マレーシアの免許制度は外国人にとって頭を悩ませる問題の一つです。たとえ現地免許を取得している方であっても、いずれは免許の更新時期がやってきます。マレーシア人であれば近くの郵便局 (POS Malaysia) や eServices キオスクで簡単に更新を済ませられますが、外国人の場合はJPJ (交通局) に出向いて手続きをする必要があります。更新手続きといってもJPJには日本のように免許更新専用のラインがあるわけではなく、サイン等もマレー語がメインのため慣れていないと中々ハードルが高いと言えるでしょう。
この記事では、筆者の経験を元に自分で更新する際のポイントについていくつかお伝えしたいと思います。(注:内容は2023年5月現在)
Contents
更新に行く前に
更新時期を確認する
まず、うっかり更新時期を過ぎないように注意しましょう。日本の交通安全協会のように、どこかから更新時期の通知が届くなんてことはありません。日本と同じく誕生日が有効期限となっているので、どの年に更新だったか時々免許証をチェックする習慣をつけておくとよいでしょう。
また、日本の場合は有効期間満了日の前後1か月が更新期間となっていますが、基本的にマレーシアの場合は有効期限日までに更新が必要だという点にも注意が必要です。
申請用紙のダウンロード
通常の更新 (記載事項変更なし) の場合は、JPJの「Driving License Application Form (JPJ L1)」という用紙が必要となります。これはJPJのホームぺージから Media Centre > Forms > Driving Licensing とたどっていくと見つかります。(初期設定でマレー語になっている場合は、まずページ上部の「Pilihan Bahasa」と書かれているところをクリックして English を選択で言語切り替え)
もし前回の免許証発行後にパスポートを更新した、引っ越しで住所が変わった等で記載事項に変更があった場合は「Notification Form Amendment Of Driving License Details (JPJ L7)」という用紙を使用します。ちなみに、更新と記載事項変更を同時に行う場合は上に挙げた JPJ L1 用紙は必要ありません。(JPJ L7はL1に比べるとシンプルなので「これだけでいいのか?」とやや不安になりますが、実際やってみてL7だけで無事に更新 & 記載事項変更ができました。)
JPJeQアプリのダウンロード
JPJの申請で忘れてはいけないのが、「JPJeQ」というアプリを事前にダウンロードしておくことです。以前はJPJの入口で係官から受付番号をもらって順番待ちをしていましたが、今はこの専用アプリでQRコードを読み込むことで受付番号が発行される仕組みになっています。「アプリからでも申請受付できますよ」ではなく、「アプリ使わないと申請受け付けないよ」という強制仕様。ちなみに、アプリのレビューは最低評価(★)が断トツで多く、ユーザーの不満と怒りの声がこれでもかというぐらい寄せられています(苦笑)。このためだけに強制的にアプリをインストールさせられるのは面倒でしたが、大きなエラーなどは経験しなかったので個人的には特に文句はありません。便利といえば便利ですが、ここまで手間をかけてまでデジタル化する意味があるのかどうかは微妙なところかと。
(追記:2023年5月18日) KLにあるJPJ本局にて筆者が一週間ほど前に免許更新した際には、なぜかJPJeQアプリの使用は求められませんでした。アプリをダウンロードしろと促すポスターやお知らせはそこら中に貼ってありましたが、誰もやっていないし係官に聞かれもしないという状態。これがシステムトラブルなどの理由による一時的なものなのか、結局面倒になって使うのをやめてしまったのかは不明です。
更新に必要な物
・申請用紙 (JPJ L1)(通常更新用:記載事項変更なし)x 1枚
または、(JPJ L7)(記載事項変更有り)x 1枚
・パスポート原本(前回免許発行時以降にパスポートを更新した場合は、古いパスポートも忘れずに!)
・パスポートコピー(顔写真&名前のページ + 現在有効なビザのページ) x 1枚
※ パスポート更新に伴い記載事項変更の場合は、古いパスポートのコピーも必要
・マレーシア運転免許証原本
・免許証コピー(裏表どちらも)x 1枚
・カラー写真(白背景:横25㎜ x 縦32㎜)x 1枚
・スマートフォン (JPJeQアプリ事前ダウンロード済)
・更新費用 (RM60/年 x 最大5年まで) *マレーシア人はRM30/年
JPJでの流れ
申請書類の必要事項を記入してその他更新に必要な物も揃ったら、いよいよJPJでの手続きとなります。いつ行っても混んでいるJPJですが、モスクでのお祈りがある金曜日の午後は特に避けた方がいいと言われているので、できればそれ以外の日時を選びましょう。
(追記:2024年5月20日) 読者の方から寄せて頂いた情報によると、更新手続きができないと言われたJPJの支局もあるようです。支局によって対応している手続きの内容が異なる場合もあるため、ご注意ください。また、JPJ本局など大規模なところでは人が集中すると午前中で整理券が終わってしまう場合もあります。
(追記:2023年5月18日) マレーシアの運転免許証の有効期限が最長10年に延長されました。(※マレーシア人のみ。長期ビザ保有者を含め、外国人は対象外)
ちなみに、9年分の更新費用を払えば10年有効の免許がもらえるという、マレーシア人が大好きなディスカウント付きです。この改正に伴い、新型コロナのパンデミック中に有効期限が過ぎて失効した免許について2023年末までは更新を認める特例措置も発効。早速申請に訪れる人でJPJは相当に混雑しています。(※ 以前も書きましたが、大雨だと申請に行くのをあきらめる人が結構出るため、洪水の危険さえなければ雨の日は穴場かもしれません。)
JPJでいくつか気をつけたいポイントを挙げておきます。
外でウロウロしている怪しい人たち
JPJの入り口付近には、肩からショルダーバックをかけた (またはウエストポーチをした) 人たちがウロウロしながら、やって来る人に声をかけています。髪型や目つきで「何かおかしいな」と気づく方もいると思いますが、これは手続きに不慣れな人を引っかけて手数料名目で稼ごうとしている人たちなので相手にしないようにしましょう。自信なさげにキョロキョロしながら歩く、パスポートを周りに見えるような仕方で手に持つ、大きな声で日本語で会話するなど、ターゲットにされるような行動を避けるよう注意してください。(無理やり何かされることはありませんが、声をかけられたからとご丁寧に返事をしていると色々面倒になります)
正しい列に並ぶ
JPJは日本で言う運転免許センターと陸運局が合わさったような施設で、運転免許証の交付・更新以外に車両登録や名義変更、自動車税なども扱っています。免許関係と名義関係は違うセクションでやっているので、間違った場所に並ばないよう気をつけましょう。(KLにあるJPJ本局の場合は下の階で免許、上の階で名義関係を扱っています。)
混雑しているとしばらく建物の中に入れないこともあるのでご注意を。外に人があふれていると、どちらが上の階/下の階の行列なのか見分けにくい時があるのでしっかりと確認しましょう。
JPJeQアプリを起動する
2023年5月時点で、同アプリの使用を求められない場合があることが確認されています。アプリが必要な場合は列に並んでいる時から係官にしつこく確認されますので、そうでなければ使う必要なしと考えてよいでしょう。
GPSの位置情報取得を許可すると、それに基づいて現在地からどのJPJなのかを自動的に割り出すようになっているので、自宅ではなくJPJに着いてから起動しましょう。ただ、この位置情報取得に延々と時間がかかったというユーザーも多く、それが低評価の原因の一つともなっているようです。もし時間がかかりすぎる場合は、アプリを一旦閉じてもう一度起動してみましょう。(筆者の場合は、これですぐ位置を認識できました) 正しく認識されると、自分が今いるJPJの支所名がアプリに表示されます。
その後の手順についてはカウンターで一つずつ教えてくれるので、JPJの支所名さえ正しく表示されていればこの時点ではそれ以上何もしなくてOKです。
申請書類確認&受付番号交付
入口から中に入ると、カウンターでまず何の申請に来たのか聞かれるのと同時に、必要な書類が揃っているかどうかを厳しくチェックされます。「To renew my driving license. (免許の更新です)」など、簡単に言えば十分です。記載事項に変更があった場合は、何が変わったのか伝えた方がスムーズです。(例:「New passport (新しいパスポートです)」「New address (新住所です)」など)
この時、上に挙げたリストの書類を担当者にすぐ見せられるよう準備しておきましょう。マレーシア運転免許証、記入済みの書類、パスポートの写真ページ、パスポートコピー、写真などを見せてOKであれば、受付番号発行用のQRコードを見せてくれるのでJPJeQアプリを使ってスキャンします。(一つでも足りないものがあれば、この時点で追い返されます) アプリの表示は全部マレー語なので、どのボタンを押せばいいのか分からない方はその場で係官に画面を見せて助けてもらいましょう。(丁寧な教え方は期待できませんが、一応教えてはくれます。) アプリの画面に受付番号が表示されれば、これで受付完了です。(下画像参照)
あとは、待合室で自分の番号が呼ばれるまで気長に待ちましょう。呼び出しはマレー語ですが、電光掲示板でも受付番号とカウンター番号が表示されます。もちろんJPJeQアプリでも自分の番号、現在受付中の番号、待ち人数、自分が呼ばれるまでにかかる予想時間などが表示されますので、参考にしてください。番号が呼ばれたらすぐに指定されたカウンターへ行きます。モタモタしていると飛ばされて次の番号にいってしまうので、読書に夢中になったりウトウトしたりせず常にあと何人ぐらいか確認しておきましょう。
申請内容確認&受理、支払い
カウンターでは、担当者に申請書類と本人確認書類を細かくチェックされます。先ほどと同じように免許の更新であること、また記載事項に変更があればどの部分が変わったのかを言います。申請内容に関して簡単な質問をされることがありますが、あまり難しい英語で聞かれることはないはずです。
通常申請 (JPJ L1) であれば有効期間を何年にするか記入する欄がありますが、記載事項変更と同時に更新を行う場合 (JPJ L7) は有効期間について「How many years? (何年にしますか)」と口頭で聞かれます。選べるのは1年から最大5年なので、その範囲で希望する年数を指定します*(但し、パスポートの残り有効期間より長い年数は選べないため注意)。ちなみに、期間が長くても割安になるわけではありません (一律RM60/年) 。指定した年数に応じて合計金額を言ってくれるので、その場で支払います。(一応クレジットカードで払えますが、機器の通信エラーでカードが使えず現金払いのみということもあるので(※ 実体験より)、できれば現金も準備しておいた方が無難です。)
*注:読者の方からの情報によると、2021年12月時点での更新でPJ局では現在持っているビザの有効期限までしかもらえなかったとか。このあたりJPJが一律でそうなったのか、PJ局が厳しいのか、はたまた担当係官の虫の居所が悪かったのかは確認できていません。)
(追記:2022年6月3日)2022年5月末に筆者がJPJ本局で免許を更新した時には、ビザの有効期限を確認することなくこちらの希望年数で発行してくれました。
支払いが終わったら、免許証記載情報がプリントされたレシートを渡されます。同じセクションの端の方にある交付用カウンターに行ってレシートを置き、名前を呼ばれるまで近くで待つようにと指示されます。レシート入れはマレー語で「RESIT」と書かれているのでそこに入れます。すぐ終わるので、呼ばれた時に声が聞こえる程度のところで待っていましょう。(カウンターの真ん前で待つ必要はありません)
免許証交付
数分程度で係官に名前を呼ばれます。新しい免許証を受け取ったら、生年月日や名前、パスポート番号など記載事項に間違いがないか確認しましょう。OKであれば、これで無事に更新手続き完了です。更新時の視力検査や安全講習、印紙の購入などもないので、全体としては日本より早く終わる場合 (状況により約45分~2時間程度) が多いのではないかと思います。
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手続きの際の心構え
まず大切なのは、予定通りにいかなくても仕方ないという気持ちの余裕を持っておくことです。JPJに限らずマレーシアの政府関係の手続きというのは、いきなり必要書類が追加されたり基準が改定されたりと、かなり頻繁に諸条件が変更されることが多く、手続きに行ってはじめて何かの変更について知るということがあり得ます。また、タイミングによっては大混雑で申請に数時間待たされたあげく、結局手続きで丸一日つぶれたということもあるでしょう。そのため、申請等はギリギリまで待つのではなく、何かあってもやり直しができるだけの余裕を持たせるようにしましょう。
もう一つは、担当者に悪い印象を持たれないように注意することです。言語の壁もありつい黙って無表情になりがちだと思いますが、せめてちゃんと挨拶するよう努力するだけでも、相手に与える印象は大きく異なります。たまに係官が高圧的な時もありますが、間違っても小さなことで食って掛かったり、ふてくされた (と受け取られる) 態度をとったりしないようにしましょう。マレーシアの場合「お役所は神様」みたいなもので、怒らせて得なことなど何もありません。
エージェント (代理人) を使って手続きをする方も少なくないと思いますが、この記事が自分で更新をやってみようという方のお役に少しでも立てば幸いです。
関連記事:「【マレーシア】運転免許制度に苦しめられる在住外国人」
(2021年12月3日:情報追加・テキスト修正)
(2022年6月6日:情報・画像追加・テキスト修正)
(2023年5月8日:情報追加・テキスト修正)
(2024年5月20日:情報追加・テキスト修正)
私は更新のため、期限のちょうど1か月前にShah AlamにあるJPJに行きました。
カウンターの方に更新を申し出たところ、「更新は期限の1週間前からでないとできないよ」と断られてしまいました。
日本みたいに更新できる期間が有効期限の前後1か月とかではなく、更新の案内などもないので、期限をよく確認して直前で行くように注意したほうが良さそうです。
アロ 様、
情報お寄せ頂きありがとうございます。今回1か月前の更新を受け付けてもらえなかったということで残念でしたが、JPJの場合は支局や担当係官によって言われることが違うというケースが多々あります。
自動車関連の最新情報を扱った記事で定評のある地元ウェブサイト「paultan.org」の2023年5月に投稿された記事によると、“運転免許証の更新は有効期限が残り1年を切ってから”とあります。筆者自身もこれまでJPJのKL本局にて有効期限1か月ほど前に何度も免許を更新していますので、少なくとも“有効期限1週間前からしかできない”というルールは以前に存在していたものではないはずです。
誕生日の1か月後まで効力のある日本とは異なり、マレーシアの運転免許は翌日から失効となります。今回のシャーアラム支局の対応が直近1、2か月の何らかの法令変更を反映しているのか、それとも既存のルールについて解釈の違いがあったのか分かりませんが、実際問題として1週間という短期間しか更新できないというのは現実的ではないと感じます。もしかすると、教習所に通い仮免許を取得した場合に仮免許の有効期限7日前までに運転免許(CDL)を申請(apply)しなければならないという規則と、すでに保有している運転免許を更新(renew)する際のルールを係官が色々と取り違え&誤解した結果の対応だったという可能性も考えられます。
ちなみに、パスポート番号や住所など記載事項に何らかの変更があれば「記載事項修正」という形で基本的にいつでも“更新”できます(日本のように免許証裏面に修正事項を追加するのではなく、新規発行となる)。通常更新とは申請書類が異なるのでその点だけ注意が必要ですが、これに当てはまる場合は更新時期をあまり心配せずに免許証を新しくできる方法の一つですので覚えておいて損はありません。
いずれにしても、おっしゃるように更新の案内はない上にJPJというのは何かと予想外のトラブルが起こるところですので、免許更新の際は余裕を持って手続きされることをお勧めします。(仮に失効した場合でも3年以内であれば更新できます)
今後とも当ブログをよろしくお願い致します。
マレーシアの運転免許証更新は、誕生日のどのくらい前から可能かご存知ですか?ビザの更新と誕生日が同時期にあります。パスポートをしばらくイミグレーションに提出しなければならず、タイミングを心配しています。
Hori 様、
コメントありがとうございます。
ご質問の件、政府関連省庁やJPJのウェブサイトも確認しましたが、失効期限については述べられているものの通常の運転免許(CDL)については有効期限よりどれぐらい前に更新できるという明確な期間は示されていないようです。通常の更新を申請できる基本条件は「現在有効なマレーシア発行の運転免許証を持っていること」「(悪質違反者)ブラックリストに載っていないこと」で、調べた限りではそれ以外の条件は見当たりません。
個人的な感想ですが、早すぎて期限前更新が出来なかったという話は聞いたことがないので、恐らくいつでも更新できるのではないかと思います。はっきりしたことが言えずに申し訳ありませんが、少しでも参考になれば幸いです。
今後とも当ブログをよろしくお願いいたします。
ご丁寧なご対応ありがとうございました。更新手続きに行ってみて、こちらにアップデートします。
素晴らしい情報をありがとうございます。早く読んでおけばよかったです。金曜日に書類不足でニコニコ2回並びました。
ココナッツ 様、
コメントありがとうございます。並び直す時間的余裕があったようでよかったです。
JPJの手続きは正直うまくいくことのほうが少ないですが、逆に奇跡的にすべてがスムーズにいった時は妙な達成感が味わえますよね。個人的には、二輪免許の交付でJPJに出向いた際になぜか待ち人数ゼロ、受付で必要書類を提出してから3分で免許交付まで終わったのがこれまでで一番印象に残っている手続きです。
今後とも当ブログをよろしくお願いいたします。
質問すみません。
筆者様はマレーシアの現地運転免許証をお持ちなのでしょうか?もしくは日本の運転免許を書き換えされたのでしょうか?
友人の日本運転免許証の有効期限が今年8月で切れるのですが、中々日本に帰国出来ないため悩んでおりました。
おはな 様、
コメントありがとうございます。
私の場合、いわゆる普通自動車免許に関しては日本の免許からの書き換え、二輪免許は現地で教習所に通って取得しました。ご友人がマレーシアにおいて日本で発行された国際免許証で運転されているのであれば、活動制限令施行中は有効期限が切れてた免許でも有効な保険のコピーを携帯するなどの条件付きで運転が認められています。(在マレーシア日本国大使館ウェブサイト:「有効期限の切れた運転免許証での自動車の運転に係る特例について」)
ちなみに、新型コロナに関わる渡航制限等のやむを得ない事情で帰国できず日本の運転免許証が失効した場合は、一定期間内(失効日から3年以内)であれば学科・技能試験免除で再取得できる特例があります。詳しくは地元の都道府県警察の情報などをご参照ください。(警察庁ウェブサイト:「海外滞在中で日本の免許をお持ちの方」)
上の情報がご友人の方の参考になれば幸いです。