珈琲エッセイ

「コーヒーのカッピングって何をするの?」⇒ 体験してみた

投稿日:2017年12月21日 更新日:


by Paul Jackson

カッピングとは?

コーヒーの「カッピング」というと、コンテストの審査員やロースター、バリスタなど、一部のプロフェッショナルな人たちが行うものというイメージがあるかもしれません。

もちろん、豆の複雑な風味を正確に感じ取り、評価としてそれを的確に分析・表現する能力において、プロと素人では大きな差があるのは確かです。しかし、カッピングはそうした専門職にある人だけではなく、コーヒーが好きな一消費者が気軽に楽しみながらコーヒーへの理解を深めることができる機会でもあります。

そんなわけで、先日マレーシア・クアラルンプールにある Kopenhagen Coffee とデンマークの The Coffee Collective とのコラボレーションで開かれたカッピングセッションに参加してきました。

今回の講師は、The Coffee Collective のバリスタ、ベンジャミン・ハナー (Benjamin Hunner) さん。半日で3回のカッピングセミナーをこなすという忙しいスケジュールでしたが、カッピングで押さえるべきポイントを分かりやすく説明し、参加者の質問にもとても丁寧に答えてくれました。

カッピングの手順

カッピングは一般的に次のような手順で行われます。

1.挽いた粉の香り (ドライ)

中細挽きにしたコーヒーをカップに10gずつ入れ、ドライの状態で粉の香りを確認します。このアロマは早く消えてしまうため、カップを振って香りを立てたらすぐに嗅ぐのがポイント。

粉の香りを確認する

2.お湯を注いだ後の香り (クラスト)

それぞれのカップに一定の温度 (今回は92度) のお湯を注ぎ、タイマーで正確に時間を計ります (今回は4分)。お湯の量は約180cc。お湯を注いだらアロマを確認します。

ちなみに、顔を勢いよく近づけすぎて鼻先をコーヒーに突っ込んでしまった参加者もいたので、そうしたアクシデントには注意しましょう。

温度を一定にしたお湯を注ぐ

3.浮かんだ粉をかき混ぜた時の香り (ブレイク)

上に浮かんでいる粉をスプーンで壊した時の香りを嗅ぎます。(今回はセッションの時間が限られていたため、このステップはバリスタのみで参加者は省略。)

スプーンでかき混ぜると大部分の粉はカップの底に沈みますが、まだ浮いているアクやカスをスプーンですくって取り除きます。

表面のカスやアクを取り除く

4.実際に味わって評価

スプーンでコーヒーをすくって、味や香りの特性を確認します。慣れている人は「ズズーッ」と勢いよくすすってコーヒーを口の中で霧状にすることで、繊細な香りや酸を正確にとらえて評価できます。ただ、初めは上手く出来ずにむせる可能性もあるので、あまり無理しなくていいとのこと。

フレーバーホイールという風味を分類したチャートを参考にすると、特徴を表すための色々な表現を学ぶことができます。

豆の焙煎・販売だけでなく、世界にコーヒー文化と正しい理解を広める上でもダイナミックな活動をしている 「Counter Culture Coffee」 のサイトでは、独自のフレーバーホイールのデータを公開しています。ダウンロードはこちらから(reCAPTCHA 認証画面が出てきます)

<カッピングを行うときの注意点>

・コーヒーの粉の分量挽き具合 (メッシュ)、お湯の温度すべて同じになるよう揃える
使ったスプーンはその度に必ずお湯か水ですすぐ。カップに入れたお湯ですすぐ場合は、汚れてきたら早目にきれいなお湯に替える。

カッピングをすることのメリットとは?

アラビックコーヒーなどイブリックを使うものは例外として、普通に淹れたコーヒーの場合は何らかのフィルターを通しているため、抽出されたコーヒーは良くも悪くも豆の特徴の一部が取り除かれています。しかし、余計なものが介在しないカッピングでは、豆が持つ風味特性がすべて表れている状態で評価することができます。

品種や生産地による風味の違いはもちろんのこと、同じ農園でもある特定の場所から収穫されたマイクロロット、あるいは全く同じ豆で生産処理が異なるものなど、さまざまな要素により変化する豆の個性を正確につかむには、やはりカッピングの経験を重ねていくことが一番の近道だと言われています。

今回のカッピングセミナーでも、参加者が感じたことをためらわずに言ってみることの大切さを強調されていました。

初めのうちは、「普通においしいコーヒーだ」ということ以外の感想がなかったり、他の人が「ミルクチョコレートにローストしたアーモンド、あと少しアプリコットも感じる」などとコメントしても、何の事を言っているのかサッパリ分からなかったりするかもしれません。

それでも、「恥ずかしい」とか「間違ったらどうしよう」という思いに負けず他の人と意見を共有することで、今まで気づかなかった風味を徐々に感じられるようになり、味を評価する基準のブレも少なくなっていきます。そのようにして、少しずつカッピングの技術を向上させることができるのです。

もしカッピングセミナーに参加する機会があれば、ぜひみなさんも難しく考えすぎずに一度トライしてみて下さい。きっと今までは見えなかったコーヒーの一面が見えてきて、より深くコーヒーを楽しめるようになるはずです。

カッピング使用豆のロースター

今回のブラインドカッピングでは、次のロースターの豆が使われました。

Tim Wendelboe (ノルウェー)

2004年のワールド・バリスタチャンピオン、ティム・ウェンデルボー (Tim Wendelboe) さんが代表をつとめるコーヒーカンパニー。焙煎所、エスプレッソ・バーをはじめ、自前のトレーニングセンターも持っています。

2017年の北欧ロースター競技会 (Nordic Roaster Competition) では、3年連続6度目の優勝。この地域ではコーヒー業界のレジェンドとも言える存在です。

(北欧におけるコーヒーローストならびにウェンデルボーさんについては、鐙麻樹さんによる記事「北欧のコーヒーは何がすごい?」 に詳しいので、ぜひそちらをご参照ください。) 

Square Mile Coffee Roasters (イギリス)

2007年のワールド・バリスタチャンピオン、ジェームス・ホフマン (James Hoffmann) さんと、同じく2007年ワールド・カップテイスター・チャンピオンシップ優勝のアネット・モルドバー (Anette Moldvaer) さんが共同で立ち上げたロースター。

モルドバーさんがローストした豆が、3年連続でワールド・バリスタチャンピオンシップの優勝者の使用豆だったことからも、彼女が持つコーヒーに関する深い知識と高度な焙煎技術のほどがうかがえます。

Sprezzatura Coffee (マレーシア)

クアラルンプール郊外のオフィスエリアで、ロースターのミルワン (Mirwan) さんが2014年に立ち上げた豆の焙煎・小売り専門店。

最近では特にインドネシアのタナ・トラジャ (Tana Toraja) 、フローレス島、そしてジャワ島の農園と信頼関係を築きながら、高品質の豆を直接仕入れるようにしているとのこと。競争が激しくなってきている地元クアラルンプールのコーヒー業界ですが、規模は小さいながらもキラリと存在感を放っているショップです。

The Coffee Collective (デンマーク)

デンマークのコーヒー業界で自他ともに認める4人のトップバリスタが共同オーナーとなり、2007年に倉庫での焙煎からスタートしたコーヒーカンパニー。

オーナーかつ経営責任者としてチームを率いるのが、ピーター・デュポン (Peter N. Dupont) さん。バリスタとして約20年、ロースターとしても10年以上の豊富な経験を誇るが、理系修士号 (コーヒー生産地における水資源マネジメント) を取得しているという異色の経歴の持ち主。バイヤーとしてコーヒーの買い付けを担当しています。

二人目の共同オーナーは、2006年のワールド・バリスタチャンピオンであるクラウス・トムセン (Klaus Thomsen) さん。バリスタとしての経験は15年以上にのぼり、販売、マーケティング、そしてコーヒーショップの品質管理を統括しています。

別の共同オーナーで焙煎部門の責任者を務めるのが、2008年ワールド・カップテイスター・チャンピオンシップ優勝のカスパー・ラスムセン (Casper E. Rasmussen) さん。ラスムセンさんもバリスタとして15年近い経験を持っています。

そして立ち上げ時のもう一人のオーナーが、リヌス・トルサター (Linus Törsäter) さん。バリスタになる前は、ランドスケープアーキテクト (景観設計) を学びその道のプロとして活躍していたトルサターさん。10年以上にわたり The Coffee Collective の共同オーナーとしてコーヒービジネスに関わってきましたが、再びランドスケープアーキテクトの世界に戻ることを決意。2017年を最後に、家族と共に母国スウェーデンに帰国となりました。

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このブログについて

東南アジアに住む筆者が、コーヒーコラムやテイスティングノート、また競技会や展示会等のイベントなど、コーヒー文化と地元の情報を現地から発信していきます。


管理人: Gaku

30代の通訳者です。
マレーシアのクアラルンプール在住。

[好きなモノ]コーヒー、写真、バイク、温泉、ラーメン

毎朝、妻と二人でコーヒーを飲むのが日課。でも、珈琲ネタを語りだすとサラリと流されます。