コーヒーの話

中国産コーヒーが持つポテンシャルとは

投稿日:2020年9月17日 更新日:


Mountains and lakes of Yunnan

雲南省の景色

コーヒー生産国としての中国

「コーヒーの生産地」と聞けば、中南米やアフリカ、アジアでいうとインドネシアやベトナムなどが思い浮かびますが、中国の名前を挙げる人はまだまだ少ないはずです。消費国としては毎年大きな伸び率を示している中国ですが、実はコーヒーの生産地としてのポテンシャルにも大きな期待が寄せられています。

1988年、国連開発計画 (UNDP) と世界銀行による援助を受けて中国政府がプロジェクトを主導したことで、中国国内でのコーヒーの大規模な商業生産が始まりました。その後、中国におけるコーヒー生産量は1994年から2004年までの10年間に21%、さらに2004年から2014年までの10年間でも21%と確実に増加しています。2016年には14万トンのコーヒーを生産しましたが、これは全世界の生産量の約1.5%に相当します。

雲南省でのコーヒー栽培

中国国内で大部分のコーヒー生産を担っているのは、茶葉の産地として有名な中国南西部の雲南省です。当初は中国産コーヒーをシングルオリジンとして売り出そうとしていました。しかし、生産量が非常に少ないマイクロロットはともかく、それなりの量を安定した品質で供給するには課題が多くうまくいきませんでした。

その後、アプローチを変更してブレンドコーヒーの一部としての使用を念頭にマーケティングしたところ、今度は順調に取引を伸ばすことができ、さらにそこからシングルオリジンとしての可能性も徐々に認められるようになっていきます。当初はバラつきのあった風味も年を重ねるごとに改善され、最近では生産量が増えても目指す風味特性を安定して出せるようになってきました。

現在のところ、中国で栽培されている品種は大部分がカティモールです。一般的には他のアラビカ種と比べて風味がやや劣るとされますが、標高が平均2,000mを超える高原地帯が広がり夜間には気温が下がる雲南省では、コーヒーの生育が遅くなり糖度が上がるため、カティモールであってもスペシャルティコーヒーとしての高い評価を受けています。今後ブルボンやパカマラなど他の品種も導入されると見られており、中国産コーヒーのバラエティはより広がっていくことでしょう。

スポンサーリンク

中国産コーヒーの今後

生産処理やサステイナビリティの面でまだまだ改善の余地がある中国のコーヒー生産ですが、今後の展開に関してはポジティブな見方が持たれています。というのも、都市部で教育を受けた若い世代が戻ってきてコーヒー栽培に関わるようになるケースが増えており、そうした若者によってコーヒー栽培のクオリティがより速いスピードで改善されていくと予想されるからです。

業種を問わず、マーケットの需要に合わせてどんどん変化してゆくスピードに関しては世界でも屈指の中国。栽培する土地はいくらでもあるだけに、「コーヒー生産地」というと普通に中国の名前が挙がる時代が来るのもそう遠い将来のことではないかもしれません。

地球はコーヒーで回ってる O.M.C. - にほんブログ村

[参考資料]
(2016年9月28日), Commercial to Specialty: China as a Growing Coffee Origin. Perfect Daily Grind, URL: https://www.perfectdailygrind.com/2016/09/nestle-specialty-china-growing-coffee-origin/ (参照日:2020年9月17日)

(2020年9月11日), The Increasing Quality Of Chinese-Grown Coffee. Perfect Daily Grind, URL: https://perfectdailygrind.com/2020/09/the-increasing-quality-of-chinese-grown-coffee/?utm_source=Website+Subscribers&utm_campaign=a50c53916e-Jan_3_2017_COPY_01&utm_medium=email&utm_term=0_e5c3eb4dc6-a50c53916e-233324053 (参照日:2020年9月17日)


スポンサーリンク

Colors Coffee

Colors Coffee

-コーヒーの話
-, ,

執筆者:


Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

関連記事

Latte in a blue cup

コーヒーの香りは好きですか?嫌いですか?

飲み物としてのコーヒーには当然好き嫌いがありますが、なぜか「コーヒーの香りが大嫌いだ」という人は意外と見かけません。文化や人種の違いも超えて世界中で愛されるコーヒーの香りについて考えます。

Fountain pen and notebook

【エッセイ】「カフェのトイレ」

by Gerhard G. on Pixabay KLやペナン、マラッカ、イポーといったマレーシアの都市部では、街を歩いているだけでいくつものお洒落なカフェを目にする。木の風合いを生かした内装で温かみ …

Handful of coffee cherry

新型コロナウイルス:コーヒー生産にはどんな影響が?

by Nestlé on flickr 日本を含め、世界中の多くの国で日常生活にも影響が出ている新型コロナウイルス (COVID-19) の感染。スポーツや飲食業界に与える影響についてよく取り上げられ …

コーヒーの生産処理―マロラクティックとは?

アフリカンベッドで乾燥中のコーヒーチェリー by Gaku.Y Contents1 特殊なコーヒーの生産処理2 マロラクティックとは3 マロラクティックとワイニーの違い4 マロラクティックの風味5 特 …

Taster's Flavor Wheel

コーヒーフレーバーホイール:世界中で使うには問題あり?→その理由とは

Contents1 風味を表現するのに役立つフレーバーホイール2 世界で広く受け入れられる基準としては偏りがある3 現地版フレーバーホイールを作る試み―台湾&インドネシア4 “好ましくない風味”とは? …

このブログについて

東南アジアに住んで21年。知っているとコーヒーがもっと楽しめる豆知識をはじめ、さまざまなコーヒー文化と地元情報を現地から発信しています。

地球はコーヒーで回ってる O.M.C. - にほんブログ村

TAILORED CAFE Online Store


管理人: Gaku

40代の通訳者です。
マレーシアのクアラルンプール在住。

[好きなモノ]コーヒー、写真、バイク、温泉、ラーメン

毎朝、妻と二人でコーヒーを飲むのが日課。でも、珈琲ネタを語りだすとサラリと流されます。