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ラマダーン (ラマダン) とは?
イスラム歴 (ヒジュラ歴) の第9月である「ラマダーン」。イスラム教徒にとって特別な月であるこのラマダーンの間、日の出から日没まで飲食を絶つ断食が行われます。
中東の国々はもちろんのこと、世界中のイスラム教徒が守り行う一か月間の断食。東南アジアでも、インドネシアやマレーシアなどイスラム教徒が大半を占める国では、国全体が期間中ある種の特別な空気に包まれます。
ちなみにマレーシアでは、2021年のラマダーンは4月13日の夕方から始まり、5月13日&14日の2日間が断食明けの祝日 (Hari Raya Puasa: ハリラヤ・プアサ) となっています。この日付はイスラム歴で計算しているので、私たちが日常使っているグレゴリオ暦にすると毎年約11日ずつ早くなっていきます。そのため、30年少しすると一周して同じ時期に戻ってくるということになります。
イスラム教徒以外には関係ない?
国や地域によってはムスリム以外にも公共の場での飲食禁止といった制限が課されたり、外国人が違反した場合には国外追放となるところもあるようですが、マレーシアの場合そこまで厳しくはありません。しかしイスラム教徒ではないとしても、ラマダーンの期間中は断食を行っているムスリムに一定の配慮を示すことがマナーとなっています。そのいくつかをご紹介しましょう。
マナー1:飲食しているところを見せつけない
断食月といえどムスリム以外の人は普通に飲食をするわけですが、それでもお店であまり通りに面したところではなく中の方に座るとか、オフィスなどではムスリムがいるところではできるだけ飲食を避けるとか、外で飲み物を飲む時あからさまに「プハー!」みたいなことをしないとか (これは常識の範囲内だと思いますが)、ローカルはそれなりの気遣いを示しています。
ただ、イスラム教で禁じられている豚肉やお酒を提供しているところなど、普段からムスリムは来ないようなお店では、それほど普段と変わりなく飲食をしているように見受けられます。
マナー2:断食明けの時間に気を付ける
この時期の外食では、夕方7時すぎぐらいになるとお皿に山盛りのご飯を前にしてじっと座っている人たちを目にするかもしれません。一日中何も食べていないため、断食が空ける少し前、しかもご飯が目の前にあるけどまだ食べられない時間帯というのは、空腹感がマックスになる過酷な数分間です。
そんな時に隣でご飯をパクつくのはさすがに配慮が欠けているということで、この時間帯に飲食店 (特にハラル レストラン*をはじめ、イスラム教徒に人気のある店) にいる人たちは、断食明けの時間まで#イスラム教徒であるかどうかにかかわらず食事に手を付けないことがマナーとされています。(注文するのはOK)
ただし、すべてのお店がそうではありませんので周りの雰囲気を見て判断しましょう。豚を扱う中華系など、ムスリムが来ない飲食店では通常特に気にする必要はありません。
* 食材・調理がイスラム教の戒律に従っていると認証されたレストラン。
# 店によっては、断食明けを知らせるお祈りが流れる。
ちなみに断食明けの時間 (「今から食べてよい」という時刻) は地域ごとに細かく定められており、しかも決まった時間ではなく毎日微妙に変わります。そのため、ムスリムの人たちは新聞やインターネットに載せられている時間をチェックして、その日その場所で何時何分から食べて良いのかを確認しています。
断食月に困る事
「断食月と言っても、イスラム教徒でなければそれほど困ることはないだろう」と思う方もいることでしょう。しかし、非イスラム教徒であっても断食月というのはそれなりに影響を受けるのです。その例をいくつか下にご紹介します。
あるある その1:やる気がない
断食月の間は、色々な場所でやる気のない店員を目にします。飲まず食わずなので当然と言えば当然なんですが、午前中はまだしも午後になると体力だけでなく気力もなくなっており、スーパーなどでは仕事中に突っ伏して寝ているレジ係もいます。とにかく体力を温存したいので、例えば店員に商品の場所を聞いたとしても、だるそうに「あっちの方」と適当に指をさされて終わり。
この時期は「カスタマーサービス」なんていう単語は彼らの辞書から消えているので、ラマダーンの期間中は店員の対応がよくないのは仕方がないと思ってあきらめましょう。
あるある その2:渋滞がひどい
大抵のオフィスでは、ラマダーン中は昼食を取らない代わりに終業時間を早めています。みんなとにかく断食明けの時間が来ると同時に食べ始めたいので、それまでには家に帰っていたい (またはそこから外食に出かけて、レストランで待機していたい) ということで誰も残業などせず、交通量が大体夕方5時前から7時前頃までの短時間に集中します。これで大雨でも降ろうものなら輪をかけて渋滞がひどくなります。また空腹でイライラしている (またはボーッとしている) ので運転していても集中力がなく、普段の時期より交通事故が多くなる傾向があり、それがさらに渋滞を悪化させる原因ともなっています。
どうしても渋滞にハマりたくない場合は、一気に交通量が少なくなる夜7時半頃になってから移動するのも一つの方法です。断食が明けるこの時間帯に食事を取らずに運転しているムスリムは殆どいないので、通常であれば渋滞はだいぶ緩和されているはずです。
あるある その3:メニューが変わる
例えばホテルにあるレストランなど、ある程度の規模の飲食店でムスリムが食べられるところであれば、断食月のディナーは大抵「ラマダーン スペシャル」と銘打った普段より何割か高い特別メニューになってしまいます。通常はお得感のあるビュッフェ (食べ放題) のお店でも、この時期はいつものメニューが注文できなくなっていたり、割引クーポン (バウチャー) が使えなかったりすることも多いので、事前に連絡して確認しておいた方が安心でしょう。
また、比較的小さなお店 (個人経営のカフェやレストランなど) でオーナーまたは店員の多くがムスリムの場合は、ラマダーン中の営業時間が通常と異なる場合があるのでそれも要チェックです。
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あるある その4:機内食の朝食が早すぎる
マレーシアのフラッグ・キャリアであるマレーシア航空は、マレーシア出発便の場合ラマダーン期間中の朝食はムスリムに合わせて夜明け前に提供されます。しかも上空1万メートルを飛んでいる飛行機での夜明けというのは地上よりもはるかに早く、特に夏の時期であればとんでもない早朝から機内の照明がこうこうと点き、食事がいっせいに配られます (エコノミークラスの場合)。もちろん事情はよく分かるのですが、夜行便のフライトだと断食月の朝食時間は結構つらいものがあります。
断食月ならではのよいところ
このように、イスラム教徒でなくともそれなりに影響を受ける断食月のラマダーンですが、大変なことばかりではありません。ショッピングセンターではラマダーン期間限定の特別セールがあったり、習慣として断食明けに出される美味しいデーツ (ナツメヤシ) が手に入ったり、レバノン料理やイエメン料理などこの期間ならではのアラビア料理のビュッフェセットを食べられたりと、色々普段とは違った経験もできるのです。
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<デーツについて>
一口にデーツと言ってもじつはピンからキリまで色々あります。安いものは食感がボソボソしていたり甘すぎたりしますが、本場中東から輸入された高級品種のデーツは、ねっとり滑らかな口当たりと上品な甘さ&香りで一度食べたら忘れられません。(個人的に今までで一番美味しいと感じたのは、大使館のイベントで出されたクウェート産デーツと、イラン人の友人宅で頂いたイラン産デーツです。)
非イスラム教の外国人や観光客に対しては、断食に対する知識が多少欠けていてもそれほど過敏な反応は示さないマレーシアのイスラム教徒ですが、断食月に特有の注意点やマナーを意識しておくなら、ローカルの人たちとコミュニケーションをとる上でより適切な配慮ができるでしょう。
(2020年5月20日:タイトル修正)
(2021年4月13日:テキスト追加・修正)
ラマダンあるある…。思いあたることばかりで笑ってしまいました。やる気のない店員うける
masako さん、コメントありがとうございます。
ただ、ラマダンでない時でも同じような感じの店員はいますけどね。
断食中は机に突っ伏して寝てる、それ以外の時は目を開けたまま脳みそが寝てるという (笑)
ま、仕事で精神が参るほどストレスため込むよりは幸せな人生なのかもしれません。