コーヒー生産国としての中国
「コーヒーの生産地」と聞けば、中南米やアフリカ、アジアでいうとインドネシアやベトナムなどが思い浮かびますが、中国の名前を挙げる人はまだまだ少ないはずです。消費国としては毎年大きな伸び率を示している中国ですが、実はコーヒーの生産地としてのポテンシャルにも大きな期待が寄せられています。
1988年、国連開発計画 (UNDP) と世界銀行による援助を受けて中国政府がプロジェクトを主導したことで、中国国内でのコーヒーの大規模な商業生産が始まりました。その後、中国におけるコーヒー生産量は1994年から2004年までの10年間に21%、さらに2004年から2014年までの10年間でも21%と確実に増加しています。2016年には14万トンのコーヒーを生産しましたが、これは全世界の生産量の約1.5%に相当します。
雲南省でのコーヒー栽培
中国国内で大部分のコーヒー生産を担っているのは、茶葉の産地として有名な中国南西部の雲南省です。当初は中国産コーヒーをシングルオリジンとして売り出そうとしていました。しかし、生産量が非常に少ないマイクロロットはともかく、それなりの量を安定した品質で供給するには課題が多くうまくいきませんでした。
その後、アプローチを変更してブレンドコーヒーの一部としての使用を念頭にマーケティングしたところ、今度は順調に取引を伸ばすことができ、さらにそこからシングルオリジンとしての可能性も徐々に認められるようになっていきます。当初はバラつきのあった風味も年を重ねるごとに改善され、最近では生産量が増えても目指す風味特性を安定して出せるようになってきました。
現在のところ、中国で栽培されている品種は大部分がカティモールです。一般的には他のアラビカ種と比べて風味がやや劣るとされますが、標高が平均2,000mを超える高原地帯が広がり夜間には気温が下がる雲南省では、コーヒーの生育が遅くなり糖度が上がるため、カティモールであってもスペシャルティコーヒーとしての高い評価を受けています。今後ブルボンやパカマラなど他の品種も導入されると見られており、中国産コーヒーのバラエティはより広がっていくことでしょう。
スポンサーリンク
中国産コーヒーの今後
生産処理やサステイナビリティの面でまだまだ改善の余地がある中国のコーヒー生産ですが、今後の展開に関してはポジティブな見方が持たれています。というのも、都市部で教育を受けた若い世代が戻ってきてコーヒー栽培に関わるようになるケースが増えており、そうした若者によってコーヒー栽培のクオリティがより速いスピードで改善されていくと予想されるからです。
業種を問わず、マーケットの需要に合わせてどんどん変化してゆくスピードに関しては世界でも屈指の中国。栽培する土地はいくらでもあるだけに、「コーヒー生産地」というと普通に中国の名前が挙がる時代が来るのもそう遠い将来のことではないかもしれません。
[参考資料]
(2016年9月28日), Commercial to Specialty: China as a Growing Coffee Origin. Perfect Daily Grind, URL: https://www.perfectdailygrind.com/2016/09/nestle-specialty-china-growing-coffee-origin/ (参照日:2020年9月17日)
(2020年9月11日), The Increasing Quality Of Chinese-Grown Coffee. Perfect Daily Grind, URL: https://perfectdailygrind.com/2020/09/the-increasing-quality-of-chinese-grown-coffee/?utm_source=Website+Subscribers&utm_campaign=a50c53916e-Jan_3_2017_COPY_01&utm_medium=email&utm_term=0_e5c3eb4dc6-a50c53916e-233324053 (参照日:2020年9月17日)