先月 (2020年9月) 首都圏クランバレー一帯に影響を及ぼした大規模断水があったばかりですが、再び首都圏で水源の汚染による断水が起こりました。
断水の概要
前回の断水時と同じく、異臭を検出したため首都圏に上水道を供給している浄水施設のうち2か所が10月4日に稼働を停止。今回はペタリン (Petaing)、ウル・ランガット (Hulu Langat)、クアラ・ランガット (Kuala Langat)、およびセパン (Sepang) 地区において、住民約30万世帯が影響を受けています。
動物の死骸のような異臭がしたと言われる今回の汚染源は、取水場周辺の工場ではなくネグリセンビラン州の養鴨場と見られることが当局の調査で判明しました。定期的に水質検査を行って稼働再開のタイミングを図っているものの、まだ異臭が基準値を上回っているためいつ断水から回復するのか具体的な見通しは立っていないようです。
(2020年10月9日:追記) 水道事業者のAir Selangorは、10月9日午前6時までに影響を受けた全地域で断水が解消されたと発表しました。(参考―The Star: “Water supply fully restored in 274 areas, says Air Selangor“)
あきれる市民
大規模断水からわずか一月のうちに再び汚染による断水が起きたことで、住民ももはや怒りを通り越してあきれかえっている姿さえ見られます。断水地区には一応給水車が手配されているものの、報道によれば黄色くて塩素臭が強くそのまま飲食には使えないような水を配っているところもあるとか。新型コロナウイルス (COVID-19) の第2波で感染者が急増している中、長時間並んでようやく手に入れた水がこれだと怒りの声が上がるのも当然でしょう。
断水地区の幾つかは今まさに新型コロナウイルスの感染者が急増しているエリアで、手洗い・うがいなど清潔な水が何にもまして大切な中で断水が起こったというのは非常に悪いタイミングです。当初予想されていたような化学薬品を扱う工場が汚染源ではなかったものの、化学物質であろうが有機物であろうが、汚染物質を自然環境に垂れ流しても滅多に捕まることがないという現状を改善しない限り、今後も同様の断水が発生するのは防げないと思われます。
政府が新型コロナウイルスのリスクを無視してサバ州での選挙を強行した結果として全国に感染が拡大したことで、世論の批判の矛先が政府に向かっているただ中で起きた今回の断水により、市民の政府に対する信頼がさらに失われたことは間違いありません。
[参考資料]
(2020年10月4日) Pollution in Sg Semenyih: Water disruption, again. New Straits Times. URL: https://www.nst.com.my/news/nation/2020/10/629556/pollution-sg-semenyih-water-disruption-again (参照日:2020年10月6日)
(2020年10月5日) Negri Sembilan duck farm suspected source of Sg Semenyih pollution [NSTTV]. New Straits Times. URL: https://www.nst.com.my/news/nation/2020/10/629707/negri-sembilan-duck-farm-suspected-source-sg-semenyih-pollution-nsttv (参照日:2020年10月6日)