コーヒー品種ノート

【コーヒー品種】カティモールとは?

投稿日:2018年5月15日 更新日:


by Katya Austin on Unsplash

コーヒーの品種ノートです。

カティモール

由来:カトゥーラとティモール・ハイブリッドの人工交配種
豆のサイズ:やや小さい
収穫量:多い
風味の質:やや低い
初回収穫:2年目
さび病:耐性あり
炭疽病:耐性低い
線虫:耐性低い
栽培適正標高:

北緯5度~南緯5度:1,000~1,600m

北緯/南緯5度~15度:700~1,300m

北緯/南緯15度以上:400~1,000m

カティモールの歴史

コーヒーの栽培において最も大きな問題の一つがさび病です。特にアラビカ種はさび病に弱く、病害への耐性を持つ品種の開発が期待されていました。1950年代後半、ティモール・ハイブリッド種がポルトガルのさび病研究所 (CIFC) に持ち込まれます。そして1960年代後半になってカトゥーラとティモール・ハイブリッドの交配種が開発され、これがカティモールの始まりとなります。その後、ブラジルのヴィソーザ連邦大学でさらなる優良種の選別が行われ、1970年代にはコスタリカの熱帯農業研究教育センター (CATIE) へ、そしてラテンアメリカ各地へと広がってゆきます。

カティモールの交配の元になったティモール・ハイブリッドというのは、1920年代に現在の東ティモールで発見されたアラビカとロブスタの珍しい異種間自然交配種です。病害への耐性が高いロブスタ種の特性を持つティモール・ハイブリッドのDNAが、子であるカティモールにも受け継がれました。さらにもう片方の親であるカトゥーラの矮小種という特性も獲得したカティモールは、さび病への耐性、密集して栽培できる小さなサイズ、そして収穫量の多さという特長を備え、生産者には非常にメリットの多い品種となりました。

しかし、いいことずくめのように見えるカティモールにも幾つかの問題がありました。その一つがコーヒーの風味です。



アラビカ種に比べて病気への耐性が高いロブスタ種ですが、風味の点ではアラビカ種よりも明らかに劣っています。そのロブスタ種の遺伝子を受け継いでいるカティモールは、他の代表的なアラビカの品種に比べて優れた風味がないとも言われてきました。また、他の品種に比べて早く成長するカティモールは糖度が十分高くなる前に収穫されるため、そのこともいまいち風味に欠ける原因となっています。しかし、温度が低く成長が遅くなる高い標高の土地 (海抜1,200m以上) で十分に手入れをしながら栽培し丁寧に生産処理されたカティモールは、豆の個性が味わえる美味しいコーヒーになることが分かっており、風味の質に関しても徐々にその評価を見直す動きが見られます。

現在、カティモールはメキシコやホンジュラス、ペルーなどの中央・南アメリカの国々、アフリカのマラウイ、さらにベトナム、インドネシア、タイなど東南アジア地域でも広く栽培されるようになっています。

※ ちなみにカティモールというのは、特定の一品種を指しているわけではありません。カトゥーラとティモール・ハイブリッドの交配種には、研究機関による優良種の選別などを経て幾つもの種類 (T-5175、T-5269、T-8667、コスタリカ95、IHCAFE 90 など) があり、これらのグループの総称として「カティモール」という名が使われています。

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(2020年9月17日:テキスト追加)

[参考資料]
World Coffee Research (2016) 「COFFEE VARIETIES of Mesoamerica and the Caribbean」, URL: https://worldcoffeeresearch.org/media/documents/Coffee_Varieties_of_Mesoamerica_and_the_Caribbean_20160609.pdf (参照日:2018年3月15日)

(2016年4月20日), Knowledge Center. Mercanta, URL: https://www.coffeehunter.com/knowledge-centre/catimor/ (参照日:2018年5月14日)

(2020年9月11日), The Increasing Quality Of Chinese-Grown Coffee. Perfect Daily Grind. URL: https://perfectdailygrind.com/2020/09/the-increasing-quality-of-chinese-grown-coffee/?utm_source=Website+Subscribers&utm_campaign=a50c53916e-Jan_3_2017_COPY_01&utm_medium=email&utm_term=0_e5c3eb4dc6-a50c53916e-233324053 (参照日:2020年9月17日)


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