面白いところです。
粉の量はデミタスカップ1杯あたり小さじ山盛り1杯程度が標準のようですが、一回飲んでみた上で自分の好みに合わせて調整してください。
砂糖
なくてもいいですが、少し砂糖を入れた方が味わいに深みがでます。無糖、または甘さ控えめにした場合、当地ではバクラバ (バクラヴァ) と呼ばれる中東系のお菓子やデーツ (ナツメヤシ) などを食べながら飲むことが多いようです。フードペアリングとしては最高の組み合わせですよ。
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トルココーヒーを淹れてみよう
イブリックに水を入れる
イブリックの大きさにもよりますが、もっとも小型のものでデミタスカップ1杯分、次に2杯分、そして4杯分と量が増えていきます。(この記事では2杯分のイブリックで淹れています) あまりギリギリまで入れるのではなく、沸騰してもあふれないレベルにとどめておきましょう。
なお、この時点で少し砂糖を入れた方が香ばしさのある甘みとなります。コーヒー1杯分あたり小さじすりきり1杯ほど入れるのが平均的な味です。
イブリックを火にかける
まだコーヒーは入れずに水だけで加熱していきます。沸騰するのを待っている間にコーヒー豆を準備しておきましょう。
コーヒーを入れる
沸騰したら一旦火を止めます。(沸騰したままコーヒーを足すと吹きこぼれるので注意)
適量のコーヒーを足したら、スプーンで軽く混ぜます。
コーヒーを煮出す (沸騰x3)
何となくコトコト長時間煮込むような印象があるかもしれませんが、ここからは比較的あっという間です。実際に沸騰し始めると一瞬なので、タイミングが勝負。コーヒーを入れてからは目を離したり他の事をしたりせず、しっかり見張っておきましょう。ミトンや鍋つかみなどで取っ手を持ちながら加熱することをおすすめします。
火加減は基本的に弱火でOKですが、個人的にはあまりダラダラと加熱を長引かせると美味しくないと思います。火との距離によっても加熱具合が変わってきますので、適当な距離を見つけてみてください。
沸騰寸前になると表面がグワーッと盛り上がってくるので、泡がイブリックのフチまで来たらすぐ火から下ろします。(コーヒーの表面がフチから盛り上がるぐらいがベストですが、そこまで火にかけたままだと勢いあまってあふれるので気持ち早めに火から下ろす) お店の人にも「絶対吹きこぼさないでね。一瞬だから」と念を押されましたが、モタモタしていると本当にすぐ吹きこぼれます。
火から下ろして少し落ち着かせたらまた火にかけ、さらに2回沸騰させます。コーヒーを入れてから合計3回沸騰と覚えておきましょう。
カップに注ぐ
3回目の沸騰が終わったら30秒ほど落ち着かせてから、カップに注ぎます。あまり粉をカップに入れたくない場合は、注ぎ口に注意しながら静かに注ぎます。注ぎ口を通っていく透明のコーヒーの真ん中に黒い筋が見え始めたら、そこが止めるタイミングです。(そこから先はどんどん粉が増えていく) こうやっても少しはドロッとした粉がカップの底に残りますが、「上澄みだけを上手に飲まないと・・・」などと意識しなくても普通に飲んで大丈夫なレベルになるはずです。
もし2杯以上のカップに注ぐ場合は、最初にイブリックの上の泡をスプーンですくってそれぞれのカップに分けておきましょう。
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最古のコーヒーの淹れ方
一説にはコーヒーの起源は13世紀頃ともいわれ、人類はかれこれ数百年以上もコーヒーを楽しんできました。しかし、現在主流になっているドリップやエスプレッソなどの抽出技術は比較的近年になってから生まれたもので、それまではトルココーヒーに見られるような直接煮出して抽出する方法だったのです。
もちろん、スペシャルティコーヒーなどコーヒー豆の繊細な風味をクリアに味わうためには現代の抽出法がベストですが、煮出している時からあたりに独特の香りが漂うトルココーヒーにはまた違った魅力があり、どこか不思議な懐かしさすら感じさせてくれます。初めて飲むと強烈な風味に感じるかもしれませんが、先入観を捨てて味わえばその美味しさと何とも言えない後味にハマる人も少なくありません。
みなさんも機会があれば、ぜひ歴史に思いをはせながらトルココーヒーを味わってみてください。(味が苦手だと感じたら、砂糖を多めに入れると飲みやすくなりますよ)
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[参考資料]
(2015年9月28日) How to Make The Perfect Cup of Turkish Coffee. Perfect Daily Grind. URL: https://perfectdailygrind.com/2015/09/how-to-make-the-perfect-cup-of-turkish-coffee/ (参照日:2020年8月28日)
コーヒーの歴史. UCC. URL: https://www.ucc.co.jp/enjoy/encyclopedia/history/index.html#anc05 (参照日:2020年8月28日)