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【マレーシア】運転免許制度に苦しめられる在住外国人

投稿日:2018年3月6日 更新日:


ここ最近、在住外国人にとって不都合となる制度や法令が増えてきていると感じるマレーシアですが、その一つが運転免許に関する法改正です。

(追記:2018年10月04日)
現在、国内各地のJPJ (マレーシア交通局) において、シンガポール以外の外国免許証からマレーシアの運転免許証への書き換えが停止されています。どの程度の期間この措置が継続されるのかについては、今のところ明らかになっていません。

今回の停止措置の引き金になったのではないか思われる出来事が、今から約数週間前に起きています。2018年9月13日、運輸省のアントニー・ローク大臣が偽造運転免許証について会見を行い、賄賂を払うことで正規の試験を受けないままマレーシアの運転免許を取得したり、または不正に外国免許 (主に中国) からの書き換えを行ったりして交付された違法な免許証が、少なくとも1万4千件以上確認されていると述べました。

これほど大規模な不正行為が行われてきた背後には、JPJをはじめ様々な関係政府機関をまたぐ違法シンジケートが存在していると見られています。この件に関して、運輸省とJPJが警察ならびにマレーシア汚職防止委員会 (MACC) に告訴したことで、報道によるとこれまでに6つの州の計12名のJPJ職員が職権乱用と汚職行為の罪で逮捕されたとのことです。

こういった事情を踏まえると、免許交付システムとその手続きを全面的に見直し、不正に利用されることがないよう有効な対策が取られるまで、外国免許からの書き換えについては当分停止されたままという前提で考えておく必要があるかもしれません。

外国で車を運転するには

外国で車を運転するために必要な資格を持つには、基本的に2つの方法があります。一つは国際運転免許証を取得すること、もう一つは現地の運転免許証に切り替え (書き換え) ることです。

日本で発行される国際運転免許証

国際運転免許証 (日本の道路交通法の定義では「国外運転免許証」) は、自分が持っている有効な運転免許の発行国で交付されます。例えば日本の免許証を持っている場合、各都道府県の運転免許試験場で申請すれば約数時間後には受け取ることができます。海外旅行に出かける方や短期で海外に滞在予定の方は、通常この国際免許だけで特に不便はないでしょう。(日本が批准するジュネーブ条約に加盟していない一部の国を除く)

しかし国際免許の有効期限は1年間であり、更新するには帰国しなければいけないこと、また申請する度に発行手数料がかかることを考えると、長期滞在での使用には不向きと言えます。そのため、就労やセカンドホーム・プログラム等のビザを取得して外国に数年単位で滞在される方は、やはり現地の運転免許に切り替えることがほとんどだと思います。

さて、マレーシアにおいてもこれまで在住外国人は現地免許に書き換えることが多く、自国の大使館で翻訳証明を出してもらえば、特に問題なく書類申請のみでマレーシアの運転免許証を取得することができていました。ところが2017年から、マレーシア政府は他国米国と英国の免許からの書類申請による切り替えを禁止しました。

(※ なお2018年10月02日時点で、英米両国だけではなく日本を含む他国の外国免許証からの切り替えが停止されています。シンガポールの運転免許証のみマレーシアの免許への書き換えが行われているとのこと。読者の方の情報によると、今回の停止措置以前に切替済みの免許については更新の際も特に問題はないようです。この点は、既に発行された免許については有効とする (違法取得されたものを除く) という政府機関のスタンスに沿ったものと言えます。)

この件については在住外国人、とりわけ欧米人コミュニティの中でも大きな問題となっており、「まったく非常識な制度“改悪”だ」と怒りの声が多く挙がっています。確かに、「マレーシアの免許が欲しけりゃ教習所に通え」というのは、多くの外国人がマレーシアよりもはるかに厳しい合格基準を持つ国で取得した運転免許を持っていることを考えると、単なる嫌がらせにしか聞こえないかもしれません。

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マレーシアでの免許取得は大変

日本の教習所 by iMorpheus

では、現地の教習所で免許を取るのは難しいのでしょうか?

運転技術という観点だけで言うと、相当下手でも免許は取得できます。マレーシアにおける運転マナーや交通事故の多さを見れば、平均的なドライバーの運転技術と免許試験のレベルがどんなものか説明するまでもないでしょう。ただし、外国人が免許を取ろうとするとそこに大きな壁が立ちはだかります。それは言語です。

マレーシアの現地教習所の使用言語は基本的にマレー語です。都市部には「英語OK」とうたっている教習所も幾つかありますが、そういったところでも実際には教官が話すのは主にマレー語なのです。現在、マレーシアの免許取得のため教習所に通っている英語ネイティブの外国人によると、一応 “英語” で書かれた教科書や書類はあるものの、「たぶんインターネットで機械翻訳しただけの直訳のオンパレードで、半分ぐらいは意味不明」とのこと。本人にはまだまだ先が見えないという免許取得までの長い道のりですが、当人いわく「海外勤務で来てるのに、忙しく仕事しながら教習所にも通えとか絶対ムリ」と怒り心頭でした。

2年程前に、私自身も大型二輪の免許を取るため現地の教習所に通った経験があります。免許切替が禁止される前に取得したマレーシアの運転免許があったので、幸い筆記試験は免除でしたが、安全点検の試験やJPJ (マレーシア交通局: 日本で言うところの陸運局) 職員による講習、教習課程の説明、その他実技全般は全てマレー語でした。 (ちなみにこの教習所は「英語でもOK」と宣伝しているところです。) 

ですから、英語での受験環境が広く整備されるまでは、外国人が現地教習所で免許を取得するのは (マレー語を理解できるのでない限り) 現実的には非常に負担が大きいと言えます。また例えそうなったとしても、英語で受験できるだけの語学レベルがないなら、日本人にとって現地の運転免許証の取得はよりハードルが高くなるでしょう。 

切り替えた免許では国際免許が申請できない?

最近、在住外国人にとってさらに不利となる変更が加えられました。2018年からは、教習所に通って取得した免許にのみ国際運転免許証を発行するという法令が施行されたのです。言い換えると、他国の運転免許からの書き換えでマレーシアの免許を取得した方は、国際免許を申請できなくなったということです。

「国際免許申請について」追記:(2019年3月8日)

本日、JPJで運転免許を更新したついでに国際免許を申請したところ、当地で取得した二輪免許だけでなく、日本からの書き換えである自動車の免許も無事に取得できました (国際運転免許証のカテゴリーAとBにスタンプが押される)。昨年の申請時に「外国免許から切替取得したものには発行できない」とあれだけ厳しく言われたのは何だったのかと思わずにはいられません。ただ、マレーシアの場合は係官のさじ加減である程度融通が利くこともあるので、今回たまたま担当者に気に入られただけなのか、または単なる見落としか、それとも法令が変わったからなのかは確認できませんでした。

外国人の書類申請などを扱うエージェントに聞いても、運転免許関係のルールは四六時中変わってるから自分たちもよく分からないとのこと。行政機関に電話で問い合わせても担当者によって返答が違うことは日常茶飯事ですし、公式ウェブサイトに載っている情報が間違っていることもしばしば。そういうものだと割り切って対応するしかないようです。

マレーシアの免許に切り替えた外国人の中には、以前持っていた他国の免許証はすでに失効しているという方もいることでしょう。今回の法改正により、今後そうした方はマレーシア以外の国で運転することができなくなるということになります。母国やその他ビザを取得している国であれば、帰国した際にマレーシアの運転免許から切替申請 (日本ではいわゆる「外免切替」) を行うことで当地の運転免許を取得することも可能でしょう。しかし、マレーシアで国際免許を申請できないとなると、旅行など短期で訪れる国において運転する資格がなくなってしまうのです。

(※ マレーシアで発行された運転免許証は、タイにおいては警察の検問等でもそのまま通用しました。その他の東南アジアの国ではまだ個人的に試していませんが、ASEAN加盟国内では基本的に有効だとのこと。)

不利な変更は、こっそり突然やってくる

上に挙げたような法令の変更に関する告知は、JPJの公式ページを探しても見当たりません。 (少なくとも、普通のユーザーがチェックするようなページには載せられていません)  以前書いた免税店での外国人に対する購入制限もそうですが、こうした何か裏があるような法改正というのはいつも知らないうちに施行されており、メディアに取り上げられることもほとんどありません。主に影響を受けるのが外国人に限られている場合は、とりわけこの傾向が強いように感じます。

国際免許に関して新たに施行された法令も、実は今回私が提出した交付申請が却下されたことがきっかけで初めて気付きました。「バイクの免許はここで地元の教習所に通って取ったものだ」とその場で再申請してみたところ、今度は私の言い分が通じて二輪に限りこれまで通り国際免許が発行されました。とはいえ、同じ運転免許証に記載されているにも関わらず、書き換えだからという理由で自動車の運転資格のみ国際免許から削除するという論理は、どう考えても理解に苦しむと言わざるを得ません。(最新の状況については、上の「国際免許申請について」追記をご参照下さい。)

5月9日の総選挙においてマハティール元首相率いる野党連合が過半数の議席を獲得し、60年ぶりの政権交代となったマレーシア。税制を始めさまざまな分野における法改正を公約としてきた野党が政権を担うことで、今後日常生活にどのような影響が出てくるのか、在留外国人としても注視していきたいと思います。

[参考資料]
(2018年10月4日), ‘Twelve JPJ officers arrested for issuing 14,000 fake driving licences’. the Sun daily, URL: http://m.thesundaily.my/node/578039 (参照日:2018年10月04日)

(2018年3月7日:誤字修正)
(2019年3月8日:テキスト追加・修正)

(2018年10月04日:テキスト追加・修正)
在マレーシア日本国大使館によると、外国の運転免許からマレーシア免許証への書き換えについては新たな通知があるまで停止される、ということが正式に確認されたようです。(マレーシア外務省の通知に基づく)

(2018年9月28日:テキスト追加・修正)
外国免許証をめぐる最近の状況の変化に伴い、内容を再修正しました。在マレーシア日本国大使館においても、本件の正確な情報について現在交通局本局へ照会中とのことです。

(2018年6月23日:テキスト追加・修正)
※ 読者の方からの情報により、現時点で日本は書き換えを禁止されている国には入っていないとのことで内容を一部修正しました。外資系の企業など特に欧米系の社員が多数在籍している会社では、人事部が他国免許の書き換え禁止に関する法改正を英米両国以外の免許を持つ外国人にも通達するなど、情報不足による現場での混乱も見られているようです。


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  1. メアド必須のコメ欄いる? より:

    今年の27日に更新されてるけど
    今もなんですかこれ?

    • Gaku より:

      この切替停止措置は期間が未定のまま発令されており、以前の状態に戻ったという情報は現時点で把握していません。
      現地日本大使館の情報でも、昨年10月4日に出されたお知らせを最後に本件の新たな情報は更新されていないことから、暫定停止措置はいまだに解除されていないものと理解しています。

      参考:在マレーシア日本国大使館ホームページ「運転免許証の当国での書き換え一時停止について (https://www.my.emb-japan.go.jp/itpr_ja/newinfo_01102018A.html)」

      今後状況に変化があった場合は、停止措置が取られた時と同様、マレーシア外務省から各国大使館へその旨通知がなされるものと思われます。

  2. T.Tanaka より:

    MM2Hホルダーです。先週、すでに所有しているマレーシアの免許の更新にシャーアラムのJPJ行って来ました。写真、パスポート、手数料を持って窓口で更新申請し30分位で新しい免許もらいました。手数料は1年60リンギになっていましたが・・・。ということで、すでに所有している免許の更新(Renew)については今のところ問題無いようです。

    • Gaku より:

      T.Tanaka 様、
      貴重な情報をお寄せ頂きありがとうございます。

      コメントして頂いた通り、元々が外国免許からの書き換えであっても既に発行済みの免許に関しては制限はかかっていないようですね。
      せっかく最新情報を頂きましたので、記事中にもこの点を含められるよう内容を追加修正しました。

      今後ともよろしくお願いいたします。

  3. ツインマスター より:

    PJPのツイッターに、違法に取得した免許は9/13から一ヶ月以内に返納すれば罪に問わない、というメッセージが日替わりで掲載されていますね。

    あと、国別ルールはこちら。
    http://www.mm2h.gov.my/pdf/mm2h11.pdf
    USA,UKは、自動書換えできない(実質禁止)という理解でよろしいか?

    • Gaku より:

      コメントならびにMM2Hのリンクありがとうございます。

      おっしゃる通り、JPJは違法に交付された14,000の運転免許については特定しており、返納のための一か月の猶予期間を過ぎれば法的措置を取るということのようですね。
      該当する外国人の中には、免許書き換えをエージェントに全部任せて言われるがままにお金を払っていた場合など、自身の免許取得に際して違法行為が行われたと認識していない人も多いかもしれません。ただそういう人たちは今回のニュース自体も把握していない可能性がありますし、たとえ該当していたとしても自力で一か月以内に返却できるかどうかは疑問です。

      英国と米国で発行された免許の書き換えについては、今回の全面的な停止措置が取られる前から禁止になっていましたので、この両国の免許からマレーシアの免許への自動切り替えは基本的にできないという考えでよいと思われます。

  4. まい より:

    マレーシアの運輸局に問い合わせ、
    正式に日本の免許から書き換え可能と回答を得ました。
    NGになったのは、UKとUSの二カ国です。
    訂正を。

    • Gaku より:

      まい様、

      情報提供して下さりありがとうございます。
      該当箇所を修正しました。

      今後ともよろしくお願いいたします。

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マレーシアのクアラルンプール在住。

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