バビグリン (Babi Guling)
インドネシア風 ローストポーク
インドネシア/バリ島
インドネシア・バリ島の名物グルメといえば必ず名前のあがるバビグリンは、ニンニク、しょうが、ターメリックなど各種スパイスで味つけし香ばしく焼き上げたローストポークである。地元のレストランでは、ご飯の上にたっぷりと載せられた肉に煮汁やスパイシーなタレをかけ、さらに野菜を添えて供されることが一般的だ。料理の過程で余分の脂が落ちているからか意外にさっぱりとした味わいで、予想以上に軽い口当たりの皮も脂ぎったコッテリ感とはまた違う濃厚な風味を楽しめる。
今でこそレストランで気軽に味わえるメニューだが、本来は祝い事の際に食べられていたバビグリン。特別なご馳走としてその調理には相当の手間がかけられている。きれいに処理をした豚の腹の中に何種類ものスパイスを調合したものをたっぷりと詰めて綴じ、さらに皮にも丁寧にターメリックをすり込む。そうして下準備された豚を回転させながら数時間かけてじっくりと焼くことで、バビグリンならではのジューシーな肉とこれ以上ないというぐらいパリパリの皮が生まれるのだ。
このように、一頭丸ごと調理することでこそ出来上がるバビグリンを普通の家庭で作るのはほぼ不可能に近い。そんな熟練の技で変わらない味を長年にわたって守ってきたバビグリンの名店がバリには数軒あり、地元の人におすすめを聞けばそのどれかの名前が出てくることだろう。
上の写真を撮影したウブドの店は、あまりに有名になった結果 観光客が大挙して押し寄せたため、本店から少し離れた場所に大きな支店を作り団体客などはそちらに流すようになった。そのおかげというべきか、こじんまりとした本店が外国人観光客で極端に混雑することは少ない。
私と妻が行った時は、客の赤ん坊をあやしながら何度も屈託のない笑顔を向けてくる店員や、焼き上がったばかりの姿焼き状態のバビグリンが届くと「早くこっちに写真撮りにおいで」と呼んでくれるキッチンスタッフもいた。ゆるりとした雰囲気の中にバリ独特の凛とした佇まいも感じる、そんな空気が店を満たす昼下がりの一時だった。
イスラム国家であるインドネシアにおいて、ヒンドゥー教をはじめ人口の約9割がイスラム以外の宗教を信仰しているバリ島。豚料理のバビグリンは、そうした土地柄もありバリの食文化として長い間人々に親しまれてきた。バリを訪れることがあれば、ぜひ一度は食して欲しい一品である。
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