ロックダウンから徐々に制限を緩和しつつ、3月中旬から数か月にわたって続いたマレーシアの活動制限令。9月中旬から再び感染拡大の第3波が始まり、再び制限が厳しくなる地域も多くなってきました。ただ、「MCO」「CMCO」「RMCO」「EMCO」「TEMCO」など、アルファベットで表す制限令の種類が増えすぎて、正直地元のマレーシア人ですらどれが何なのかよく分からなくなってきています。
そこで、今回は特に感染が再拡大している地域に適用され始めている「CMCO」「TEMCO」「EMCO」の3つの違いを考えたいと思います。
(2021年3月2日:追記) 2021年1月以降、特にMCOとCMCOの違いが非常にあいまいになっており、政府当局のさじ加減でどうにでも変わると言っても過言ではない状況になっています。とりわけCMCOに関する以下の情報は「本来はこういうものだった」という意味でとらえて頂ければと思います。現時点での規制内容詳細については、常に大使館や政府広報などの公式情報を確認するようになさってください。
CMCO (条件付き活動制限令)
正式名:Conditional Movement Control Order
対象地域:全国、州、行政地域、市区町村レベル
元々は、ロックダウンとして始まった活動制限令 (MCO) が一部緩和されたのがCMCOです。この“条件付き”というのがポイントで、当局が状況に合わせて条件を変更できる余地が残してあります。「CMCOだったらこれができる/できない」と一律に決められているわけではないため、結局どのようが規制が適用されるのか分かりにくい原因ともなっています。
これまでの経験からすると、基本的には以下のような制限が含まれます。
・教育施設の閉鎖
・宗教施設の利用制限/閉鎖
・レクリエーション施設の閉鎖
・商業活動の営業時間短縮
・交通機関の利用時間制限
・自家用車やタクシー等の乗車人数制限
・店舗での飲食の制限/禁止
・対象地域から他地域への移動制限 (通勤や医療等の理由で許可される場合を除く)
・大規模なイベントの制限/禁止
ある程度の経済・社会活動は残しながらも、感染リスクの高い環境を作らないために制限や禁止を適用するのがCMCOだと言えるでしょう。
EMCO (強化された活動制限令)
正式名:Enhanced Movement Control Order
対象地域:地区、建物、施設レベル
EMCOでは、感染拡大が集中していると判断された特定地区や建物に対して活動制限令 (MCO) をより強化した規制が行われます。通常は軍が出動して対象地区の厳格な封鎖を行い、医療従事者や配給関係者以外の出入りが完全に禁止されます。まず約2週間程度の期間で適用されることが多く、状況によって延長されることがあります。EMCOにおいては基本的に以下のような措置がとられます。(適用範囲が広い場合や都市部など、個々のケースに応じて一部緩和されることもあり)
(2021年7月1日:追記) 7月3日よりクランバレー地域 (KL&セランゴール州) で適用されるEMCOについては、各世帯1名のみ自宅より半径10km以内の範囲に限って食料品や生活必需品の買い出しを許可するとのこと。(参考―New Straits Times: “EMCO in major Selangor sub-districts, several KL localities from July 3“)
Grabやタクシー等による移動も、運転手を含めて2名 (乗客1名のみ) に制限されます。その他対象地域等の詳細は、現地日本大使館の情報「【新型コロナウイルス】活動制限令(MCO)及び強化された活動制限令(EMCO)の施行(2021年7月1日更新)」をご覧ください。
・対象地区を完全に封鎖
・経済活動と社会活動を全て禁止
・住民は自宅から外出禁止
・対象地区の住民全員のPCR検査を実施 (7月3日施行対象のクランバレー地域では、対象を絞ったスクリーニングを実施)
・食料、生活必需品は戸別に配給 (7月3日施行対象のクランバレー地域では、一世帯1名のみ食料品・必需品購入のための外出を許可)
感染が連鎖的かつ集中的に発生してる地区を完全に隔離してその他の地域への拡大を防ぐとともに、対象地区内でのさらなる感染をできるだけ抑えるための措置がEMCOです。
TEMCO (対象を限定した強化された活動制限令)
正式名:Targeted Enhanced Movement Control Order
対象地域:行政地域、市区町村レベル
TEMCOでは、感染拡大が集中していると判断された地域に対してCMCOをより強化した内容の規制が行われます。比較的最近できた規制のため詳細がいまいち分からない点もありますが、自宅から全く出られなくなるEMCOとは異なり生活に不可欠な経済・社会活動は維持され、EMCOより広い範囲を対象に適用されるようです。TEMCO対象地域ではCMCOの規制に加えて以下のような措置がとられます。(都市部など、ケースに応じて一部緩和されることもあり)
・対象地域への外部からのアクセスを禁止
・住民が対象地域から出ることを禁止
・日常生活に不可欠な業種以外の経済活動を禁止
中身としては元々のMCO (活動制限令) に近いように聞こえますが、経済・社会活動の制限と移動制限をセットにして特定地域に適用できるところがTEMCOの違いのようです。
TEMCOについてはまだはっきりとした定義づけがなされていない部分もあります。EMCOの意味合いが時間と共に変化していったという前例もあるので、TEMCOも今後どのような意味で使われることになるのか注意が必要でしょう。
まとめ
上に述べたように、現状では RMCO > CMCO > TEMCO > EMCO の順に規制が厳しくなります。
第3波の感染拡大が東マレーシアにとどまらず半島マレーシア全域に広がっており、今後も現在のRMCO (回復のための活動制限令) からより厳しいCMCOやTEMCO、またEMCOが適用される地域も増えていくことが予想されます。
上に挙げた例はあくまで参考であり、個々のケースに対して当局が個別の制限や条件を加えることも考えられます。もしお住まいの地域が再び規制対象になった場合は、当局や日本大使館などから最新の情報を入手して内容を十分把握するようになさってください。
[参考資料]
(2020年10月10日). Ismail Sabri explains SOPs for CMCO, EMCO and TEMCO. New Straits Times. URL: https://www.nst.com.my/news/nation/2020/10/631180/ismail-sabri-explains-sops-cmco-emco-and-temco (参照日:2020年10月11日)
(2020年10月16日:テキスト修正)