ジョーク (Jok)
タイ風 お粥
タイ/メーホンソン県
日本でお粥というと、脳裏に浮かぶのは白がゆに梅干しや塩昆布が載っている類のもので、どちらかといえば病人や胃腸が弱っている時に食べるものというイメージが強いのではないだろうか。少なくとも、美味しい料理という印象ではないはずだ。しかし、アジア圏の多くの国ではお粥は食卓を飾る立派な一品であり、毎日の食生活で普通に目にするものである。
タイでもお粥はとても人気のある食べ物だが、当然ながらベースとなる粥自体がスープで味付けされている上に色々な具も入っており、食べ終わると十分に満足感が得られる。タイのお粥には、米粒がかなり潰れてドロリとした濃厚タイプのものと、サラッとしたスープに米粒がはっきり残っているタイプの二種類あり、ジョークは前者の方である。
注文する際に一応基本メニューはあるが、タイ人はそこからさらに何を追加して何を入れないかなど、店の人に好みを細かく伝えることが多い。ちょうど日本でラーメンのトッピングや麺のゆで具合を色々と指定するようなものだ。店員も慣れたもので、長々とリクエストを言われてもまったく動じない。某コーヒーチェーンが注文を通す際に言う「トールソイアドリストレットショットチョコレートソースキャラメルマキアート~」のような呪文を唱えることもなく、客が繰り出す様々なカスタマイズを無言で淡々と処理していく。客の側も細かい注文が面倒なら「全部載せ」にしてもいい。言葉で伝えるのが難しければ、欲しいものを実際に指でさして注文するという手もある。
どの具を合わせてもちゃんと美味しく食べられるようになっているのだが、個人的に絶対欠かせないのは卵だ。
ジョークのトッピングはちょうど温泉卵のような感じに仕上がっており、お粥の上に載っているプルンプルンの卵を箸で割ると中からトローッと黄身があふれ出す。それをお粥に混ぜ込んで食べると一気にコクと風味が増し、シンプルながらもまさに絶品の味わいなのだ。ここで注意すべきなのは、ぐちゃぐちゃと混ぜすぎないこと。卵を割った後、スプーンをお椀の中で軽く1、2周ほど回す程度で十分である。白いお粥の中に卵がマーブル模様を描くぐらいがちょうどいい。
お粥などどこで食べても同じだろうと思われるかもしれないが、やはり普通の店と旨い店には歴然とした差がある。私がよく訪れる店の奥さんに聞くと、お粥は当然ながら火を入れ続けているので時間が経つと徐々に濃くなってくるのだという。また業務用の大鍋だと、お粥の上の部分と底の方とでは口当たりに少なからぬ違いがあるそうだ。そこで、常にお粥の具合を見ながらスープで濃度を調整すると共に、どの一杯も同じ味と口当たりになるよう器に入れる時には熟練の技ですくい方を調整しているのだとか。たかがお粥、されどお粥である。
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