世界の空港ランキング
地方空港まで数えればそれこそ世界中に何万という空港がありますが、国の顔とも言える各国の国際空港となるとある程度数がしぼられてきます。ちなみに日本の場合、成田、関西、中部、羽田の四つが国際空港としてトップの格付けにあります。(大阪伊丹は関西と一元管理のため、ここでは省略)
さて、各空港が無視できないのが、1999年よりSkytraxが毎年発表している「世界の空港ランキング (The World’s Top 100 Airports) 」です。これは実際に空港を利用した乗客による満足度をベースに作られていますが、現在では世界100か国を超える1,300万人以上もの利用客からの評価が反映されており、航空業界において非常に重みのある賞となっています。
このランキングで上位に名前を挙げられるというのは、世界中に空港の良さをアピールする効果がありますが、逆に大きく順位を落とすと悪いイメージを持たれかねません。そんなわけで、各社とも前年と比べて自分たちの順位がどう変動するかに注目しています。
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ランキング No.1 ―チャンギ国際空港
このランキングでなんと2013年から 8年連続不動の1位 に輝くのが、シンガポールの チャンギ国際空港 です。 私もこの空港は利用したことがありますが、とにかく便利さと快適さが高い次元で両立しており、乗り継ぎで数時間過ごすのも全く苦になりません。巨大な空港施設は機能面をよく考えて作られていますし、店舗の充実度や免税店の品ぞろえも半端ではなく、出発客、到着客、乗り継ぎ客と全てが満足できるハイレベルなサービスを提供しています。ランキング1位をキープしているのも当然と言えるでしょう。
東京国際空港 (羽田) は昨年度に続き2020年度も2位につけています。(しばらく2位だった韓国の仁川国際空港は昨年から1つ順位を落とし今年は4位)。昨年トップ10入りを果たした 成田国際空港 はさらに順位を上げて7位に。その代わりといっては何ですが、中部国際空港 (セントレア) はランキングを落として8位となっています。そして、ついに 関西国際空港 がトップ10入りの10位! 本来であれば2020年に東京オリンピックを迎える予定だっただけに、空港でのおもてなし改善にも当然さまざまな見えない努力があったと思いますが、トップ10圏内に日本の主要空港が4つも入るというのは快挙といっていいと思います。
※ 2020年度ベスト格安ターミナルでも、日本は関西空港第2ターミナルが2位、成田空港第3ターミナルが3位、セントレア空港第2ターミナルが7位にランクイン。1位はフランス・パリのシャルルドゴール空港第3ターミナルでした。
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順位を下げ続けるクアラルンプール国際空港
さて、各国が利用客のさらなる増加を目指して国際空港のサービス改善に取り組む中、マレーシアはどうもパッとしません。
クアラルンプール国際空港 (KLIA) は2012年には8位という評価でトップ10にランクインしていましたが、そこから14位→20位→19位→24位→34位、2018年は44位、2019年は54位、そして2020年は 63位 までランクを落としています。2001年には何と世界のベストエアポート2位だったというのがまるで嘘のよう。直近の4年間は毎年きれいに約10位ずつ順位を落としていますが、一体何が原因で評価が下がり続けているのでしょうか。(※ 2020年度ベスト格安ターミナルのランキングについては、klia2が6位にランクイン。ただし昨年の3位からは順位を落としているので、このままいくと来年あたりトップ10圏外になる可能性も。)
(2021年3月15日:追記) 昨年あたりから、マレーシアの地元メディアでは「KLIAが空港ベスト10に入った」との報道がありますが、調べてみるとこれは当記事で扱っているSkytraxのランキングではなく、国際空港評議会 (ACI) が集計している「エアポート・サービス・クオリティ・アワード」という別のランキングのようです。
アンケートの集め方によって多少の差が出るのは理解できるとはいえ、この集計では韓国の仁川空港が2005年から12年連続でシンガポール・チャンギ空港を抜いて地域ランキング1位となっている他、トップ3の多くを中国の空港が占めています。確かに仁川もハブ空港として悪いところではありませんが、それでも総合的に見てチャンギよりいいとは思えません。格付けに定評のあるSkytraxのランキングは見ていても毎年なるほどと納得できますが、個人的にはACIの発表している順位はさすがにちょっと偏りがあるように感じます。
世界的な建築家の故黒川紀章氏により設計された空港ターミナルは開放的で快適ですし、免税店等も含め施設自体は決して悪くありません。ただ、個人的によくKLIAを利用している経験からすると、利用客の不満で一番多いのは入国審査の混雑と空港からの交通手段についてではないかと感じます。
入国審査カウンターは数だけ沢山あるものの、全部のカウンターが稼働しているのは一度も見たことがありません。大抵はその半分ぐらいに係官がいればいい方で、混雑時には外国人の入国審査に1時間近くかかることもあります。ようやく到着ゲートに出てきても、時間帯やその日の天候によってはタクシー待ちの長蛇の列ができていたり、さらには出口付近でぼったくりタクシー (白タク) の勧誘がウロウロしていたりと、気分よくマレーシアに到着したところに水を差すような要素がちょこちょことあるので、結果的に利用客にネガティブな印象を与えているのは間違いないでしょう。
さらによく指摘されている点ですが、空港職員やスタッフの態度も決してフレンドリーと言えるものではありません。もちろん全員ではありませんが、基本的に「お客さんを気持ちよく迎えよう」という意識が欠けており、仕事だからやっているだけという「イヤイヤさせられている感」がにじみ出ています。KLIAが空港ランキングで再び上位に浮上するためには、空港施設という「モノ」ではなく、サービスの基本となる「人」の部分で大きく変化できるかどうかが最大の課題となるのではないかと思います。
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罰則つきのサービス品質向上プラン
こうした状況を打開するため、ついにマレーシアの航空業界が重い腰を上げました。
マレーシア航空委員会 (Malaysian Aviation Commission: Mavcom) は、2018年の第3四半期から、KLIAとKLIA2 (格安航空ターミナル) において「空港におけるサービス品質の枠組み (Airports Quality of Service framework)」を導入すると発表。この枠組みでは、「乗客が利用する施設と快適さ」、「オペレーターやスタッフが利用する施設」、「順番待ちにかかる時間」、「乗客と荷物の流れ」、の4項目においてサービス品質のKPI (重要業績評価指標) を設定するとしています。
利用客によるアンケート評価やMavcomが実施する検査の結果、もしサービスが一定の水準に達していないと判断された場合には、空港に高額の罰金 (最高で収益の5%) を伴うペナルティを課す という思い切ったプランとなっており、現状に対する強い危機感が表れています。
空港会社と直接の利害関係がない第三者委員会であるMavcomが打ち出したサービス改善策。実際にどれぐらい効果が出るのか、KLIAの評価がどう変化するかに注目してきましたが、2020年の空港ランキングを見る限りでは空港利用客が実感できるだけの改革はまだまだ達成されていないようです。
おすすめの記事:「【マレーシア】交通事情(1) 渋滞するのにそれでも車を使う理由とは」
(2020年5月12日:テキスト追加・修正)
[参考資料]
(2017, December 6). Do it well or be fined, airports told. The Star, p. 2.